見出し画像

「仕事の基準 × 心理的安全性」を、自ら高めるための方法

はじめに

最近、会社の中でこの記事の内容が話題にあがるシーンがあった。「こういうポイント、結構大事だよね」みたいな文脈で。

かいつまんで話すと、次のような内容が書かれてある。(要約というよりは、ここで紹介したい文脈に寄せてピックアップしている)

・「心理的安全性が高い組織」=「ヌルい職場」と思われがちだが、必ずしもそういうわけではない。
・同じ「心理的安全性が高い」職場でも、「仕事の基準が低い」職場は確かにヌルいかもしれないが、「仕事の基準も高い」職場は、お互いに高め合うことの出来るめちゃくちゃ素敵な環境である。

これは個人的な見解だが、一般的に「仕事の基準」と「心理的安全性」はトレードオフの関係で、どちらが低いか、両方そこそこくらいの会社が多い。つまりマトリックスにすると反比例の曲線になり、大抵の組織が以下の図でいうと「A・B・C」のいずれかに分布するようなイメージだ。

仕事の基準×心理的安全性

これに対して、「D」は非常に稀で、しかしどの組織もここを目指すべきである。冒頭の記事の中ではさらに、この「仕事の基準 × 心理的安全性」の両方が高い状態のチームにたどり着くための方法についても触れられている。


「リーダーがすべきこと」と「個人がやれること」

冒頭の記事は、「最強のチーム作り」をテーマにした講演で発表されたスライドをもとに構成されている。それ故に、書かれてあるトピックはいずれも、「リーダーがチームのためにやるべきこと」という内容だ。

これを実践できるチームは強い。しかし一方で、全てのリーダーがこれを思考・実践できるわけではないし、それ以外のメンバー個人が、指をくわえて待っているわけにもいかない。だからこそ、「リーダーがすべきこと」と同時に、「個人がやれること」を考えていく必要があると私は考えている。

本来、「仕事の基準」も「心理的安全性」も、職場やチームから与えらたり、勝手に自己生成したりするものではない。結局は、リーダーもメンバーも、一人ひとりがこの両方が高いことの価値を本気で信じ、自ら基準や安全性を高める努力をしていく他ないのだ。

少し遠回りにはなるが、私がAmazonで働いていた頃のエピソードを交えながら、「仕事の基準 × 心理的安全性」を、自ら高めるための方法について考えてみたい。


Amazon時代の苦悩と学び

私の前職Amazonは、特に新参者にとっては、「仕事の基準がめちゃくちゃ高く、心理的安全性が極端に低い」と感じられる職場だ。もちろんチームによって多少のばらつきはあって、私が所属していた組織は比較的、心理的安全性も高いチームであったと思う。だが、全体感としては上記のとおりで、いかにも外資系らしいと言えば、らしい。

冒頭で紹介した記事には、「心理的安全性の因子」として以下の4つが紹介されていたが、Amazonにはほぼ皆無だ。特に転職したてのNew Memberに対しては。

1.助け合い 「困ったときはお互い様」
2.話しやすさ 「何を言っても許される」
3.受け入れ 「とりあえずやってみよう」
4.新奇歓迎 「異能どんと来い」

これがどんな風に皆無かというと、以下のようなイメージ。

✖「困ったときはお互い様」 ⇒ 「困ったときは自分で考えろ or Wikiを見ろ。俺は忙しい。」
✖「何を言っても許される」 ⇒ 「何かを言うと詰められる。理由は?数字は?揃えてから持ってきて?」
✖「とりあえずやってみよう」 ⇒ 「とりあえずもっと考えよう。検討が甘い。やり直し。理由は?数字は?揃えてから持ってきて?」
✖「異能どんと来い」⇒ 「異能とかどうでもいいから、この行動規範に則しなさい。」

そんなこんなで、だいたい転職組の多くは、最初の数ヶ月で疲弊し、自己肯定感を失い、段々と会社へ行きたくなくなる。私も例に漏れず、半年くらいまでは「正直しんどい」と思いながらの毎日だった。

とはいえ、これはあくまで新参者にとっての話で、上記のポイントさえクリアできれば、つまり、ある程度業務にも慣れ、根拠を数字で語れるようになり、一定の実績を出せば、次第に周りも認めてくれるようになり、それでやっとこさ心理的安全性が生まれ始める。(誤解のないように強調しておくと、入社間もない時期の圧力に耐え抜いた社員とっては、Amazonは正に「高い仕事の基準 × 高い心理的安全性」が実現された楽園のような環境だ)

そうして視界が開けてようやく気付いたのは、実は同僚やマネージャーたちも、日々相当なプレッシャーの中で戦っており、余裕がなくて殺伐としているだけで、わざと蹴落とそうとか冷たくしようと考えているわけではないということ。

仕事が優秀だからといって、リーダーやチームが心理的安全性に対してものすごくケアしてくれるかというと、そういうわけでもない。そしてその逆も然り。だからこそ、「仕事の基準」と「心理的安全性」の両方を、セルフマネジメントすることが、かなり大事になってくる。これは何もAmazonや外資系に限った話ではない。


「仕事の基準」を自ら高めるための方法

これはもう、Amazonから嫌というほど鍛えられた。その経験をもとに言うと、何か大きなことを構想するというよりも、次のようなことを実直に積み重ねていくことが大事。

・常に好奇心と向上心を持ち、学び続ける
・その学びを活かし、目の前の仕事をなるべく高い水準でこなす
・次に同じような仕事をするときは、前よりももっと高い水準でできるようにする
・そうすることで、期待に応え続け、周囲の信頼を得る
・信頼を築けた仲間には、同じように高い水準を主張し、(批判ではなく)批評しあうことを厭わない

ポイントは、単発ではなくサイクルになっていて、上から下に積みあがっていくこと。学び続けない者に、高い水準をキープできるわけがないし、高いアウトプットを出さない者に、信頼はついてこない。

逆に言うと、このサイクルに従えば、自らの仕事の基準は、永久に上がり続ける。なぜなら、学び続けること、常に前の水準を上回り続けること、評価され、自他ともに厳しくなることで、仕事に対する妥協点は上がり続けるからだ。前項でも少し触れた「Amazonにおける行動規範」の中でも、上記の要素が多分に含まれていて、それが価値発揮や仕事の水準を高めることの礎となっている。

「仕事の基準」はこのように、会社やチームから与えらえなくとも、自分の意志やフレームワークによって自ら高めることが可能だし、自分自身のためにもチームのためにも、そうすべきだと強く思う。


「心理的安全性」を自ら高めるための方法

「心理的安全性」は、「仕事の基準」よりも、他人やチームによって与えられるものという先入観が強い。多分それは間違った認識ではないのだろうけど、これは結構危険なバイアスな気がしている。

なぜなら、人は自分でコントロールできないものだと思い込むと、能動的にそれを何とかしようという発想が絶たれ、思考停止してしまうからだ。それでハッピーであればいいのだが、心理的安全性の低さは、仕事のクオリティにも直結するし、何より精神衛生上たいへんよくない。

それを防ぐためにも、事前にそのバイアスを極力なくしておくことが大事だし、特に転職などで新しい組織に参加するときは、なるべく自分で高い心理的安全性を確保できるように、コントロールする術を知っておいた方がいい気がする。

この点についてはもっといいまとめがありそうだけど、自分なりに書くなら以下のような感じだろうか。

・仕事で関わりそうな5~10人くらい早めに1on1を申し込んでおく
・とりあえず何らかのコミュニティ(部活、同期会など)に入る
・やりたい仕事(≒チャレンジングな仕事)よりも、やれる仕事(≒得意ですぐに成果を出しやすい仕事)を優先する
・雑談と相談を徹底する
・他人のことを知ったり、自分のことを知ってもらう機会を逃さず、なるべく多くインプット・アウトプットする

大前提として心理的安全性は、会社やチームの風土に大きく依存する。しかし、同じ会社・同じチームにおいても、自分の振る舞い次第でその後の心理的安全性に変化がないわけではまったくない(寧ろ影響は大きい)ので、自分からすすんでやれることがあれば積極的に実践したい。


・・・

さいごに

余談だが、冒頭で使った以下の図は、濱口秀司さんの「Bias Curve」を参考にした(こちらの記事にある2つ目の図を参照)。彼の言葉を借りれば、「仕事の基準」と「心理的安全性」の両方が高い組織は、既存のトレードオフを破壊する非常に"イノベーティブ"なチームということになる。

仕事の基準×心理的安全性

仕事の中身が変わっても、「仕事の基準」と「心理的安全性」をどう上げるかという命題は、自分自身にとっても組織にとっても変わらない、普遍的なテーマだと思う。そしてこれだけ職場環境に関する情報がオープンになった現代では、「D」のような組織づくりがますます重要な時代になってきそうだ。

この記事が気に入ったら、サポートをしてみませんか?
気軽にクリエイターの支援と、記事のオススメができます!
note.user.nickname || note.user.urlname

よいサービスを設計するためのヒントについて書いています。

スキありがとうございます!
6
株式会社ツクルバで、不動産サービス「cowcamo (カウカモ) https://cowcamo.jp」のプロダクトマネージャーとして勤務。 前職は Amazon Japan にて、データ分析 / マーケティング / 新規サービスの立ち上げなどを担当していました。