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店ダンジョン

「いらっしゃいませ〜」

なかなか雰囲気のいいお店♪
私が店に入るなり、すぐに店員のお姉さんが水を持ってきてくれた

「ご注文が決まりましたらお呼びください」

氷が2つ入って冷たい水、
美味しい水
でも、、、

ここは本屋よ

これから本を買おうと言うのに、この水は、、、
ジャマだわ

片手が塞がったこの状況では本を手に取って読む事すら、、、
あっ!そういうこと?
立ち読み防止?

いや、立ち読み防止なら貼り紙でもしておけばそれで済むはず、、だとするとこの水はいったい、、、

普通にただのサービス?
でも本屋に来る客が水を貰って喜ぶかしら?

ん〜謎ね、、
この水、ほんとにジャマ

そういえば、
店員のお姉さんは「ご注文が決まりましたら、お呼び下さい」って言ってたな、、ひょっとして飲食店?本屋に見せかけた

う〜ん、、でもテーブルも椅子もないし、、


いつのまにか私は、本を選ぶ事よりこの店の謎を解くことに夢中になっていた
そこに店員がやって来た

「ご注文はお決まりですか?」

「えっ、、いや、、」

ここは、いちかばちか注文してみるか

「あ、アイスコーヒーをひとつ、、」

「え?アイスコーヒー?え?えぇっ?なんですか?」

違ったぁーー!!
飲食店じゃなーい!

お姉さんはビックリした顔をしている、そんなに意外だったのか、、

「す、すいません、まだ注文決まってないんで、決まったら呼びます」
慌てて取り消し、お姉さんに帰ってもらった

飲食店の線はなしね
となると、、やっぱり本屋?
わざわざ店員を呼んで「この本下さい」って言うの?斬新、、

と、その時
少し離れた場所にいた客が店員を呼んだ、そして

「あ、チーズたこ焼き1つ」

「はい、チーズですね、少々お待ちください」

たこ焼き屋!!
そうか、たこ焼き屋だったのね!
たこ焼きが出来るまでお好きな本を読んでお待ち下さい、という事か

なるほど、チーズたこ焼き、、美味しそう
ゴクリ、、

私はすぐに店員を呼び注文した

「あ、チーズたこ焼き下さい」

「は?」

「え、いやチーズたこ焼きを、、」

「それはあちらのお客様の注文です」

「えぇ、ですから同じものを、、」

「あなたが見つけ出した注文ではないでしょう?自分の力でメニューを見つけ出して下さい」

「、、見つける?」

「まだ解らないのですか?ここにある本の中から探し出すのです」

「あっ!そういう事?この何十万冊も有る本の中からメニューを探し出して注文しろと」

「メニューは全部で3冊、ですがあちらのチーズたこ焼きのお客様が本日2冊目を見つけて注文に成功いたしましたので、残るメニューは1冊のみです」

「もし、、見つけられなかったら、、?」

「アナタもここにある本の1冊になってもらいます」

「ファ、ファンタジー!世にも奇妙な物語みたい!」

「フフフ、、おっと、またお客さんが来店されたようですよ?お急ぎ下さい」

マズい、、!あの客より先にメニューを見つけないと!

見たところ相手は老人夫婦、2対1とコチラの方が不利だけど、スピードと視力なら負けてないわ

いける!

しかし次の瞬間!
お婆さんは指で合図し、お爺さんは右の本棚から、お婆さんは左の本棚からメニューを探し始めた

慣れている、、
さては、この道のプロ?

さらにお婆さんは胸元から何かを取り出した
あれは!ハヅキルーペ!
視力も完璧にカバーしてきた!おそるべき老夫婦、これはウカウカしてられないわ

私も早速メニュー探しを開始した
メニューなので、おそらくページ数は10ページ前後、薄型で大きめのサイズと判断した私は雑誌コーナーから攻めることにした


作業開始からおよそ2分


あった。

大きな字でメニューと書いてある、これね!こんなにすぐに見つかるとは、、運がいい

でも、、
何このメニュー、、
何も書いてないわ、2ページ目も、3ページ目も、、白紙

、、、、、

どういう事?

どこかに小さく書いてあるとか?薄い字で書いてある?いや、その形跡はない

だとすると、、
あっ、水!渡された水をここで使うのか!メニューに水をかけると字が浮かび上がるという仕組み

ためしに水を数滴たらしてみた、、が、特に反応はない

落ち着くのよ、このメニューを私が持っている以上もう老婆チームの勝ちはな、、

「ふわとろカツ丼を2つ」

静かな店内に老婆の声が響き渡った
老婆は店員を呼び、注文をしていた
手にはメニューと書いてある本を持って

そうか、、ダミー、私が見つけたメニューはダミーだったのね、、、


こうして、、私は1冊の本になった。
この本が私です

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