Web3でクリエイターやコンテンツの未来がどう変わるのか? 前編
株式会社MintoのCEO 水野です。Web3でクリエイターやコンテンツの未来がどう変わるのか?という視点で、Minto社での経験も交えて前編/後編の2回に分けて解説していきたいと思います。
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Web3とは?
Web3は、2014年に暗号通貨のイーサリアムの共同創設者であるギャビン・ウッドが作った言葉とされています。日本では2021年後半にバズワード化したので、各所で、様々な説明のされ方をしていますが、僕は、ブロックチェーン技術を活用した分散型ウェブ・サービスの総称だと認識しています。暗号資産、DeFi、ブロックチェーンゲーム、NFT等のサービスが含まれます。
Web3とそれ以前のWebの世界を超ざっくり分類すると、以下となります。
Web3はWeb3.0とも表記する事がありますが、1999年にティム・バーナーズ=リーが提唱した「Web3.0」=セマンティック・ウェブの概念との混同を避ける為、本文では、Web3として統一します。
Web2の世界では当たり前だったFacebook、Google、TwitterなどのSNSに、IDやパスワードを預ける事がなくても、情報へのアクセスしたり、データの譲渡ができるのが大きな特徴です。ブロックチェーン技術を活用すれば、企業ではなく、システム=ブロックチェーン技術と、ネットワークに参加しているユーザーによって分散的にデータを管理し、その正当性が担保できるからです。10年後に歴史を振り返れば、Web3の世界での最初のヒットサービスがビットコイン=暗号資産だったと位置付けられると思います。
今後、Web3向けサービスは、金融(DeFi)、ブロックチェーンゲーム、コンテンツ(NFT)、コミュニティ(DAO)、それらを包括する仮想世界(Metaverse)へと広がっていく可能性があります。これは、インターネットの歴史上、10年、20年に一度の変革の可能性でもあり、それ故、世界中で盛り上がっているのが今だと思います(僕もそのうちの1人です。)
では、Web3でクリエイターやコンテンツの未来がどう変わるのか?
Mintoでは、2018年にブロックチェーンゲーム「CryptoCrystal」をローンチ、OpenSeaやRaribleでのNFT販売、The Sandboxでのメタバース展開など様々な経験をしてきました。これらの事例を交えながら解説していきたいと思います。
古いデジタルデータに価値が付いた日(NFT)
Minto社が、2018年の5月に開発したブロックチェーンゲームの「CrypotoCrystal」は、前年11月の「Crypto Kitties」(NFTの規格/ERC-721の可能性を顕在化させたサービス)に感動しつつ、コンテンツ会社としては、もっとキャラクターの可愛らしさに拘りたいな!と創ったプロダクトです。
↑上記はDapperLabs社CryptoKitties ↓下記はMinto社開発のCryptoCrystal
宝石をモチーフにした可愛いキャラクターが特徴で、ゲームはキャラクターをランダムに採掘するだけのシンプルな仕様。ゲームを司るスマートコントラクトで自律的に稼働し、運営・開発が後からプログラムを改変できないような設計にする事に拘りました。データの正当性が、ブロックチェーン技術によって担保される事がコンテンツの価値を産むと考えたのです。
おそらく日本では、ほぼ最初のDappsで、リリース前に15万人の事前予約があり、リリース後、約10,000点のNFTが生みだされたのですが、その後、2019〜2020年は暗号資産の暴落と共にブロックチェーンゲーム全体へのアクセスも落ち込み、運営側でプロジェクトの次のアクションをすることはできていませんでした。
ところが、2021年に入って再び暗号資産が高騰し、NFT(※ここではNFT自体の解説については省略します。)の存在にスポットライトが当たり、状況が一気に変わりました。
2021年の3月(Beeple氏のNFTアート75億円落札前後)頃から、暗号資産の投資家が、NFT投資に移行してきました。そしてその流れの中で、”どんなNFTに価値があるか”を議論し始め、NFTのOGプロジェクトブームが発生しました。OGとはOriginal Gangsterの略で、”初期の頃に狂ったことをやっていた奴ら” ”元祖”というような意味合いを持ちます。2017年、2018年頃に遡ってイーサリアムのチェーン上にデータを刻む=NFTを生み出す事は二度とできないのだから、そのころのプロジェクトやNFTには価値がある、といった考え方です。ビンテージワインの発想に近く、ビンテージNFTと呼ばれることもあります。
ともあれ、ブロックチェーン/NFT界隈では、2017-2018年頃のプロジェクト20-30件くらいがOGプロジェクトとして認識されることになり、2021年の夏頃にそれらのOGプロジェクトのNFTが急騰。CryptoCrystalのNFTも2021年の8月にOpenSeaでフィーチャーされるなどして、月間で約3億円の取引が行われました。日本発のOGプロジェクトの中では、おそらくCryptoCrystalが一番評価されたと思います。
ちなみに、最も価値がついたOGプロジェクトのは、CryptoPunksで、メディアでも大きく取り上げられました。
CryptoCrystalは、2021年8月のタイミングで、多くのNFTホルダーが生まれたことから、Discord上にコミュニティを作り、NFTホルダーを中心にしたコミュニティ運営体制に切り替え、キャラクターの権利もCC0化(クリエイティブ・コモンズ・ゼロ=権利放棄)して、コミュニティのメンバーがCryptoCrystalの意思決定を行えるようにしました。現在ではDAO化して、IPとして漫画やメタバースへの進出なども検討されています(DAOについては後述します)。
僕自身も2000年代からデジタルコンテンツのプロデュースを長いことやっていますが、数年前のデジタルデータが、ある日、価値が上がり、そして即座に取引されるというのは、初めての経験でした。まさにNFTの特徴を身をもって感じることができました。そして、このような体験は、Web3の世界では当たり前になるのかもしれないと感じています。デジタルデータだけれど、モノのように価値を感じる事ができる、それがNFTです。
コミニュティや組織の概念が変わる?→DAOの基礎知識
Web3の世界の中では、ブロックチェーン技術を用いて、クリエイター、マネジメント、投資家、ファンの関係性と役割が変わり、その中心にあるコミニュティがより重要になってきています。
Web3時代の新しいプロジェクトやコミュニティの組織の仕方として、DAO(Decentralized Autonomous Organizarion=分散的自律組織)が注目されています。様々なスキルを持った人が1つのテーマを元に集まり、プログラムで、プログラムのルールを決定し、トークン保有数などで投票を行なうなどして意思決定する組織です。主にDiscord上でコミュニティが運営され、お互いの素性を知らないメンバー同士で運営される事も普通です。(配布されたトークンに正当性があり、それで意思決定できれば、リーダーがいなくても、お互いの素性を知らなくても運営できるからです)
DAOは、会社ではないし、参加したい人が手を挙げて、それぞれのスキルに合わせてプロジェクトの中でコミットするのが特徴です。給与というような対価ではなく、プロジェクト立ち上げメンバーが発行したトークンをインセンティブとしてもらうケースが多いです(残念ながら、日本ではトークンの発行は暗号資産交換業の免許がないとできないので、トークンのインセンティブをフックにするのは難しいです)
単なるファンコミュニティではなく、ボランティアでもなく、意思決定にも関わり、プロジェクトが上手く行った場合には、インセンティブとして受け取ったトークンを売買して経済的なメリットも享受できるかも、というのがDAOの面白さです。
Mintoの注力領域であるクリエイターを中心としたコミュニティを例に、Web2とWeb3で比較してみました。
Web2のクリエイター発プロジェクト
Web2の世界では、SNSの発展により、クリエイターが企業を介さずに情報を発信できるようになるという大進歩がありました。一方でつくりたい想いを体現するのはクリエイター個人の事が多いですし、収益も基本的にはクリエイターに還元されます。もちろんエージェントとして企業がサポートすることもありますが、あくまでサポートという位置づけで、クリエイターの外側にサポートする企業やファンがいるという世界観です。
Web3(DAO)のクリエイター発プロジェクト
一方でDAOの場合、クリエイター(ファウンダー)がコンセプトを作ったら、企画段階からコアチームを組成して、コンテンツや商品自体をチームで共に創ります。コアチームには様々なサポートメンバーが参加します。
初期にルールを決め、最初に決めたルール以外の決め事はガバナンストークン(コミュニティでの投票権であり、自由に売買できる)で管理。Web2の場合は、創作してSNSで発信する前まではクリエイターのみだったのが、Web3のDAOコミュニティはクリエイターを中心にしながらも、制作段階で、様々なスキルのある人が利害関係者(トークン保有者)としてインナーコミュニティ化し、プロジェクトとして動いていきます。
もちろん、ファンの人でも、プロジェクトで求められている能力に合致すれば、インナーコミュニティに入ることができます。その境界線は、トークンの所持によって線引され、雇用/非雇用ではなく、参加/不参加で運営されます。(繰り返しますが、日本では法律上、トークン発行が難しいです)
ということで、だいぶ長くなってしまいましたので、次回の後編で、より具体的にDAOを掘り下げて、CryptoCrystalでのDAO実体験や、USでのDAO事例を取り上げたいと思います。
さらに、メタバースでのMInto社事例 (The Sandboxでの2.8億円のNFT販売や今後の可能性)についても取り上げたいと思いますので、ぜひスキ!&フォローをお願いします。
Web3関連の話は、水野がSkyland Venturesの木下さんと対談したポッドキャストがあるので、こちらもぜひお聞きください↓
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