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マーケティングの顧客心理操作について。

Voicy「コテツのブランディングと商売の話」コラム
読めばブランディングができて商売が上手くなる

このコラムは、コテツがVoicyのブランディングと商売の話で語った内容を文章化し加筆したものです。
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Voicyもお聴きください。

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Voicy No.0034  2021年9月9日収録
マーケティングの顧客心理操作について。

セールスでクロージングするテクニック

俺は今、ブランドプロデューサーとしてブランディングの相談に乗ったり、ブランドづくりをお手伝いしたり、プロデューサーをしたりしています。

ブランドに関して意図的に取り組んだのは11~12年で、自分の経営にもすごく理解が深まりました。その前に会社の経営を23~24年やっているので、コテツの経営とビジネスに関する取り組みの変化をお話ししないと、なぜ今日これをお話ししたいと思っているか伝わらないので振り返ります。

もともとサラリーマンの時代にセールスパーソンをやっていました。最初は目の前にあるものを口八丁手八丁で売り込むことが、商売の売上を上げるためには必要だと思っていたんです。

ひよこは、卵から出て初めて見たものをお母さんと思います。おもちゃのワンちゃんを見て、それが電動でワンワン動いたら、ピヨピヨと卵から出たひよこは、電動のワンちゃんのおもちゃをお母さんと認識します。

それと同じようにコテツ青年はピュアだったので、入った会社で先輩や上司から「セールスさえできれば商売・ビジネスは絶対うまくいくから」みたいなことで「はい!」なんて言って気合を入れました。「セールスというのはトークだから、自信満々にしゃべって最後クロージングまでうまくまとめる」と聞いて、よっしゃ!みたいな感じ。セールスは体育会系の会社です。

商品があったらメリットをいっぱい積み上げていって、イエス・イエス話法とか、イエス・バットとか、ない需要も、トークとかテクニックで契約に至らせるのを高い技術というか、すごいセールスパーソンのやることと思い込んでいた時期があって、最初はセールスをやりました。ものを売ること、ビジネスに関する自分の最初の価値観はそこです。

そのあと会社の経営を始めたら、自分のセールス能力だけ高くても全然会社の規模が大きくなっていきません。なぜだろうと思ったらマーケティングだと。マーケティングというのは広いからいろんな側面があるんですが、そのとき自分が活用したマーケティングはダイレクト・リスポンス・マーケティング(DRM)です。見込み顧客の方々に一歩前に出ていただいて、セールスの前段階まで行動していただくという領域のマーケティングです。DRMが日本で出たてだったのです。

そこで見込み顧客の顧客心理に合わせたマーケティングの展開をすることで、人の行動を促せる。今日の表題でもある顧客心理の操作みたいなものがマーケティングのポイントでした。当時のコテツ青年は、「マーケティングというのはお客さまに行動してもらうためで、顧客の心理はこうやってコントロールするんだ」と思っていました。

これが結構日本の中小企業とか、大企業でもDRMをやっていた会社のターニングポイントになったと思った出来事がありました。1999年に神田昌典さんが、アメリカのDRMを日本語に書き直して、『あなたの会社が90日で儲かる!』という本を出したことです。

そこからDRMばやりになりました。ちょうどITバブルの入り口にも差しかかっていたので、ファクスDMで顧客心理を煽るという部分と、ネットの広告(LP)で長いページにして、お客さまに広告をかけてページを見てもらって、そこでDRMから即クロージングの流れになるのが、めちゃくちゃはやったのです。

これを聞いている方には結構若い方もいらっしゃるでしょう。1998年あたりだとビジネスどころか子どもです、という方もいると思いますが、俺はそのとき会社の経営が始まっていたわけです。本当にはやりましたが、恐らく神田昌典さんの意図は別なところにあったのでしょう。本を読んだ方々は俺も含めて、売らなければいけないなら煽ればいいんだと捉えた人が、数多くいたわけです。

そこにはパソナの法則がありました。つまり「危機を煽りなさい。あなたはこのままじゃダメです」と自分の商品を買わせるために問題点を提示して危機を煽ります。「このままだと、こんなことになります」と言って、救世主的にメシア的に、売りたい商品を展開として登場させる。「これであなたの未来は変わる」みたいにスケール感は大きくなっています。それを自分の商品に落とし込んだマーケティング策は、ひな形も出たし、すごく熱心な経営者ほど、そういうものをうまく取り入れたと思います。

住宅とか健康、食品関連、習い事とかは、そういう展開をやりました。その名残が今も残っているんだよ。ただ時代が変わっているので全然マッチしなくなった。それがマッチしているか、今の時代に反応してもらえるかどうかを抜きにして、俺はその渦中にいたわけです。

渦中といっても、世の中で一般の方が盛り上がったほどのムーブメントはないけれど、DRMが1999年あたりから2003~2004年ぐらいまで中小企業とか勉強会がめちゃくちゃ多かったから、取り入れたところが多かったんです。それがネット販売の礎というか、ひな形になったので、それをいまだにやっているところが結構あったりするわけです。

誤解のないようにお伝えしたいのは、もちろん俺は経営者だし、会社を立ち上げて26~28歳の最初の3年は本当に苦しくて、キャッシングしまくって、いけないところからもお金を借りたりして乗り切った。だから、売らなきゃいけないときにセールステクニックでクロージングをかけるのも、DRMで見込み顧客の心理をうまく購入に向かわせることも、全否定はしません。それでも、やり過ぎは絶対によくないと思っています。


煽り広告の限界

話が変わってしまうようで、最後に1つにまとまってくるので聞いてもらいたい。自分はもちろん暇つぶしでYouTubeも見るし、クライアントのYouTube戦略もあるので、自分が関係している方とか企業のを見ます。

恋愛心理のYouTubeが結構あります。

見ていると、エビデンスで「人の気持ちはこうなる」「何とかをすると何とか物質が出て、こうだ」「相手があなたに依存して離れられなくなるにはこうで、何とかの昔の調査ではこうで、何とかの論文がある」みたいな。みんな、あれが好きなんだよね。

エンターテインメントの娯楽コンテンツとしては、わかります。それに関して何かを言いたいわけではなくて、ビジネスに関して話をしたいので、その一要素として聞いてもらいたい。

恋愛心理で恋愛をしたいとなって、自分に近づいてくる人が、どっちだったら本気になるかです。エビデンスとか顧客心理コントロールのテクニックがあるので、「僕はあなたの気持ちは全部わかります」とアプローチしてくるAさんと、「私はあなたの気持ちが全然わかっていないので、あなたの気持ちをしっかり理解したい」という姿勢で来るBさんという2人がいます。その他のスペックとセンスが大体同じなら、どっちと恋愛しますか。

1つ戻るけれども、俺はビジネスで経営が成り立たないとか、借金を背負うとか、会社がつぶれるという怖さは、自分は大きな失敗も経験しているのでめちゃくちゃわかります。とは言っても、今の一部のネットマーケティングにおける顧客心理操作的な部分は、やりすぎでしょう。

これは正義感で言っている側面もあるし、自分がブランドを考えたときに、ブランドから一番遠いやり方なんだよね。「こんなふうにちゃちゃっとやれば見込み客はこう動くから、こんな感じでやれば最後は買うから」だと、自分がファンだったら、そう考えている会社やブランド本体とは、付き合っていけないでしょう?

ブランドが本当に何もかも超越して素晴らしいとは思っていません。けれども、長く続いているブランドは安易に煽らないんです。

例えば、とらやとかVUITTONとかスターバックスとか無印良品が、顧客を煽りますか。シーズナルなものを出して、そのときしか変えないという戦略は採るけれど、煽りの度合いというか、ビジネス企画として、生産量が終わったら「これは売りません」とか、売り切ったら終わりとか、だからこの機会に買わなければいけない。それはビジネステクニックとしてはわかる。

けれども、「これを買わないと悪くなって、これさえ買えば良くなる」みたいな煽りをやって、本当に長きにわたって続いているブランドはあるのかと思う。でも、マーケティングには悪魔のささやきがあって。

じゃあ、コテツは何に関して言っているのか。

自分は、ある特定の企業のことを言いたいのではありません。けれども、ニュースアプリとかネットのコンテンツを見ていると、最近鼻から皮脂が出てくる写真とか、シミは家庭で使っている何とかで消えるとかあるでしょう。特にコンプレックス商材です。ダイエットとか頭の毛が薄くなるとか、シミがとか、肌がとか、わきがとか、そういうコンプレックス商材の領域で、いやいや、それは完全に(煽りでしょう)。

でも、煽ったら買う人がいることはいるという、この事実。

情報を正しく判断できない消費者が悪いのか、冷静に考えて、ほとんどあり得ない煽り方をする。鼻から皮脂が、じょうろから水が出るみたいに飛び出している写真がありますが、あんなことは人体で起こらないからね。

自分もブランディングで関わっていたら、もちろんマーケティング戦略にも関わっていくし、マーケティングの領域は広いから、ああいう煽り広告のことをマーケティングと思っている人もいれば、ちゃんとユーザーの使い勝手を挙げていくとか、プロダクトを磨いていくとか、ユーザーメリットを考えてマーケティングをやっている人たちもいっぱいいる。けれども、どうしても広告は目に付くから、あれでビジネスが続いていくことがあるのと。

煽りはブランドから最も遠いやり方です。

どんなに煽っても、煽りマーケティング、煽り広告というのは反応が下がっていくんです。俺はYouTubeプレミアムにしているから広告は流れなくなっているんだけど、TwitterからYouTubeを見ると、プレミアムに連結されないみたいで広告が流れます。YouTubeの広告も、ひどいものがあるんです。漫画やアニメみたいにしたコンプレックス商材的なものが。

そのまま伝えれば伝わるのに、なぜああいうあり得ない現象で煽るのか。

企業は悪魔のささやきだから、そうやれば間違いなく売れるんだけど、煽り型の広告は出したときが反応のピーク。そのあとどんどん下がっていくのです。また別の煽り広告を出さなければいけない。どうなんですかと思う。

ブランディングはorじゃなくてandです。広告を出して一時的に反応を挙げながら、お客さまが動いてくれそうなことを工夫して、早めにマーケティングで行動していただくなりセールスで購入してもらっている間に、ブランディングで自分たちの在り方とかスタンスとか哲学を伝えていって、本当のファンをつくっていく。

だから短中期におけるセールスマーケティング戦略と、中長期に対してのブランディング戦略を並行してやっていくことです。マーケティングの効果は下がっていくけれども、ブランディングはファンが積み上がってくるので、ビジネスの安定度が上がるというのが基本的なブランディング・マーケティング戦略のやり方です。

これをきちっと理解していないところが、煽り広告をやれば数字が上がるから、単純に数字を挙げるためだけに煽り広告を結構提案しているのでしょう。企業もやりたくなるんでしょう。ただ、そうなったら、もうブランドにはなれないと覚悟してやったほうがいい。

自分は今いろんな方を通してのご紹介しか新規のご相談を受けていません。ご紹介いただいて、自分がやれる時間の余力があればお会いしますが、煽り広告をずっとやっているところとお話ししても、非常にうーんという考えになっちゃうんだよな。

ブランドづくりと恋愛は似ています。

人間関係とブランド・ブランディングは、ほぼ同じ。

周りの人に自分を好きになってもらうとか評価してもらおうと思ったら、煽るとか、自分のショックな出来事とかすごい出来事を強調して言うのも、もちろんいい。あとは心理テクニックで、相手の気持ちを操作できると思うのもいい。でも、つまるところ、本当に魅力的な人になるため真剣にやること以外、方法はないのではないかということです。

以上、久々野智小哲津でした。

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