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読書録

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柳流水の読書録です。
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2021年7月の記事一覧

【読書録】ロベール・パンジェ『パッサカリア』の詳しい感想

 前に、『パッサカリア』を読み終えたと書いたけれども、本当に、ただ読み終えたとか、どれくらい読んだ、としか書いていなかったので、さすがに中身に少しは触れようかと思う。
 ロベール・パンジェ。フランスの、前衛的作家の一人。活躍していたのは、おそらくひと昔前だ。ロブ=グリエ、サミュエル・ベケットと交流があった、といって伝わるだろうか。まさに同時期に生きていて、彼らの小説を息を吸うように読んで、そしてそ

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【読書録】プルードン『貧困の哲学』3

事実が先なのである。美しく整えるより前に、広く探求しなければならない。
(プルードン『貧困の哲学 上』平凡社ライブラリー)

 ページ数をメモし忘れた。上巻の前半には違いない。
 学問を始める際に、それがどんな形を成しているのか考える、またそれを成形しようとするのではなく、まず事実となることを集めよ、という文脈で語られている。
 これが、小説にも言えることなのではないかと思った。
 小説を書く際に

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【読書録】プルードン『貧困の哲学』2

【読書録】プルードン『貧困の哲学』2

そこで私に言わせてもらえば、普遍的な理性とは、昔のひとびとが神と呼んだものを近代的な用語であらわしたものにすぎない。ことばはあたらしくなった。しかし、それでものごとがわかったのだろうか。
(プルードン『貧困の哲学 上』平凡社ライブラリー、18p.)

「理性=神」とは、よく聞く話ではあるが、改めてグッと来た。フランス革命のときに、神を廃棄し理性を信仰するといって、「理性の祭典」なる祭りをやって色々

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【読書録】プルードン『貧困の哲学』

【読書録】プルードン『貧困の哲学』

 全くの偶然から、この本を手に取った。少し噂は聞いた気がするけれども、どういう哲学者というイメージもなかった。
 著者略歴を見てみる。
 十九世紀を生きた、貧しいが独力で学問し、トルストイに『戦争と平和』を書かせた哲学者。
 なるほど。わかったつもりになる。
 数ページ読み進めてみた。この時期の哲学者に向かって言うのは酷だが、今の所、全くキリスト教的世界に向けてしか喋っていないと感じる。中国に対し

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