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短編小説 / 汚泥

腹が脹れ、之以上飲み込めないと訴える、酒に酔ったかの様な酩酊感は始終続いて居る。
おのれの臓腑の中全てに彼奴の言葉が詰まって居る様な、気分は絶えず昂って居て、良い意味での気持ちの悪さ。
喉が抉れるぐらいに甘い甘い蜜を、本来なら薄めてやっと口にする筈の物を、原液その儘流し込まれた。分かるだろうか、此感覚が。否、きっと分からんだろうな、同じ状況下にならぬ限りは。

吐き出したいのに、余りにも美味なそれを吐き出すには惜しいと脳味噌が訴え、身体が拒否をする。そしてそれが嫌ではない、嫌では無いのだよ。
だから恐ろしい、如何して嫌では無いのかがひどく分かってしまう。

何度も何度も何度も咀嚼し、唾液と混ぜ込み嚥下したとしても一向に味の無くならない''ソレ''を、私が飲み下すのに一体如何れ程の時間が必要なのか。腹の底に溜まっていく甘ったるいどろりとした液体を、消化しきれるのはいつなのか、分かりはしないが。未だ足りぬ、と飽きることもない此欲は次を求めてしまう。

もっともっと、と畝り渦巻いて言葉を待ち望む。ああ、きっと之は如何しようもないのだな、と実感する。

───────如何し様も無いのならば、舌を曝け涎を垂らし哀れに餌を待つ犬のように愚鈍に言葉を待って居ようか。与えられた言葉を堪能し、相応の物を返せれば良い。そうしたら、また次が来る。


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