見出し画像

フルマラソン完走記③~「トイレに振り回される」編~

無謀にも4時間ペーサーに付いていった結果,早くも失速が始まった。
ここからどう自分を立て直そうとしたのかについて,語ります。
今回も,N〇Kの「プロジェクトX」風に仕上げました!


目標を切り替える

(ナレーション)
4時間ペーサーを見失ったことによる影響は,明白だった。
26キロを超えると,ペースはキロ6分台にまでずるずると落ちていった。

はろるどは,思った。
「まずい。何か他の目標を見つけなければ」

そして疲れた頭で,現状を分析した。
12キロまでは,キロ6分イーブンで走っていた。
そこから24キロまでの12キロをペーサーに付いてキロ5分半で走ったのだとしたら,キロ6分をベースに考えれば,30秒×12キロ=6分くらいの貯金ができているはずだ。
この貯金を崩しながら行けば,30キロを3時間で通過できるのではないか。

はろるどは,誓った。
「よし,30キロを3時間内で走り抜けることを,次の目標にしよう!」

立ちはだかるトイレ問題

(ナレーション)
その頃,はろるどが抱えていたもうひとつの懸念事項があった。
フルマラソン特有のトイレ問題だった。

フルマラソンは長丁場のため,1度はトイレに寄る必要が出てくる。
それは他のランナーも同じなので,トイレには行列ができることが多い。
待っている間に大きなロスタイムが生まれ,目標が達成できなくなることもしばしばだ。

25.9km地点の仮設トイレが視界に入ってきた。
待っているランナーが2人いる。それほど混んでいないようだ。
しかし,空くのを待っている時間的余裕はない。迷いながらもパスをする。

29キロ地点を通過した。
30キロまでは残り1キロ。時計は2時間51分台を示していた。
「何とか無事,3時間までに間に合いそうだ」と思ったその時だった。

突如,29.2キロ地点に仮設トイレが出現した。
よく見ると,待っているランナーが1人もいない!
ロスタイムなく入れる絶好のチャンスだった。

しかし,目標達成までの時間はもうほとんど残されていない。
ここでトイレ利用のカードを切ってしまえば,「30キロまで3時間」を目指してきたこれまでの努力は,水の泡となってしまうかもしれない。

難しい判断を迫られたはろるど。
天を仰ぎ,目をつぶり,そして深く息をした。
「よし,入ろう!そして,目標も同時に達成するんだ」

決死の形相で,トイレに駆け込んでいった。


”プロジェクトX”(ささやくように)

スタジオインタビュー(再び妄想)

(スタジオ)
司会者:「なるほど。フルマラソンでは,どのトイレに入るかが重要な鍵になるんですね」
はろるど:「もちろん,大会側もたくさんの仮設トイレを用意してくれています。でも,どこで必要となるかは,当日の天候や体調などによって左右されますから,こればっかりは運としか言いようがありません」

司会者:「天候が何か関係するんですか」
はろるど:「たとえば,気温が低い日の大会だと汗をかきませんから,水分補給は少なくなりがちです。すると,ゴール前の35キロあたりのトイレが混雑したりします。もちろんこれも,どれくらいのペースで走っているかによって変わってきます。もっと遅いランナーだと,30キロあたりのトイレが混んでいるかもしれません」

司会者:「どこで何機のトイレが用意されているかも違うので,空いているトイレを見つけるのは難しいんですね」
はろるど:「とにかく,良いトイレを見つけたら迷わず行っておくことですね。トイレ待ちの時間もタイムに含まれますから」

司会者:「それでは,このタイミングでトイレ利用を選択したはろるどさんが,その後どうなったのか。続きをご覧ください」

残り時間との格闘

(ナレーション)
用を済ませると,急いでコースに戻った。
そこから500mほど走ると,ガーミン・ウオッチが30キロ到達を告げた。
しかし,GPS計測にはずれがある。今は29.7Kmあたりを走っているはずだ。
経過時間は,2時間58分に迫ろうとしていた。目標達成のためには,残り300mくらいを2分で通過しなくてはならない。
これは,キロ6分ペースで走ることを意味する。

しかし,どれだけ走っても30キロの表示が見えてこない。
30キロ表示はどこだ,一体どこなんだっ!

100mほど走り続けると,前方に白い看板がみえてきた。
「あった,あれだ!」

看板を見据えながら,何度も自分に言い聞かせる。
「絶対に,3時間を切る。俺にとっての関門は,あの30キロなんだ!

3時間まで,残り1分。
必死に30キロの看板めがけて足を動かす。

あと50m。。。
あと30m。。。
あと10m。。。

青いシートを踏んだ。
ピピピという計器の音を聞いた。
そして,時計をみた。

2時間59分45秒

やった。やりぬいた!

とてつもない達成感がこみあげてきた。
正直,前回のびわ湖マラソンのフィニッシュよりも大きな感動に包まれた。

しかし,この時のはろるどはまだ,
次なる目標に苦しむことには気づいていなかった。


”プロジェクトX”(ささやくように)

(次回に続く。明日更新)


この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?