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裁判員裁判:殺人未遂 その1

殺人未遂、なんとも恐ろしい響き……。
例え未遂であっても、人の命を危険に去らした以上、それなりの処罰を下して欲しいものだ……。
しかし、その犯人に障害がある場合、罪はどうしょうもなく軽くなるのであ~る。

今回、裁かれるのは……

殺人未遂、銃砲刀剣類所持等 取締法違反
(わ)第15号

34才の男性。
折り畳みナイフで父親を刺したという裁判員裁判。

弁護側は
『彼はアスペルガー症候群であり、ナイフで刺したが殺意は無い』という主張だ。


彼は前科2犯である。
痴漢をして罰金10万円
ナイフ所持で罰金9千9百円

この事件を起こす前から、家で暴れるなどの問題行動が多く、父のすすめで精神科に月1度の通院をしていた。
その事で揉めて父親をナイフで刺したという。
検察側に、どうして刺したのか聞かれると、本人が語るには

『精神科に行く目的が分からない。カウンセリングの意味が分からない。病院に行きたく無いのに、父親が病院に行くことを強制したから』


親心、まったく届かず……。


ちなみに、カウンセリングは親子3人(父・母・本人)で受けていた。
自分たちも、息子をどう扱っていいのかを医者の力を借りて学んでいたのだ。


弁護側の主張だけを聞けば、カウンセリングを受けたく無くて、ただ脅しのつもでナイフを振り回し、揉み合ってウッカリ父親を刺したくらいにしか聞こえない。

だが実際は、折り畳みナイフ6.8cmで最初に脇腹を刺す。
この時に力まかせに刺したのだろう、刺したと同時に肋骨まで折れている。
続いて、おへその下腹部。
そして心臓に近い左胸、計三ヶ所の刺し傷。
深い傷は深さ6cmに及ぶ。
父親に全治3週間の重症を負わせたのである。


このことから、検察側は父親の傷から殺意はあったと主張。


そりゃそうだろ。
これの何処に殺意が無いと言い切れるのか。
苦しい言い訳のうえに、精神疾患を盾に使うのだから更に始末に悪い。


弁護人が熱弁をしているの中。
とうの本人は、どこか虚ろで他人事のように集中していない。

が!
ナイフの話になると、生き生きとして目を輝やかせ、話を聞き入るるのである。


確かに、どこか変……。


傍聴席には、暗黙の了解で身内が座る場所がある。
そこに両親と思われる2人が座っていた。
裁かれる息子を凝視できないのか、2人は背中を丸めうつ向いているだけであった。


昼時間になり、いったん休廷中になった。
通路でうろついていると、その両親も居て母親と目が合う。
母親はすぐに下を向き、自分を恥じるように父親の影に隠れてしまった。
その弱々しい姿が、失礼ながら不憫に思ってしまった。


休廷時間が終わり、今度は父親が証言台に立つ。
今まで前科2犯でも更正してくれることを信じていたこと。
働こうとしない息子に、どれも長続きはしなかったが、父親が仕事を見付けては行かせていたこと。
ほぼ毎日、家で暴れる日々にも堪えてきたこと。
自分たちでは解決できず、恥を忍んで、親族、支援団体、精神科に相談したこと。
異常までにナイフに執着し、いつか誰かを傷付けるのでは無いかと日々、頭を抱えていたことが語られた。


親として、思い付く限りの事をしてきたのが伺える。


そして判決……

保護観察付き執行猶予5年、懲役3年

執行猶予なので、この日に自由になる。
家には帰らず、支援団体の所でお世話になる予定だ。
息子が怖くて一緒には住めないのが現状なだろう。
もし、また一緒に暮らしたら、今度こそ命が無いように思える。



昔は精神疾患者は責任能力がなく、何をしても無罪か病院送りの風潮があった。
現在、無罪判決は少ないにしても、執行猶予という形に変え、罪から逃げ仰せることが多くなったことを付け加えておく。

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