見出し画像

「紅の豚」の英語字幕を熟読してみる

以前、映像翻訳者の人のブログに、オリジナル言語と字幕をそのまま書き取っていく「写経」という映像翻訳の練習方法が紹介されてたので、少しだけ真似をして、気になる字幕とか、使えそうな表現だけメモしながら、大好きな「紅の豚」の英語字幕を熟読してみました。

「あら、こんな表現があったのね!」と、「大好きなセリフが…この訳ですか。。私も訳してみます」という2つの動機で選んだフレーズとその訳を紹介します。

とまれー!
Heave to! 

(直訳:船首を風上に向けて止めろ。)
客船に向けて空賊が命令するシーンなので、短くて、意味が詰まってて、素敵な訳だと思いました。

弟子が親方に、戦争と賞金稼ぎの違いを訊ね、親方が格好良く答えます。

戦争で勝てない奴は悪党だ。賞金稼ぎで勝てない奴は能無しだ。
War profiteers are villains. Bounty hunters are just stupid.

(直訳:戦争で荒稼ぎする奴は悪党だ。賞金稼ぎはただのアホだ。)
字数の制限はあるので、気持ちはわかるものの、かなり好きなセリフなので、この英訳は悲しい。。
ということで、訳してみました。
Loser of war is a villain. Loser of bounty hunter is a moron.(1字超過)
(直訳:戦争で負ける奴は悪党。賞金稼ぎで負ける奴は低能だ。)
要素は突っ込んだ。ただ、文法はtheとかaとかが抜けてます。格言っぽいから許されるかしら?誰かチェックして〜という訳です。苦笑

絶不調なポルコの飛行艇に戦いを挑んで、勝利したカーチスが証拠として飛行艇の断片を拾い上げながら言います。

この軽薄な赤、間違いねえ。
That stupid red color...no mistake!

(直訳:この退屈な赤色…間違いねえ)
stupidだけ気になったので、変えてみました。
That shallow red color...no mistake!
(直訳:この浅はかな赤色…間違いねえ)
カーチスは「軽薄」という単語を使うことで、(モテる?)ポルコを馬鹿にして、飛行艇の色を貶しているので、(shallow guyのように)男性を貶す時にも使える、単語にしてみました。

ポルコが言い放った、決め台詞。直後、ジーナに「ばか!」と言われます。

飛ばねえ豚はただの豚だ。
A pig's gotta fly.
(18字)
(直訳:豚は飛ばなければいけない。)
決め台詞は、短い中に、格好いいことを詰め込んでいるから、訳すのが大変なんだな、、と思った訳です。ただこの英訳、「格好いい」と視聴者が思うセリフにはなっていると思うので、役割は果たしていると思いました。映画を見て、同じ感情を抱いて、ストーリーについていけるか、が字幕の肝になる(って教わった)ので。
No-fly, I'm pork.(17字)
(直訳:飛べないなら、俺は豚肉だ。)
18字の中で、"If I don't fly, I'm a mare pig.(31字)"となるような内容を全て詰め込むのは無理なので、「ただの豚」を、「豚肉」にしてみました。修正してみたものの、元の字幕の方が格好いいですね。

【余談です】

PigとSwineの違いをググったら、豚は年齢で呼び名が変わるらしいです。出世魚のブリのようだ!さすが肉食文化の言語。産業が発達していると、概念が細分化して、単語が多くなる。出典はReferenceというウェブサイト。
Swine:全ての年齢の豚
Pig:若いswineのこと(50ポンド〜240ポンド)
Sow:雌のswine
Boar:雄のswine
Hog:大人のswine(240ポンド以上)
ついでに、食肉処理されると呼び名が変わり、
Pork:豚肉
…つまり、中年のおじさんであるポルコは、Swine、Boar、Hogではあっても、Pigではないのですね。(遠い目)

ピッコロ社で美味しそうなスパゲッティを目の前にお祈りがあります。

天に在します我らが神よ、あなたは倒産寸前の我が社にパンと仕事をお与えくださいました。女の手を借りて戦闘艇を作る罪深き私共をお許しください。
Our Lord who art in Heaven...We thank thee for giving our struggling company work and bread. Forgive my sin of using women's hands to build a warplane.

(大体上記と同じなので、直訳を割愛。)
単純に、こういうお祈りって、どういう英語になるんだろう?という興味で選びました。わからなすぎて、修正のしようもないので、他のお祈りのシーンのサンプルも収集しようと思います。

【疑問と感想です】
・LordとHeavenが固有名詞として、大文字で始まるんだな。
・神だと「いる」が「art」になるのか?
・「you」が聖書に書いてある、昔の表現「thee」になってる
・「罪深き私共をお許し」が「Forgive my sin」になってるのは、英語の文章の構造的にわかるけど、これだと、許されるのはおじさんだけになる。。他の女性たちの許しも請わないのかしら?

イタリア空軍が待ち構えていることを教えてくれたフェラーリンが手信号でポルコに言った内容を、フィオにわかるよう、ポルコが通訳します。

あの野郎、フィオを見て「豚に真珠」だと言いやがった。
Seeing you, he's probably thinking "pearls before swine."

(直訳:君を見て、彼はおそらく「豚に真珠」と思っただろう。)
謎の訳でした。私の英語力の足らなさの可能性もあるのですが。。
フェラーリンは「思った」のではなく「(手信号で)言った」んですが。
ということで、微妙に変えました。
Seeing you with me, he said "it's pearls before swine."
(直訳:君が俺といるのを見て、彼は「これは豚に真珠だ」と言った。)

【余談です】
「豚に真珠」は日本(か中国)のことわざだと思っていましたが、新約聖書のマタイ伝にある「聖なる物を犬に與ふな。また眞珠を豚の前に投ぐな。恐らくは足にて踏みつけ、向き反りて汝らを噛みやぶらん。」という文章が語源らしいです。
つまり、英語でも使える!良いことを発見しました♪

ツタヤで借りてきたDVDについていた英語字幕なので、きっと、アメリカとかで販売されているDVDや劇場版では別の訳がついているんだろうな、と思います。今度は、海外版を買って、比べてみようかと!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?