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狂気せしめる風景

狂気せしめる風景

 色相はばらばら、いずれも魅力のない無難そうな色の石くれが、おびただしい数、似たり寄ったりのくせに不調和にただひしめきあって広がるなか、不規則な間を置いて林立する憂鬱な色の縦長の結晶の群れ。
 ただ、そればっかりだ。
 今や取り立てて高さを誇ることもできなくなった赤と白の塔が建ったころ、手前の水場は、水ぎわの砂地を歩くことができた。すぐ近くに黒塗りの貨物船が停泊しているのが見られ、桟橋もあって、外

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街にいた最中

街にいた最中

 自衛隊というのは、最初は警察予備隊と称し、それが保安隊に改称し、さらに変わって自衛隊となったのだが、まだ保安隊と言っていたころのこと。

 ぼくの親父は大学の教師だったから、教え子や同僚が遊びに来ることがちょくちょくあったが、ある日、保安隊に就職した教え子のひとが訪ねてきた。

 土産に最中を持ってきたのを、親父が応対している部屋から少し離れた台所におふくろは持ってきた。

 ぼくは保安隊のくす

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黒猫

黒猫

 女はS県のある街のマンションに暮らしていた。勤め先の自動車メーカーのオフィスに近いから住むことにしたその町で、会社の帰りに、よく、そこらあたりにいる猫たちを見かけたなかに、大きな黒い牡がいた。

 黒猫はその界隈のボス格のようで、ほかの猫たちに一目置かれている様子だった。よく喧嘩もするらしく、いつも体のあちこちに傷があった。
 ペットフードなどをやっていたので、多少なついてきたようだった。黒猫と

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ある空間

 その女性と彼は、それまで知り合いだったのではない。

 美しい人だったかどうか。もちろん醜い人ではなかった。いっしょにいて楽な落ち着いた気持でいられる人で、その人の顔を見、着ている服や体を見ているのは、いいことだった。腰や臀部や胸、肩や首筋、脚や足首などを見ていたのだが、それはその人の形をしていて、彼はそれが好きになった。

 夫がいることがわかっていた。どこかよそで仕事をしているのだった。昼間

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