見出し画像

異国の思い出

初めて真夜中に散歩をしたのは外国でだった。
今思えばその国で警察を呼ぶ術さえ知らなかった小娘が無謀極まりないが、とにかく私は怖くなかった。
まるで現実味がなかったからかもしれない。その国にいる間に起こった出来事は、すべて夢の中の幻のようだったから。

怖くはなかったけれど、孤独ではあった。
私を知る人がいないことも、私を私たらしめる物事が全く通用しないことも。

その国にいるあいだに三度散歩をした。街灯や夜中でも開いている店が多い街で、夏はTシャツにショートパンツでふらふら出歩いた。

あの頃、お金があればタクシーに乗ってどこへだって行けるのに、と思っていた。今は当時に比べればずいぶんとお金は溜まったのに、相変わらずタクシーを使う事はできない。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?