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北薩リハフォーラム2023を開催しました

11月25日(土)に薩摩川内市国際交流センターにて北薩リハフォーラム2023を開催しました。今回は「栄養と口腔ケアから始めるリハビリテーション」というテーマで2名の講師をお招きし287名の方にご来場いただきました。

「北薩リハフォーラムとは?」については、後半にお話するとして、今回のレポートを経営企画室の杉元さんが書いてくれましたので、まずはそちらからお送りします。


講演1「リハビリの為には食べなきゃ損損」

講師:川内市医師会立市民病院 栄養管理部 課長 肱岡 澄先生

「食べ物は原点」

初めに、肱岡先生はこのテーマをリハフォーラムで取り上げる上で「食べ物は原点」、どう食べさせるかが目的とお話されました。

1.肱岡先生の病院でのあるある話

肱岡先生の働く病院で見られる、「ご飯を食べない人」又は「ご飯を食べ過ぎる人」のあるあるをご自身の体験談を交えて話してくださいました。中でも印象に残ったのは、歳を取ったから少ない食事量で良いという患者さんのお話。実際には、食事量は足りておらず、「肉・魚・卵・豆」の不足により、栄養が足りず、リハビリの為の体力が付かないそうです。その他にも偏った食事や間食により、病気や低栄養を招くことも多く見受けられるとのことでした。

2.リハビリにはなぜ栄養が必要なの?

「栄養ケア無くしてリハ無し」 
これはリハビリテーション栄養という概念における合言葉とのこと。リハビリテーションと栄養の関係性が深く見られる、回復期リハビリテーション病棟では、患者さんによっては、365日リハビリを行います。回復期リハビリテーション病棟で見られる状況として、普段家にいるより運動量や頭を使う場面が多くなり、消費エネルギー量が増える人が殆どだそうです。消費エネルギー量が増えることで、必要な栄養量が増える。ここに食事(栄養)とリハビリの深い関係が見られます。そのことを実験的に裏付ける研究についても、肱岡先生が関わっていらっしゃるとのことでした。研究の中では栄養障害が重度である程、自宅復帰率が低くなることが結論付けられ、ADL(Activity of Daily Living)の向上や在宅復帰の為には、栄養状態の評価の必要性が考察されていました。

3.ご飯(米)は食べない方がいいの?

栄養素を考える上で必ず出てくるこの疑問。テレビや雑誌などでは、度々炭水化物は体に良くないと紹介されています。実際のところ、アメリカの研究では、低炭水化物摂取の人の方が寿命が短いというデータがあるようです。例えば、短期的に行うダイエット等は、炭水化物を減らすことで体重が落ちるなどの効果が見られるそう。しかし長期的に見ると、男女の違いはあれど、健康状態の悪化等を招くことに繋がりかねない、死亡リスクを高める行為の一つとしても考えられているそうです。

リハビリの効果を上げる為には、食べるか食べないかでなく、何をどう食べていくのか、ということを念頭に肱岡先生はお話されました。「食べ物は原点」という言葉通り、リハビリをより効果的なものにするには、栄養管理が第一にあることが分かりました。

講演2「食べられる口づくりの実践〜口腔ケア・口腔リハビリ〜」

講師:村田歯科医院 院長 黒岩 恭子先生

「黒岩メソッド」

これは黒岩先生の考案された、ただ口腔内の状態を綺麗にするだけではなく、口腔機能を引き出し、またそれを行う為の技術スキルの向上により、日常生活の質の向上に繋げるといったものです。黒岩先生はこれを基に今回の講演テーマについて語られました。

1.筋肉の働き

姿勢調整や口腔内のマッサージによって舌や口唇にアプローチし、口腔内あるいは全身の筋肉の動きが機能を引き出す為の重要な役割を果たしていることを第一にお話されました。姿勢調整に関しては、食事の時だけでなく、寝る時の姿勢等、私生活の如何なる時も、正しい嚥下等に繋がる役割を果たしている事実が分かりました。

2.口腔ケアの重要性

講演の後半では実際の口腔内の写真や動画付きで語られた口腔ケア。口腔ケアには、唾液分泌による、口腔内の健康に留まらず、味覚向上・より質の高い栄養摂取に繋げる役割等が存在するそうです。また口腔ケアには、様々な物品、それぞれの使い分けが存在し、それを適切に使っていくことが重要であると分かりました。例えば、咬反射のある人には、誤嚥の可能性を考え、毛の長い物は使用しないことや、開口範囲が狭い人にはブラシ部分が小さい物を使う等、その使い方1つ1つを知ることも重要です。

講義の後半では、動画を中心として実践的に口腔ケア、姿勢調整について学ぶことができました。自分が口腔ケアをする上では見えない部分や知ることのできなかった知識を、口腔内の写真と照らし合わせながら見ることができるのは、非常に貴重な機会でした。口腔リハビリはとても奥深く、技術と知識を必要とするが、それを身につけることで、日常には欠かせない「飲食」を守ることができ、日常生活の質の向上に繋がるというまさに“黒岩メソッド”の目的について理解することができました。


今回、おかげさまで大盛況で幕を閉じた「北薩リハフォーラム」ですが、ここからは北薩リハフォーラムの目的と歴史について説明していきたいと思います。

現在、北薩リハフォーラムはクオラリハビリテーション病院に加え、薩摩川内市の川内市医師会立市民病院、出水市の出水総合医療センター、阿久根市の出水郡医師会広域医療センターの4病院の共催となっています。

こちらの4病院はいずれも鹿児島県から地域リハビリテーション広域支援センターに指定されています。

地域リハビリテーション広域支援センターとは

地域におけるリハビリテーションの中核となる機関です。県において,おおむね高齢者保健福祉圏域ごとに2ヶ所指定することとしています。

鹿児島県ホームページより引用

とされており、現在鹿児島県では9圏域で16のセンターが指定されています。

鹿児島県ホームページより

地域リハビリテーション広域支援センターの役割として

(1)地域リハビリテーション実施機関への支援
ア 地域住民の相談への対応に係る支援
イ 福祉用具,住宅改修等の相談への対応に係る支援
地域の方からの相談や,病院・介護施設等からの相談を受けて適切な支援を行います。

(2)地域におけるリハビリテーション実施機関等の従事者に対する援助・研修
ア 地域におけるリハビリテーション実施機関の従事者に対する実地の技術支援
イ リハビリテーション従事者に対する研修会
地域のリハビリテーション関係の病院や介護施設,市町村などのリハビリテーション関係従事者に対する援助や研修会の開催のほか,地域住民を対象とした講演会などを実施します。

(3)地域における関係団体、患者の会、家族の会等からなる連絡協議会の設置・運営
地域リハビリテーションに関係する職種の方々で地域リハビリテーションの推進のための検討会を開催します。

鹿児島県ホームページより抜粋

と規定されており、その目的を達成するひとつの手段として北薩リハフォーラムを開催しています(すこやかよろづ塾もそのひとつです)。古い資料を紐解くと、公開型の講演会を開催し始めたのは広域支援センターに指定された2004年ともう20年前のことです。私が入社した2006年度からは川内市医師会立市民病院と2病院での共催になりました。

2008年には川薩圏域(医療・介護領域)合同研修会に名称が代わり、2010年には「川薩リハフォーラム」と現在も使用している「リハフォーラム」という名称になりました。

2008年度開催分チラシ
2010年度開催分チラシ。初めて「リハフォーラム」という名称に。

2011年度からは新たに広域支援センターに指定された出水総合医療センター広報ポスターも主催に加わりました。この年から広報ポスターも作成し始めたので、ここからはポスターと大会テーマで振り返っていきます。

2011年度 シームレスケア(継続的支援)の実現に向けて

2012年度 チームで支えるリハビリテーション

2013年度は県リハビリテーション施設協議会のイベント協力で実施せず。

2014年度 住み慣れた地域で安心して暮らすために

2015年度 在宅医療推進元年

2016年度 地域包括ケアを支えるリハビリテーション

2017年度 ロコモ予防講演会

2017年度は鹿児島県が北薩地区でロコモティブシンドロームの研修会を開催するということで、そちらの運営協力をする形で実施しました。

2018年度 地域で育むこどもの未来

2019年度 脳卒中再考

2020~2022年度の3年間は新型コロナ感染症拡大防止のため開催を自粛しておりました。こうやって並べてみるとなかなかその時どきのトピックに沿って、幅広いテーマで開催してきたなと思います。お気づきの方もいらっしゃるかもしれませんが、2012年度から2019年度のポスターはさつま町在住のイラストレーター竹添星児さんに制作していただいたものです。ちなみに冒頭の今年度のポスターはこちらのnoteでもアート周りを担当している矢野さんの作品です。

来年以降も開催してまいりますので聞いてみたい講演テーマなどありましたら是非ぜひお寄せください。

ご来場いただきました皆様、神村学園専修学校の皆様、ご協賛いただきました株式会社クリニコ様、共催の3病院の皆様、本当にありがとうございました。

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