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自選ルポルタージュ集

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書き手である私自身の興味の向くままに取材し、隙あらばとばかりに発表してきたルポルタージュのまとめ。
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記事一覧

『女装千年王国』……男の娘エロゲーに人生を賭けた西田一が語る、ただひとつの“愛の物語”

『女装千年王国』……男の娘エロゲーに人生を賭けた西田一が語る、ただひとつの“愛の物語”

その晩、私はひとりの男と酒を飲んでいた。

「明日上京するので、お会いできませんか?」

 西田一から、そんな連絡を貰ったのは前日の夕方だった。ヒロインが全員男の娘ということで注目された『女装山脈』を出発点に、ひたむきに男の娘をテーマにしたアダルトゲームをつくり続ける男。ともすれば「変態」と謗られるテーマに人生を賭けた男と初めて会ったのは昨年制作した『女装学園(孕)』が発売された直後のことだった。

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【総力ルポルタージュ】
行ってみて聞いてわかった 御朱印帳のネット転売で、なぜ宮司は「もう来ないで下さい」と書いたのか

【総力ルポルタージュ】 行ってみて聞いてわかった 御朱印帳のネット転売で、なぜ宮司は「もう来ないで下さい」と書いたのか

その日は、いつもとは違う一日だった。

 140文字の10倍100倍1,000倍と、言葉は紡がれていた。それはまるで、日常の中で体にこびりついた穢れを払っているように思えた。

「良かったのか、悪かったのか……地域の方は“悪いことやってるんじゃないからいいんだよって”と声をかけてくれます。“売るヤツが悪いんだから! トンデモねぇだろう”と電話をかけてきてくれる氏子の方もいらっしゃいました」

 よ

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【人物ルポルタージュ】29万票の金利~山田太郎と「表現の自由」の行方<前編>

【人物ルポルタージュ】29万票の金利~山田太郎と「表現の自由」の行方<前編>

「マンガ・アニメの表現の自由」をめぐる騒動は尽きない。おおよそ、この世に表現というものが生まれてからというもの、時の権力や世の良識と対峙するのは、あらゆる表現の宿命というもの。

 けれども、それは大衆が議論する政治的な課題とはなりにくい。先月行われた東京都議会選挙でも「表現の自由」を争点としようという試みはあった。「表現の自由」に関心のある候補者が当選、あるいは落選はした。けれども、豊洲への市場

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法政大学の学生運動を取材しに行ったら、目の前で次々と逮捕者が出た話

法政大学の学生運動を取材しに行ったら、目の前で次々と逮捕者が出た話

「大学に行ったら学生運動をやりたい!」

 そう思っているヤツらは意外に多いのではなかろうか。だが、21世紀も10年あまりが過ぎた今、大学は就職予備校と姿を変え、かつての学生の特権を生かした自由な空間を創出する学生運動を体験できる場は、ほぼ存在しない。

 そうした状況下、学生の自由・自治を大学当局が奪い去ろうとする流れに抗して戦いが続くのが、東京は千代田区にある法政大学だ。少数派になりつつも、や

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オフィスに酒しか置いてない。ハードボイルドな出版社の話

オフィスに酒しか置いてない。ハードボイルドな出版社の話

 今回、本誌編集長からの電話で、急に元木昌彦さんの新著『知られざる出版「裏面」史 元木昌彦インタヴューズ』を依頼された。これは、心してかからねばならぬ仕事だと思い、早速書店に出向いた。だが、本がない。よく見ると、発売日前でまだ搬入もされていない。本誌編集部にも、まだ届いていないということだったので、神保町にある出版元まで行くことになった。

 出版元の株式会社出版人は、よろず評判屋を名乗る今井照容

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投じた予算は3900万円超 下津井~『ひるね姫』の旅路で見た「聖地巡礼の魅力は作品よりも人」という事実

投じた予算は3900万円超 下津井~『ひるね姫』の旅路で見た「聖地巡礼の魅力は作品よりも人」という事実

 3月に公開された映画『ひるね姫 ~知らないワタシの物語~』(以下、『ひるね姫』)の紹介記事を読んだ時、ちょっと驚いた。いくつかのサイトでは、この作品が「岡山県倉敷市が舞台」と記されていたからだ。

 倉敷市といえば、白壁の街並みが残る美観地区で知られた街。でも、この映画の舞台として描かれたのは、そこではない。倉敷市の下津井なのだという。もとより岡山市出身の私は、少しばかり違和感を感じた。確かに、

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参加するイベントから住みたくなるイベントへ──第2回「蒲田・コスプレこれくしょん」にOTAKU議員が語る新たなる希望

参加するイベントから住みたくなるイベントへ──第2回「蒲田・コスプレこれくしょん」にOTAKU議員が語る新たなる希望

「単なるコスプレイベントじゃなかった。これは、とんでもないイベントだ……」

 会場に詰めかけた見物客は、皆そう思ったに違いない。

 昨年4月17日、蒲田駅西口の広場には大勢の人が集まっていた。商店街の主催で開催される春の催し「蒲田行進曲フェスタ」。その中でも目玉イベントとなったのが「蒲田・コスプレこれくしょん2016」。それは、いわずと知れた漫画原作者・小池一夫氏らを審査員に招いて行われたコス

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神社本庁も「これはちょっと……」と漏らした。「DMM GAMES」新作『社にほへと』から考えるオタクの信仰

神社本庁も「これはちょっと……」と漏らした。「DMM GAMES」新作『社にほへと』から考えるオタクの信仰

『艦隊これくしょん-艦これ-』や『刀剣乱舞-ONLINE-』など数多くのヒット作を世に送り出してきた「DMM GAMES」が新たに発表した『社にほへと』。夏からのリリースを予定して、事前登録が始まっているこのタイトルは、神社を擬人化した「社巫娘」なる美少女キャラクターが登場する。

 事前登録をすると、毎日1回おみくじを引くことができ、「伏見稲荷」「鹿島」「春日」などのキャラクターを引き当てること

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