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“Pitaya”はなぜ“ドラゴンフルーツ”と呼ばれるようになったのか?(#48)

フリーダ・カーロ『Pitahayas』から抱いたある疑問

前回#47の記事でフリーダ・カーロが描いた静物画について触れました。
そのひとつが作品名『Pitahayas』です。

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“Pitahayas” by Frida Kahlo

“Pitahayas”はスペイン語で、英語の“Pitaya”の複数形に当たります。
このフルーツは日本でも沖縄や奄美大島などで栽培されていますが、流通する多くは輸入品です。
この絵を最初にみて、題名が“Dragon Fruit”ではないことが気になりました。
なぜなら、日本での一般的な名称は「ドラゴンフルーツ」だからです。
日本語では外来語をカタカナで表記した方が早い(Pitayaなら「ピタヤ」)にもかかわらず、このフルーツに至っては「ドラゴンフルーツ」という名称が一般化しています。

なぜでしょうか?

よくよく考えてみたら不思議ですね。

ドラゴンフルーツとは

その理由を紐解く鍵はドラゴンフルーツという存在そのものです。
ドラゴンフルーツ(またはPitaya)とはサボテン科ヒモセレウス属のサンカクサボテン等の果実を指します。

わかりやすく言えば「サボテンの実」です。

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写真引用:https://globalrustrade.com/products/dragon-fruit-or-pitaya/

前回#47記事でも少し触れましたが、原産地はメキシコ及び中南米の熱帯雨林になります。
現在では品種改良が進み、実は果皮が黄色かったり、橙色など様々です。
また果肉についても白や赤、桃色と多岐に亘っています。

本題に戻りますが、なぜ「ドラゴンフルーツ」となったかです。
理由はピタヤの中国語訳にあります。
ピタヤは中国語で果(火龍果)[huolongguo]とされました。
ドラゴンフルーツとはこの「火龙果」の英訳なのです。

しかし、ここでも奇妙なことに出遭います。
元々横文字のPitayaが漢字化したものを輸入し、それを再度英語化し、カタカナ化するという手続きは随分煩雑だとは思いませんか?

その理由はこの果物が初めて日本へ着した時期を理解したら腑に落ちました。
ドラゴンフルーツが日本に初めて届けられたのは18世紀です。
またそれはベトナム産ではないかと言われております(大航海時代にヨーロッパへ持ち帰った後、東南アジアで広まりました)。

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18世紀といえば、日本は江戸時代です。
なぜベトナム産の果物が中国語表記で伝来したのか、それは江戸幕府の「鎖国」政策に関係します。
鎖国政策の中、貿易が許可されていた国、それがオランダと中国の二カ国でした。
それゆえ、中国経由で輸入されたこともあり、果=ドラゴンフルーツとなったのです。

尚、中国で「火龙果」となったのはその見た目が龍の鱗のようでもあり、赤かった(火龙のようだったから)という理由からでした。
中国での龍は縁起のいい生き物であり、権力などを示す象徴的な存在でもあります。
実際、この「火龙果」は栄養価も豊富なため、これを食べたら長寿を全うできるといわれており、龍同様、非常に縁起がいい果物のひとつです。
それゆえ「吉祥果」として扱われています。

ではなぜ火龙果をそのまま音読みしなかったのか、敢えてそんな穿った見方をしてみましたが、「ひりゅうか」や「りゅうか」、あるいは「フォロンゴ(フォロングオ)」ではどことなく響きが悪く、時間と共にカタカナへ変わっていったのではないか、そのように推測しています。

ドラゴンフルーツは“Honolulu Queen”でもある

種子植物において種子が出来る前に必要なのはなんでしょうか。
それは受粉であり、花弁であります。
つまり”ドラゴンフルーツ”という実になる前、このサボテンは花を咲かせるのです。
この花弁は日中の強い日差しを浴びるとすぐ萎れてしまいます。
そのため受粉するのは夜、つまり夜、花が咲くのです。

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夜、蛾や蝙蝠によって花粉が運ばれてきます。
ここからこのサボテンの花を“Queen of the Night”あるいは“Moonflower”と呼んだりもします。
そしてそんな夜の花が紡いだ実はQueenであり続け、“Honolulu Queen”であったり“Strawberry Peer(甘美な貴族[※意訳])”であったりするのです。

ある植物を一方ではエキゾチックな「女王」に見立て、また一方では雄々しい「龍」に見立てるという、その名称から地域に根付く世界観を垣間見えたのは大変興味深い点です。
また、日本でも漫然と「ドラゴンフルーツ」になったというのではなく、背景が見えたことは本記事で内容を整理した中で発見できたことでした。

ちなみにドラゴンフルーツはキュウイに似た食感で、冷凍庫に入れておくとシャーベット状になります。
その食感は中々美味で、誰からも好まれる(好き嫌いが分かれない)のではないかと思う次第です。

もしご興味持たれましたら、一度御賞味頂きたいですね。

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