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図書館の本の装備

 過去、約20年ほど公立図書館で司書をしていました。noteでは、本や図書館について書かれている方も多く、ちょっと触発されちゃいました。
 そこで、私の経験した図書館のお仕事について、いくつか振り返ってみたいと思います。初回は本の整備についてです。

 本の装備については、否定意見もあります。表紙やカバーの手触りが、全部おんなじになってしまう。そうですね。どんなに紙質にこだわってもビニールでコーティングされた手触りですものね。お気持ちわかります。
 しかし、図書館ではなるべく長い期間、きれいな状態で、汚れてもふき取りやすい方が管理しやすいのです。お家の本を思い返してみてください。汚れたり破れたりするのは、本の紙カバーですよね。そのカバーを本体と一体化することで本の寿命は、格段に伸びます。貸し出しの時の「ピッ。」とするバーコードシールも保護されます。図書館の本をたくさんの方に気持ちよく利用していただくために必要なことなのです。
 手触りまでも愛する方、愛書家の方は、ぜひ本屋さんなどでご自分で購入し、思う存分触りまくってください。

1.本をパラパラとめくっていく

 届いた本の汚れや乱丁などを点検します。パラパラとめくり、中に挟まれているものを抜き取ります。その出版社から出されている本のPRチラシや読者カードや短冊や紙のしおりなど。出版社さん、ごめんなさい。今、考えれば、仕分けして、利用者の方が自由に持ち帰ったりできるようにすればよかったかなと思います。まあ、その時間や手間もかかるのですが。
 次に、本の帯を外します。帯にも重要な情報がありますので、文字の書かれている部分を切り抜き、見返しにノリなどで貼り付けます。主に中側ですが、児童書の場合は、迷路などの絵が描いてあったり、クイズの答えが書いてあったりするので、邪魔にならない、貼れる場所を探します。「〇万部、突破!」などは、ごみ箱行きとなります。
 次に、受付年月日や図書館の名前の入った、丸や楕円や四角などの蔵書印などを決められた場所に押印します。盗難防止の秘密の作業をする図書館もあります。
 そして、どんな装備が適切かを考えます。禁帯出や館内貸出が必要か、どんなブッカー(カバー用フィルム)のかけ方良いのかなど。
 

2.分類をつける

 現在の図書館の分類にならって分類番号を振ります。各図書館によって考え方は違うと思いますが、自分の図書館の利用者が使いやすいのが一番だと思っていました。悩んだときは、横断検索などでよその図書館を参考にしたりもしていました。なぜか、児童書には訳の分からん分類が出版社によってはふられていたこともあります。これ、必要ないです。と、思ってました。

3.ブッカーをかける

 本のサイズに合わせてブッカーをカットします。上下左右、2~3センチ程度大きめにカットするのですが、サイズの大きな絵本などは、それより1~2センチほど大きくカットします。
 絵本や児童書などは、注意が必要です。誤った装備をして、隙間から中を見ようと破られたり引っ張られたりしてしまうことがあるのです。そうですよね、クイズの答えやさし絵がその先まで続いていれば、見たくなりますよね。そんな装備をした人の間違いです。大人向けの一般書でも、本の内容に関した現実や架空の地図、登場人物の紹介が書かれていることもあります。そんな時は情報部分が見えるところまで、あらかじめ紙カバーの部分をカットします。
 紙カバーの折り返しの部分は、紙カバーを細長く3角形にカットします。このひと手間で、ブッカーをうまく巻き込んで、きれいに貼ることができます。
 ブッカーをかけるのには、一般的には定規を使います。本よりちょっと長めの硬いものを使います。ブッカーを適度に引っ張りながら、空気が入らないように貼り付けていきます。この適度が重要。引っ張りすぎると表紙が反り返ってしまうことがあります。強くこすりすぎると、しわが寄ったり空気が入ってぽっこんと出っ張ったりしちゃいます。そんな空気は、カッターや千枚通しで穴をあけて、穴に向かって四方から空気を抜きます。
 定規を使う人が多いこの作業ですが、私はブッカーの裏紙を厚さ2センチ、5センチ角くらいにぎゅうぎゅうにたたんでブッカーでぐるぐる巻きにしたものを作り、版画に使うようなバレンのようにして使っていました。手作りバレンです。他にも、厚手のハンカチで強めになでるようにしている人やブッカーかけ専用定規を決めている人もいました。結構、こだわりが出るところです。
 本の背のブッカーの余分な部分は、中に折り込んだり、カットしたりします。私は折り込んだ方がゴミにならないし、丈夫になるので折り込む方が好きでした。あと、指の引っ掛かりがないところもいいなあと思ってました。引っ掛かりと言えば、角の部分を表紙の厚さ+2ミリほど残して三角にカットし、角を内側に折ってから左右を巻き込むように貼る方法もありました。でも、これをきれいに貼るのはちょっと難しく手間がかかります。スピードが必要なことが多いのであまりしませんでした。
 美しく貼るには、どの部分から中に折ってっていくかも結構重要です。あらぬところにくっ付いてしまったり、余計なしわが入ってしまったり。数をこなさなければ、なかなかうまくはいかないのです。不器用な方は、苦手意識を持ってしまったりもします。高齢のパートさんには、「私には、無理だ。」と拒否られてしまったこともありました。

 私は、本の装備は大好きでした。何より、図書館に届きたてのまっさらの本に触れられる喜びがありました。また、その時に、発注した本が思った通りの本であったことを確認できることも、司書としての喜びでした。自分で装備することで、その本の見た目や本の印象も記憶に残ります。それがレファレンスの際に手掛かりになることもあります。

 図書館に届いた本は、こんな作業を終えて棚に並び、利用者様の手に取っていただくことになるわけです。
 どうぞ、大切にご利用ください。


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