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すきな朝

実家に帰ってきた。
朝、母が仕事へとゆく車に乗せてもらって海辺の小さい町へ向かう。
母は養護教諭をしていて、校庭の先はすぐ海が広がっている最高の場所に校舎はある。保健室からは海が見え、保健室の前には藤の花と家庭菜園くらいの小さな花畑があって、その季節になると色とりどりの花が咲く。とっても綺麗で癒される。
もうすぐ定年を迎える母で、イヤイヤいっていたけどいざ定年となると少し寂しいなと呟いていた。
まだ社会へ出ていないわたしは母のことをとても尊敬する。もちろん、すでに定年した父のことも。わたしの家族は4人、父も母も姉も皆学校に勤めていて特殊な環境だとつくづく思う。わたしだけ違う道を選んだわけだが、わたしのやりたいように応援してくれる家族が本当に有難いし恩返ししたいと思い続けて何年も経つのに未だ恩返し出来ていない自分が情けないとも思う。いつか誇れる娘に妹になれるよう、今を頑張るしかないと言い聞かせながら今朝の散歩をしながらまた思った。

とまあ、しみじみした話を元に戻して、

赤信号で車から降り、母の学校の近くの駅から2駅先の姉の家へと向かうべく海沿いの国道一号線を歩く。歩道には魚屋やパン屋、蒲鉾屋、床屋などたくさんのお店があってほとんどはまだ閉じているけど魚屋の水撒きの時間に歩く時間がだいたい被るからホースの水を避ける時に『おはよう』と魚屋のおばちゃんが道ゆく人にかける挨拶に心があったかくなる。実家に帰るたびにこの瞬間に毎朝心があったかくなるんです。

南口入口の歩道橋の手前で曲がったらもう駅に到着。

黙々とこれから出勤する人たちが階段を登っていくその横に、小さい青果店がある。
いつも朝早くから店を開けて、軒先まで沢山の果物が綺麗に並べられている。赤いヒラヒラしたひさしがいい。
一ヶ月ぶりに見た店先には、オレンジやみかんが並べられていた。春になったんだなあ。
海のすぐそばだからカモメが鳴いている、風が心地よい。潮風に花粉が負けるこの場所では、花粉を気にせずゆっくり歩ける。


目で、果物で、季節を感じるこの町の朝。

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