落ちながら飛行機を作れ。広告業界出身者が語る、広告業界と事業会社の違いとは?
人生100年時代、転職やキャリアチェンジが当たり前になっている中で、どんなキャリアを歩めば良いのか考えている方も多いのではないでしょうか?
クライアントのマーケティング課題に向き合う広告業界では、「事業会社のマーケターとして働きたい」「経験を生かし、起業や経営参画にも挑戦したい」という思いを抱くこともあるはずです。
本セミナーでは、広告業界を経て、事業会社マーケター/CxO/起業/BizDevなど、異なるキャリアで活躍している4名の方に登壇いただきました。現職に至るまでのプロセス、試行錯誤や葛藤など、ご自身のキャリア戦略について語ってもらっています。
前編では、広告業界と事業会社の違いを中心に、キャリア選択のターニングポイントについて話を伺いました。
■登壇者:
■南坊 泰司
株式会社manage4 代表取締役
株式会社NORTH AND SOUTH 代表取締役
電通にてブランディング、メディアプランニングなどマーケティング部署を歴任した後、メルカリに入社。マーケティング/PRチームのマネージャーを経て、戦略チームマネージャーとしてメルカリのオフライン戦略を牽引。2020年独立。
■安藤 尚人
株式会社フェズ デジタルビジネスプロデュース部長
株式会社ストアギーク 取締役
アドテクノロジー関連会社2社でデジタル施策のセールスやコンサルティング業務に従事。2016年にジョンソン・エンド・ジョンソンへ入社し、eコマースやマーケティング施策を担当する。2020年にフェズに参画し、現職。
■大前 宏輔
株式会社YOUTRUST CMO
サイバーエージェントにて子会社代表や広告事業部営業局長を経験した後、2018年にメルペイに入社、2020年より同社マーケティングマネージャーに就任。2021年にYOUTRUSTに入社し、現在は執行役員CMO 兼 マーケティングPR本部長を務める。
■高橋 伸幸
株式会社Minto 取締役COO
株式会社セプテーニにてWeb広告営業を担当。その後、VASILY、DeNAを経て、2018年にMinto(旧:株式会社wwwaap)に参画。現在はCOOとして、コンテンツソリューション事業と人事領域を管掌している。
■モデレーター:
■水野 由貴
株式会社グロービス・キャピタル・パートナーズ
人材総合サービスを展開するエン・ジャパン株式会社にて、求人広告営業、人材紹介部門の立ち上げに関わり、人材紹介営業、コンサルタントを経験。同社の経営戦略、新規事業開発に携わる中、戦略的子会社の立ち上げに参画し、代表取締役社長としてビジネスパーソン向けのマインドフルネスソリューションの拡大に携わる。サービス譲渡後、2018年10月、グロービス・キャピタル・パートナーズ入社。バリューアップチームであるGCPXにて、投資先企業の経営組織支援に取り組んでいる。
広告業界出身者のキャリアの作り方とは?
水野:皆さんは共通して、広告業界から事業会社への転職をされています。仕事内容や会社、キャリアの選び方について、どのように考えていたのでしょうか?
安藤:キャリア初期から、「尖る」ことを意識していました。アドテクノロジーという分野での専門性を高めて、営業としてサービスを販売することを中心に行なっていました。
私が在籍していた2010年代前半は、特にアドテクノロジーが盛り上がりを見せていた時期です。これから伸びていく市場なら、自分も成長できるはずだと考えたのが会社と業界を選んだ理由です。市場が伸びないと会社も個人も価値が高まらない。だからこそ市場を伸ばしていくために頑張らねばという気持ちがありました。
高橋:転職を検討しているときに、スタートアップ界隈の勢いを感じていました。いくつかの会社が大型の資金調達に成功するなど、業界全体が盛り上がりを見せていたんです。その中で、最も勢いがあると感じたVASILYに飛び込みました。そこで営業から商品開発だとか、出来ることを増やして行きました。
大前:私は新卒でサイバーエージェントに入りましたが、引き継ぎではない「自分の仕事」を増やすために大阪支社に配属してもらいました。その後子会社の立ち上げをしましたが、上手くいかず、そこで多くのことを学びました。特に熱が入ってない事業は上手く行かないことを強く学びました。その後、キャッシュレス決済が世の中の主流になりそうな予感があり、お金に関する価値観が大きく変わりそうという、わくわくした気持ちがあってメルペイに転職しました。
南坊:私は電通という、いわゆる大手総合代理店に勤めていたわけですが、意識的にホットな分野に携わることを意識していました。必ずしも「本流」というところには属しませんでしたが、社内でネゴシエーションしつつ、専門性や知見を高められる仕事に関わろうとしていましたね。
コミュニケーションも意思決定も、とにかく速い
水野:南坊さんと大前さんは、広告代理店からメルカリグループに転職しています。問題なく対応できたのでしょうか?
南坊:実は私は、電通にいたときにメルカリを担当していたことがあったんです。なのでメルカリを知っているつもりだったのですが、いざ入社してみると様々な面でギャップがありましたね。特にスピード感は驚きの連続でした。Slackで何でもやりとりするとか、基本的に会議は30分で終わるとか。意思決定もとにかく速かったです。
大前:メルペイではマーケティング担当として入社したのですが、施策に対して「お金を使う」ことの怖さを感じましたね。サイバーエージェントでクライアント向けに提案したものを、メルペイでは実行するという立場に変わりました。その違いは想像していたよりも大きかったです。マーケ予算がどういうロジックで作られていているか、経営に近い思想を身に着けられたと思います。
南坊:基本的に広告代理店は、与えられた予算をすべて「使う」ことが求められます。広告代理店は基本的に手数料のビジネスなので、予算を使い切らないと売上になりません。
でも事業会社からみると、使わなくて済むならば、使わない方が良いじゃないですか。それぞれで「良い」とされる仕事のやり方が正反対なんです。
水野:働き方などの観点ではいかがですか?
大前:転職理由のひとつに、子どもと一緒の時間を増やしたいという思いがありました。ちょうど2人目の子どもが生まれたタイミングで、働き方を変えたいと思っていたんです。
働き方改革を謳い、制度として組み込まれている会社は多いです。ですがメルカリグループの場合は、「大胆に働きつつ、働きやすさをどう担保するか」ということに対して、経営陣が深くコミットしているんです。それゆえに働きやすさが単なる制度でなく、文化として組織に根付いているという実感がありました。
南坊:メルカリは目標設定・管理フレームワークとしてOKRが導入されています。3ヶ月ごとに成果を出さなければいけないという雰囲気があります。落ちながら飛行機を作っているようなもので、大変さもありましたが、スタートアップならではのスピード感、醍醐味を味わうことができましたね。
自分の特性を把握した上で、専門性を生かしていく
水野:安藤さんは、アドテクノロジーから外資系企業のジョンソン・エンド・ジョンソンに転職されています。思い切ったキャリアチェンジですが、どのような経緯があったのでしょうか?
安藤:アドテクノロジー企業もすごく楽しかったんですが、デジタルマーケティングとアドテクノロジーだけではなく、事業構造をより立体的に理解出来るようになりたいと考え、事業会社に行きたいと考えてました。転職前から、日用品メーカーのクライアントのデジタルマーケティング領域を支援していたことがありました。最終的に仕事上のつながりもあり、縁があって転職することになったんです。
水野:つながりがあったということですが、他のメーカーや事業会社への転職は考えなかったのでしょうか?
安藤:全く考えませんでした。ジョンソン・エンド・ジョンソンでは当時、20~30代の優秀なメンバーが抜擢人事をされることがありました。当時所属していたスタートアップのようなカルチャーや、人事の風通しの良さを感じることができていたんです。外資系企業のカルチャーや制度も魅力的で、様々な面でジョンソン・エンド・ジョンソンへの転職がベストだと考えていました。
水野:高橋さんは、従業員規模が大きなセプテーニからスタートアップのVASILYへ、そしてVASILYから規模の大きなDeNAに移られました。この辺りのキャリアの意思決定について伺えますか?
高橋:スタートアップで働いた経験は代え難い貴重なものでしたが、もう一度、自分が伸ばしたいスキルを着実に伸ばしたいと考えるようになりました。そのためには、ある程度大きな会社で経験を積むのが最適かなと考えたんです。最終的には当時のDeNAの役員に誘ってもらったというのが転職のきっかけになりました。その後横浜DeNAベイスターズのスタジアムを見に行ったときに3万人の熱狂を目の当たりして、デジタルマーケでは体感出来ないものだと感じ、出向することにしました。
水野:DeNAに入った時点で、高橋さんは広告代理店であるセプテーニと、事業会社のVASILY、DeNAを経験されています。広告代理店と事業会社の違いは何でしょうか?
高橋:広告代理店では、基本的に、商品を変えることはできません。サービスを提供する会社が作ったものを、適切なクリエイティブにのせてその付加価値に手数料をいただくというビジネスモデルです。でも事業会社では、商品自体を変えることができます。クライアントからいただいたフィードバックをもとに、商品やサービスをブラッシュアップする。むしろその機動力の高さこそ、スタートアップやベンチャーに強く求められている姿勢です。
私はこれまでの経験から、マーケティングに精通するよりも、手を動かしたり、メンバーを巻き込んでチームを作ったりといった仕事が向いていると感じるようになりました。なので事業会社の中でも、マーケターというよりは、事業家や経営者として事業開発をする道を歩んでいったのだと思います。
<後編に続く>
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