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結局、ストックオプションってなんなのよ/要約『超入門SOとエンゲージメントストック』

日常生活や仕事の中で身近に存在し、多くの人にとって聞こえは良いけれど、具体的な仕組みやメリット、デメリットを理解するのが難しいと感じられるもの。
例えば、リボ払い、オンラインサロン、メタバースもそうですね。

スタートアップにおけるストックオプション制度についても同様でしょう。
私の知人でSOが付与されている方も「結局、よくわからない」と言っていました。

そんな分かりづらいSOですが、社員側の「わかりにくさ」と経営者側の「制度設計の負担」を解消したサービスが誕生しました!
それが、南青山アドバイザリーグループによるエンゲージメントストックです!
このサービスはなかなか革命的でしたので、著者の書籍を読んでみました。

ストックオプションの利用だけでなく、米国で流行りの仮想株式(ファントムストック)としても活用できるのです!

ファントムストックは、企業が役員や従業員に対して提供する金銭報酬の一種です。
近年では、企業が中長期的に価値を向上させるため、固定の役員報酬だけでなく、業績に連動したインセンティブ報酬を導入する動きが広がっています。高水準の報酬は優れた人材を引きつけ、企業の業績向上に寄与することが期待されます。
その中でもファントムストックは、通常の株式や株式の購入権利を直接与えるのではなく、企業が設定した仮想の株式を付与し、その仮想の株価に基づく業績連動型報酬を現金で支給する制度です。

マネーフォワード社のHPより

株主価値の向上は、単年度の利益だけでなく純資産の成長も伴います。
ファントムストックは企業の実質的な成長に伴った業績連動型の報酬制度設計を実現するのです。

中小企業においても、社員に自社の株価を意識してもらうことができます。
経営状態をオープンにし、社員と経営陣が成長を分かち合うことができる点で、理にかなった報酬制度です。


はじめに

著者は、SOの活用は上場、非上場、経営の規模、業態にかかわらず、すべての会社に有効なものだと確信している。SO導入の最初の壁は社内理解である。日本におけるSOの導入は1990年代に始まり、既に多くの事例がありながら、世間一般にその効果の理解が広がっていない。その大きな原因の1つが、SOを受け取った側の実感の薄さであると著者は考えている。著者の提供するストックオプションクラウドでは、SO本来の魅力を経営者と、社員が双方向で確認、実感できる。

さらに、本書では、米国を中心に流行っているファントムストックをアレンジした「エンゲージメントストック」という実在の株式ではなく、仮想株式を活用した報酬制度についても紹介している。この報酬制度は、仮想株式を用いるため、社員に株式を譲渡したくない経営者でも活用することができる。ファントムストックは、疑似的に株式を付与し、一定期間経過後に株式を売却したものとして、株価と同等の金額を支給している制度である。

エンゲージメントストックは、SOの課題である株式の希薄化や、煩雑な管理業務を解消できるというメリットがあり、中小企業においても有効な施策となっている。

第1章 SO導入が会社を変える

成功の理由、成長の経営術

自社に合った設計がSO導入を成功させる。SOの設計には、その企業が「誰に渡すのか」「どのようなSOを渡すのか」「何のために渡すのか」を切り分け、導入の道筋を明確にする必要がある。

ストックオプションという言葉の意味。「自社株式オプション」とは、自社の株式を原資産とするコールオプション。「ストックオプション」とは、自社株式オプションのうち、特に企業がその従業員等に報酬として付与するもの。上記よりSOは「自社の役員や従業員に対して付与する新株予約権」を指すことが多い。

SOの当事者の動きが生じるタイミング:

  1. まず会社が従業員にSOを付与する(従業員がもらった時)

  2. 次に従業員がSOを行使したとき。会社は株式を譲渡し、従業員は株式を取得する

  3. 最後に従業員が株式を譲渡したとき。従業員は利益を得る

SOには3つのタイミングしかない。会社の株を購入する権利がやり取りされているにも関わらず、付与された側はその存在を意識し続けるのが難しい。経営者の「会社と従業員のために」という思いと、SOを付与される側の「ありがたみの薄さ」とのギャップの大きさ、SOをやり取りしている当事者間の認識のズレこそがSO導入の課題である。

SO導入の成功には、自社に適合し、付与する側の思いが明確に示され、付与される側もメリットが実感できる戦略が必要。

SO導入を成功に導くためには、まず戦略を構築する

  1. ニーズ分析:会社はSOを何のために導入するのか。誰にSOを付与するのか。発行会社の状況はどうか。報酬に対する予算額はどのくらいか。費用化の時期はどうなるか。SOは、株価が安いうちに発行するほど、将来株価が上昇したときの利益が売却益として期待できる。

  2. 設計:付与対象者の選定基準(不公平感を招いてはいけない)、付与数の配分基準(役員、従業員/役職、在職年数/業績貢献)、行使条件(在職期間)、退職した時はどうするか、目標業績達成を要件に入れるか、株式公開を要件に入れるか。これらを全て契約で決めていく。

  3. 評価・シミュレーション:そのSOの公正な評価額はどうなるのか。費用計上額がどのくらいなのか。課税関係を理解し、想定されるタスクを把握する。上場企業であれば、開示規定への対応や株主への説明も必要になる。

こうしたニーズ分析、設計、評価・シミュレーションを何度も繰り返すことが、SO戦略の構築においては最も重要なポイントである。そして、このSO戦略によって何を得たいのかをあぶり出し、企業ニーズに沿ったSO効果の獲得を目指す。

SO導入はすべての企業を変える。導入は、中小企業にとっても有効な政策となる。会社にあったSOをしっかりと設計し、「SO戦略の構築」を明確にすれば、上場企業にとっても、非上場の中小企業にとっても、SOは有効な施策になり得る。

上場企業:
2022年時点で上場企業のうち、何らかのインセンティブを付与する政策を実施しているのは、76.5%、SOの制度を導入しているのは29.3%となっている。グロース市場では79.7%と際立っている。その目的には、中長期的な企業価値の向上への意欲を高めること、また、株主との利害の共有化を進めることなどがある。

中小企業:
資金が少ない段階で、優秀な人材を確保するために、中小企業全般にもSOの活用に可能性がある。現在国内では退職金制度の廃止が広がっている。退職金制度に代わる何らかのインセンティブが必要だが、業績評価に基づく給与や賞与の増額では、労使ともに短絡的な思考になり、退職防止の効果が得られない。非上場の会社がSO制度を導入した際には、SOを付与した従業員にSOを行使する際の利益への期待値を知ってもらう必要がある。その経営側の姿勢は、従業員の経営コミットする意識の醸成とともに、会社側の経営の健全化を促すことにもつながる。非上場だから、経営のブラックボックス化は当たり前とするのではなく、非上場でもSO制度を導入することで、経営の現在と未来を積極的に従業員や外部に情報公開していくという意識を持ち、その姿勢を発信すべきである。

インセンティブ施策としてのSOの特徴

従業員持株制度は、従業員なら誰でも加入することが可能で、月々の積み立てによって株を購入する。株の購入は、会社側が奨励金を付与することで従業員の資産形成を後押しする。また、従業員持株会が安定した株主となることで経営の安定化につながる。ただし、実際の株価を積み立てるため、従業員にも議決権を与えることで、実質的な株式の希薄化が進むなどデメリットがある。

しかし、SOは付与時点では権利でしかない。しかも権利行使には条件が設定されるため、会社側のデメリットにならないよう事前に制度を設計すればリスクは軽減できる。従業員から見れば、自社株の価値への期待値は同じであり、自社の経営が悪化したなら、SOの行使を放棄すればいい。

SOの価値を「付与される側」の視点で理解する

SOの価値は時間が生み出す。従業員が将来利益を得られる可能性を期待できて、初めてSOは導入効果を得られる。

付与する側の留意点:

SOの設計時に、将来SO行使者が得られる価値(売却益)は、現在の株価を上回らないことに留意が必要である。現在100円の株価の株式が、将来株式時価が上がっても100円で買える権利の価値は、どんなに高くても100円以上にはならないと考えられる。なぜなら、オプションの価値が100円以上になるのであれば、第三者割当増資を引き受けた方が有利であるため。最大のポイントは行使価格である。従業員側の多くが行使価格で、「株を買う」必要があるため躊躇する。しかし株を取得すると同時に売却するので、実質的には行使価格は従業員側の負担ではない。行使価格以上の株価なら必ず利益が出るからである。このシンプルな仕組みを従業員側が理解できるかどうかが、SO制度導入の鍵である。

SO導入を成功させるツールの活用

著者の開発したSaaS型のSO管理ツール「ストックオプションクラウド」では、会社の業績目標の達成をSOの行使条件に反映し、社員に見える化したり、従業員は自分のSOにいつでもアクセス可能になる。また、エンゲージメントストックは、会社と従業員のためのプロジェクト型賞与制度(目標達成型賞与制度)である。仮想の株式を付与し、仮想の株価による業績連動型報酬として、従業員に現金で報酬を支給する制度である。SOのような煩雑な管理業務がそもそもなく、ストックオプションクラウドを用いた導入や運用がよりやりやすいことから、中小企業のインセンティブ政策にとても向いている。仮想の株式であるため、医療法人、弁護士法人、税理士法人、社会福祉法人、学校法人などでも活用可能。

エンゲージメントストックで用いる仮想の株価は、仮想の株式の1株当たり累積営業利益等(増資の影響を排除できる)のKPIを用いることに特徴がある。株価算定方法も様々な手法があるが、エンゲージメントを高めるという観点では、コストアプローチとの相性が良い。コストアプローチにより会社の純資産を増やす=エンゲージメントストックの価値増加が実現できる。

SOの導入では、法務局への登記や法定調書の作成、証券会社への手続き等様々な手続きが必要になる。一方、エンゲージメントストックでは、それらは不要となるので、コスト面でのメリットがある。また、税制適格SOは費用を税務上の損金に算入できず、節税ができないのに対して、エンゲージメントストックでは、従業員は賞与、取締役は定期同額給与を用いることで、給与所得として、または仮想株式の売却を退職した場合に限定することで、退職所得として損金算入も可能となる。さらに外部の業務委託先に付与して、成功報酬型の業務委託費として損金算入することも可能である。

第2章 SOを語るための基礎知識

経営者が理解し、従業員に伝えるべきこと

SO導入を成功させたいなら、SOを語れる経営者になれ。シンプルで力強い言葉を持とう。経営者は、会社の未来を体感的にイメージし、経営戦略を思考することができる人が多い。会社の未来を株価という数字に置き換えて、経営幹部と成長のための経営戦略を語り合うことも可能。しかし、経理部門以外の従業員にとって数字、データ、手続きは、どれも自分の仕事とは直接関係のない面倒な話題でしかない。

経営者と従業員が同じように会社の成長をイメージできること。それが成功のカギである。

従業員に届く言葉に言い換える

ストックオプション=自社株購入権。会話の入り口は「将来、自社株を購入するときに損がない」ことからスタートするのが良い。付与や行使という言葉を使わないことで、株価は自分が貢献して得た会社の成長と同義語となり、SOを介した社員の経営コミットメントが実現する。

SO導入のメリットとは何か

SO導入の効果は大きく6つ挙げられる。

  1. インセンティブ効果:株価の上昇は、会社の業績向上や、企業価値の向上に大きく関係していることをSO付与時に十分に周知させる。

  2. 報酬コストの低減:役員、従業員がSOの権利を行使することで得られる株式の売却益は、株価がどれだけ上昇するかによって決まる。発行会社のコストはSO付与日時点において確定し、その後変動しない。そのため現金で支給する業績連動型の賞与等と比較すると、報酬、コストを低く抑え、資金の流出も抑える効果がある。

  3. 有能な人材の確保:一定の期間継続して勤務することや、権利行使時に在籍していることを条件とするなど、権利確定条件や権利行使条件の設計を工夫することで、退職防止を目的とした導入もできる。

  4. アナウンスメント効果:SO制度の導入により、会社が株価や業績を強く意識しているという経営姿勢を、社内や株主、株式市場にアピールするアナウンスメント効果が期待できる。

  5. コミットメント効果:自らも会社の成長に貢献し、株価を上げなければ期待した報酬を得ることはできないという意識を醸成させる。

  6. 安定株主の確保:SOの付与対象者は一般的に自社の役員・従業員であり、社内の人間が自社の株式を取得することで安定株主の拡大につながる。

  7. 従業員側に損失リスクのない株式報酬制度:SOは株価が下落していれば、行使しなくて良いので、付与対象者である従業員側には将来的なリスクがない。

SO導入のデメリットとは何か

  • インセンティブ効果の減少:上場企業においては、経済全体が低迷している状況では、業績以外の市況を大きく受ける。

  • モラルの低下や組織内に不公平感が生じる可能性:SOは、創業時の役職員や一部の従業員に限定して付与することが多いため、付与対象者の選定基準や付与数の配分基準が曖昧な場合には、不公平感が社内に広がる恐れがある。株式公開が承認された際に、有価証券届出書にて付与数が開示されるが、付与されていない従業員や付与数が少ないと感じる従業員から不協和音が生じてしまう可能性があり、モラルの低下を引き起こす可能性が危惧される。

  • 権利行使後の人材流出の可能性:SOの付与対象者が権利行使により、通常の労働の対価と比べて、極めて多額の金銭を得た場合、そこで満足して離職理由となる場合がある。

  • 専門性の必要性と、煩雑な事務処理:SOは、報酬としての側面と有価証券としての側面を併せ持つことから、その発行手続きや会場の際には様々な規制がある。さらにSO付与対象者それぞれに権利の付与から権利の行使、もしくは権利の執行までの管理運営の期間があり、SOの種類ごと、付与対象者ごとに、付与、権利確定、権利行使、失効等の個数、行使価格、権利、行使期間等正確に管理する必要がある。

  • 株式の希薄化:SOを付与し、その権利が行使され、付与対象者に株式が発行されることで、既存株主にとって株式の希薄化が生じる。

第3章 SOの概要

SOの仕組みと流れ:

  1. SOの発行時(付与時):発行会社から付与対象者に対して付与される権利には、権利行使できる期間が定められている。

  2. 権利確定時:SOは付与時に「権利の確定に係る条件」が課される。義務条件や業績条件など、権利の確定に係る条件が全て満たされた時点で権利が確定する。

  3. 権利行使時:付与対象者があらかじめ定められた行使価格を払い込むことで、株式を取得する権利を行使する。

  4. 株式譲渡時:取得した株式を株式市場等で売却し、売却価格と取得価額の差額をキャピタルゲインとして受け取る。

  5. 失効時:付与対象者にはSOを行使する義務は無い。

上場企業におけるSOを設計する場合は、売上目標を達成することと、退職しないことを権利行使の条件とする税制適格SOの付与、退職時に権利行使可能とする1円SOを付与して、退職金とする。

SOの税務上の取り扱い

所得税法上36条の規定では「所得金額は、経済的な利益を収入とすべき金額として計上する」とされている。SOは付与されるものの、利益となることを期待して発行・付与されるものだが、SOが「時価で付与」された場合は、原則として課税されない。時価未満で付与された場合は、時価との差額が経済的利益とみなされ、給与所得として課税される。しかし、個人が経済的利益を算出する事は困難を伴うため、別途所得税法施行令第84条3項にて、「時価未満で付与された一定の新株予約権について、付与時に課税せず、権利行使時に付与時の利益と合わせて課税する」こととされる。

SOは、付与対象者がSOを付与されたときに、発行会社にSOの対価を支払っているか否かで、無償SO、有償SOに区分される。さらに無償SOは税法上の適格要件を満たすか満たさないかで、税制適格SO、税制非適格SOに区分される。無償SOは、無償で付与されるため、税制上の経済的な利益=給与所得としてみなされると最大約55%の給与課税が適用される。ただし、税制適格要件を満たすことで、給与課税をされずに済む。

税制適格要件を満たすことで、権利行使時ではなく、株式の譲渡時まで課税が繰り延べられる。

SOの種類と付与者の金銭負担の分類

各SOの特徴に適した会社

  1. 税制適格の無償SO:権利付与、行使時に課税されない。株式を売却した際に、譲渡所得課税として取り扱われ、20%程度の税率となる。税制適格SOは業績連動型SOと呼称されることもある。税制非適格のSOの場合、上場後のキャピタルゲインに対して利益の半分近くを納付することになってしまう。そのため上場を目指す非上場企業においては、税制適格SOとして設計することが主流となっている。税務面における優遇措置があることから、上場企業においても、税制適格SOが報酬制度として有用。ただし、権利行使価格の年間の合計額が1200万円までとされているので、これを大きく超える報酬の代用には適さない。また付与対象者は「取締役、執行役、従業員等」とされ、監査役や外注先、法人等には発行できない。2023年12月に公表された令和6年税制改正大綱にて、株式保管委託要件、社外コード、人材に対する税制、ストックオプションの拡充など、税制適格SOが拡充されている。

  2. 税制非適格の無償SO:通常、権利行使価額を1円と設定するSOであり、株式を報酬として付与するものと同様の効果を持つため、株式報酬型SOと呼称されることもある。権利行使時に給与所得として課税され、超過累進課税率が適用される。IPOを前提とした場合、上場後にSOを行使すると株価が権利行使価格を大きく上回るケースでは多額の課税が発生する。退職に起因して、株式を取得する権利が与えられたと認められる場合は、退職所得を課される。

  3. 有償SO:従業員等へ時価で発行されるものであり、報酬として発行されるものではないが、実務上SOに区分される。有償SOの特徴は、発行時に付与対象者からの払い込みが発生する点である。加えて、公正な価額により発行された有償SOは、「金融商品の取得」とみなされる。そのため権利行使時において、給与所得課税されることもなく、売却時に譲渡所得課税されるという課税上のメリットがある。発行時の払い込みが付与対象者にとっては負担となるため、資金のある役員を対象とするケースが多い。また、有償SOは勤務等に対する報酬ではないという取り扱いになることから、役員報酬としての決議が不要。有償SOが発行されるケースは、主に「税制適格SOの対象とならない相手(大株主、法人、監査役、外部協力者等)にSOを発行したケースや、上場企業において、役員に対するインセンティブプランとして発行するケースが考えられる。

  4. 信託型SO:創業時の会社にオススメとされてきたもので、業績連動型のインセンティブ制度の一種として活用されている。企業が発行したSOを、信託を通じて役員、従業員等に交付するもので、付与対象となる役員、従業員等には「企業への貢献」に応じてポイントが付与される。信託期間の満了時にポイント数に応じた数が交付される。従来のSOは、入社時の株価によって、キャピタルゲインに差が生じるため、上場後に付与され、行使した場合は株の売却益があまり魅力とは言えなかった。そのため上場後に有能な人材を募集するためのインセンティブ効果が低かった。これに対して信託型SOは、キャピタルゲインが固定されるので、勤続年数の差によるインセンティブ効果の差を抑えることが期待できる。 

第4章 SOの戦略的活用

自社に合ったSOの最適化

  1. 目的を明確にする:自社の成長ステージを確認する。大きく上場企業、上場を目指す非上場企業、上場を目指さない非上場企業の3分類で、想定されるSOの活用方法が異なる。

  2. SOを活用した経営戦略を立てる:経営の手段としてSOを活用する。先行き不透明な経済状況、人材確保の難しさ、事業のDX化、海外人材の活用などを念頭に、これまでとは異なる経営戦略を立てる上で、SOの活用も検討してみる。

厳しさの増す経営環境にSOの効果を期待

業績が悪化する局面においては、資金の流出を伴う役員報酬等の人件費を削減し、代替としてSOを報酬として付与することが考えられる。これには資金の流出を減少させるとともに、付与された役職員に自社の企業価値を増加させるインセンティブをもたらす。また、従業員持株制度の代替としても活用が考えられる。

外部協力者に対するインセンティブ報酬として活用

一定の条件を満たす必要があるが、税制適格SOを社外協力者に付与することも可能。成長を目指すステージにおいては、資金が不足することが多く、事業のDX化を推進する場面や、IPOを目指して、社内管理体制を構築していくために必要となる優秀な外部協力者に報酬を支払う場合が想定される。その場合においても、前述の役職員のケースと同様の効果を発揮する。また、SOを報酬として渡すことにより、社外協力者に当事者意識を強く持ってもらうことや、長期的に関与を継続してもらえるという効果も期待できる。

グローバル人材含むリクルート効果

SOを含む株式報酬制度が発達している国においては、報酬としてSOを希望する人材が多くいる。そういった人材を確保するために効力を発揮する。それは報酬面としての魅力だけでなく、SOを含む株式報酬制度の存在が効果的なメッセージとなり得る。

信託型SOへの国税庁の見解に波紋が広がる

信託型SOには「給与」としての税務処理が必要で、最大55%の税金が課されるとの見解が示された。導入企業側は譲渡所得として税率20%を想定していたため、負担が増えることになった。企業側の想定「信託型SOは、有償ストックオプションの1種類と認識。株式売却時に譲渡所得として20%の税金を収めれば良いのではないか」。国税庁側の見解「実質的には、発行会社が役職員に権利を無償で付与しているので、労働の対価である給与として課税されるべき」。単純計算で、SO売却時に1000万円の利益が見込まれていたものが、手取り800万円と450万円では大きな差である。

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