見出し画像

"何のスキルもない学生"が新規事業ではじめて顧客を獲得するまで。 社会に出たことがない私が学んだ「ビジネスのリアル」《後編》

思うように結果が出ない日々。大きな変化が見られない状況が続く

<前回の記事から続く>

ユーザーが思うように増えない現状をなんとか打破しなければならない。
そこで私が考えたのは、ユーザーにインタビューを申し込んでみることでした。
ユーザーから製品の意見や要望を聞いてみることが課題発見に繋がり、それが状況改善の糸口になるのでは?という仮説から思いついた施策です。

何がQAにとっての課題なのかが明確にならないまま物事が進んでいる状況をなんとかしたいという気持ちでとにかく必死でした。
QAのダウンロード数が伸びないのは、製品が魅力的でないからなのか。それともマーケティングがうまくいっていないからなのか。そもそも戦略が間違っているのか……。
インタビューすることで、成果が伸びない根本原因を発見できるんじゃないかと、藁にもすがる思いでした。

しかし、Twitterでのコミュニケーションからインタビューへと繋げるのは、想像以上に困難でした。見ず知らずの人からいきなりDMが来て、そこからいきなり「お話しよう!」と言われるわけですから、断られるのは当然のことですよね。しかもコロナ真っ只中でしたので、インタビューは対面ではなくオンライン(Zoom)。余計にハードルが上がっていました。

それでも諦められず、手を変え品を変えさまざまな方法でアプローチを試してみました。

何もできない自分。根拠のない自信だったことを知る

いざインタビューしようとしても、思うような成果がでない状態が続きました。

DMに返信があったとしても、2、3回やりとりしたらそこから急に返信がなくなることがほとんどです。成果が安定して出ないこともあり、このころからMTGに出席するのが気まずくなりました

「TwitterのDMどう?」
「いや、返信ないです……」
「……(困った顔)」

自分以外のメンバーには毎週MTGで報告することがあり、みなさん自分が持っているスキルを最大限生かしながら業務に取り組んでいます。その一方で自分には報告することがなく、ひたすらチームメンバーの話を聞いているだけでした。

これまでのインターンを通じてはじめて、実力が無く、何もできることがないと身をもって感じた瞬間。仕事ができない自分を受け入れることが何よりのショックでした。

この事業をはじめる前、自分には根拠のない自信がありました。
自分にはできそうな気がする。絶対結果を残せる自信がある。
そう心から思っていました。

しかしいざやってみると、何の結果も残せていない自分がそこにいたのです。

結果が出ない状況に不安を覚え、社長に相談してみました。「これ以上結果出せないかもしれません。他のことを行いましょう」と。
社長は「結果はそんなにすぐに出るもんじゃない。やってすぐ結果がでることの方が稀で、やり続けたことではじめて結果がでる」と、私を諭すように教えてくれました。

当時の私は結果なんてすぐ出るものだと思い込んでいました。結果がでなかったらすぐ見切りをつけて、さっさと他のことをやってみるのが正しいんだと。

社長の教えでこの考えを改め、まずは結果がでない現状を受け入れるところからスタートしました。結果はすぐにでるものでなく、少しずつ改善し続けてはじめてでる。そのことを念頭に置いて業務を進めていきました。

ひとりのユーザーとの出会いが希望になった

画像2

焦らず着実に業務を行い続け、チームメンバーの助けがあったこともあり、少しずつではありますが結果を出せるようになりました。どれも小さい結果ですが、これは大きな結果だと自信を持って言えるものがひとつあります。

それは、あるひとりのユーザーが有料会員になってくれたことです。

ユーザーのお名前は、みちさん。
ブログ運営に役立つ情報やツールに関して発信をされている方です。みちさんはブログでQAについて熱心に取り上げてくれていました。

その熱意はQAに関する記事の投稿頻度をみて、すぐに伝わってきました。我々の製品についてのお話を是非お聞きしたいと思い、さっそくメールを送信してみたのですが、はじめは承認を得られませんでした。

それでも今回だけは引き下がるわけにはいきません!

このユーザーさんは絶対にのがしてはいけない。ここまでQAのことを高頻度で取り上げてくれるということはきっと何かあるに違いない。ぜひともお話を聞いてみたい。その一心で文章を考え、メールを再送しました。

普通であればここでメッセージが途切れます。今まで幾度もメールを送信してきてなんとなく「ここで途切れてしまうかもしれない」と思っていましたが、今回は返信あり!なんとZoomでのインタビューを引き受けてくれることに!!

私の書いたメール文が、みちさんの心の針を動かすことに成功した瞬間です。

みちさんはこのインタビューの後、有料会員になってくれました。私たちの製品に対する想いがみちさんに伝わり、応援してあげようという気持ちから製品購入に繋がったのです。

この時はじめて、人の心を動かして製品を購入してもらうという経験をしました。製品を売り込もうともせず、純粋に想いを伝えることでお金が発生することもあるんだと感慨深かったのを覚えています。

何よりも嬉しいと感じたのは、Zoomでお話した後も定期的にQAについての記事を書いてくれること。そしてその記事を毎回ツイートしてくださることです。

QAの定例MTGではスプレッドシートが共有され、進捗確認が行われます。Twitterでの施策の結果が出たとしてもそれは不定期なもの。毎回成果報告ができるわけではありませんでした。ですが定期的にツイートしてくれたり記事を書いてくれるユーザーがひとりいることで、私は報告することがある状態でMTGに臨めるようになりました。

他のメンバーが毎回いくつも報告することがある一方、報告することが少ない私にとって、このことは何よりの心の支えになっていたことは言うまでもありません。

何も報告がない状況が続くと私の仕事はなくなってしまいます。今もここで働けているのは、QAを使い続けてくれる熱心なユーザーがいてくれたからこそ。
この奇跡の出会いのおかげで、いまも働く場があることに一番の嬉しさを感じます。

大切なユーザーの1人、みちさんにインタビューして気づけたこと

私に仕事の機会を与えてくれた、大切なユーザーの一人であるみちさんに感謝の気持ちを伝えるにはどうすればいいのか。自分ができることの範囲で最大の恩返しができるのは何なのかを考えた結果、みちさんとみちさんの書いたブログをこの記事で紹介することに思い至りました。

<みちさんとは>
みちさんを一言で説明すると、脱サラして朝2:00に起きて土日もブログを書き続ける鬼の様な努力ができる人。脱サラする前はリサイクルショップで働いていたそうです。

■ michiブログ
https://michi-blog321.com/
■ Twitterアカウント
https://twitter.com/michi_blog321

現在はブログ以外にもさまざまなことに挑戦しているみちさん。ダイエットや筋トレ、ストレッチ、ロードバイクなど、体を動かすことが趣味なのだとか。
また大のゲーム好きで大学在学中にゲームセンターでアルバイトをされていました。好きなゲームはバーチャファイターで、当時は毎日(!)プレイしていたそうです。

インタビューの中で「運動やゲームを通じて自身の成長を実感するのが楽しい」と何度もおっしゃっていたのが印象的でした。
これはブログでも同じで、サイトの成長を実感できるのが楽しいからこそ、継続して記事を書き続けられるともおっしゃっていました。

みちさんのブログ、”michiブログ”のコンセプトは「ブロガーに役立つ情報をシンプルに」です。
内容は主にWebマーケティングやワードプレスのノウハウについて。初心者~中級者の層に向けて書かれているのが特徴です。書評もあり、こちらは上級者の方でも楽しめる内容の記事が書かれています!

個人的には、みちさんの経験に基づいて書かれていた”朝活”についての記事が面白かったです。

当時コロナ禍で家にいる時間が増えたこともあり、時間を効率的に使うにはどうするべきか悩んでいました。結果私は、朝の時間を有効活用しようと思いたったのですが、いきなり夜型人間が朝型に変えようとしてもなかなかうまくいかないものです。何度も朝型にしようと試みましたが、何度も挫折しました。

そんな朝活に挫折し続けてきた私にとって、「朝活を1年間1日も休まず続けているブロガーが継続のコツ8つを解説」の記事はとても参考になりました!

もし生活リズムを朝型にしたいと思っているなら、ぜひ一読してみてほしいです。

またみちさんは資格取得にも挑戦しているそうです。現在は2級FP技能士の資格を所有しており、1級FP技能士取得に向けて勉強を進めています。その過程で得たノウハウをブログにまとめることで、これから資格取得を目指す方に役立つ情報を提供されています。


<ブログを続けられる理由>

「脱サラして朝2:00に起きてブログ書いてます。土日関係なくやっていますよ。今までで累計500日以上かな。でも収益は数十円くらいしかなくて……。最近ですよ、伸びてきたのは。やっと1万、2万って感じで稼げるようになりました。」

「えっ!最近ですか?!」

これには本当に驚きました。
私だけかもしれないですが、Twitterのタイムラインを見ていると”成功している人”や”稼いでいる人”をよくみかけます(実体は不明ですが)。

そしてブログは短期間で稼げるという印象が少なからずありました

当時の私は、“たった○○か月で月10万稼ぐことに成功。その理由は~”みたいなツイートに完全に影響されてました笑
その影響のせいか、みちさんも当初からそつなく稼いでいる印象がありました。

ですが話を聞いてみると、実際にはそつなくスマートに成功したわけではなかったことがわかりました。とにかく書き続け、分析し続け、うまくいっている方に質問し続けたそうです。

このお話を聞いて、“ブログって地味で、結果が出るまで時間がかかるな”と思った半面、“自分の努力がそのまま成果として返ってくるのは魅力的だ”と感じたのも率直な感想です。

みちさんは「成長を実感できるのはものすごく楽しい。だから地味でも続けられる」とおっしゃっていました。

成長することはたしかに楽しいですが、朝2:00に起きてブログを執筆するモチベーションは一体どこから沸いてくるのか。楽しいことでもさすがに途中で飽きると思うし、土日は休みたいと思うし、何か動機がないとさすがにこんな努力できないのでは?と思いました。

その動機は、会話を通じて少しずつみえてきました。

はじめて知った、社会人として働くということのリアル

お話中、なぜサラリーマンを辞めたのですか?と、みちさんに聞いてみました。

「このまま続けていても先が見えない。労働時間が長くなるだけで、現状を変えるのは難しいと思い退職を決意したんです」

この言葉に、覚悟のようなものを感じた気がします。

みちさんが当時お勤めになっていた会社には複数の部門があり、その中には採算部門もあれば不採算部門もあったそうです。みちさんが当時所属していたのは後者の不採算部門。日々働く中で、会社が力を入れていないことを、うすうす感じていたそうです。“この事業部で働いていたとしても先が見えないことを悟った”ともおっしゃっていました。

会社が力を入れていなかったという理由に加えて、根本的なビジネスモデルや市場特性もすべて考慮して、総合的に判断されたそうです。自分の力でなんとかできるところが限られていて、これ以上の成長は感じられなかったのだとか。

正直なところ、大学生である私にはみちさんが当時感じていた感情を完全に理解するのは難しかったです。ですがこの会社員時代に手の施しようがない状況を経験したみちさんだからこそ、いまのとてつもない努力を継続できるのかもしれないと、お話を聞いて思いました。

努力した分だけ結果が出る、将来に希望が持てる。だからこそ朝2:00に起きてブログを書き続けられるのではと。現状に閉塞感を感じ、脱サラする覚悟をもったみちさんのブログに対する執念は、計り知れないものであると感じました
このお話を聞いて、成長の余地を感じられるビジネスに携われること自体、かなり恵まれていることに気がつきました。成長を感じられること自体が非常に恵まれているんだと

みちさんと話す前には意識すらしていなかったのですが、この事業の将来に希望が持てるからこそ、うまくいかない時であってもモチベーションを保てていることにも気づけました。
もし会社がこの事業を軽視し、メンバーの士気も低かったらとっくに辞めてたんだろうと思います。

この事業に関われていることに、感謝しています。

インターンの自分がこの仕事を通じて学んだこと

このインターンの経験を通じてたくさんのことを学びました。
その中でも学生である私に大きな影響を与えた学びを、ここでは紹介したいと思います。

まずはじめに、チームメンバーがいてはじめて自分の活躍できる場があることを学びました。

何かをする時はいつもチームメンバーに助けてもらったばかりで、自分ひとりで完結したことはほとんどなかったです。メール文ひとつとってもチェックしてもらう必要がありました。
当初の根拠なき自信は経験を重ねるごとに消えていき、仕事ができなさすぎて落ち込むことも多かったです。

自分の力に慢心したりせず、周りの方々が教えてくださったことを謙虚な姿勢で吸収することこそ、今の自分に最も必要であることもわかりました。

またユーザーに自身の想いを伝え関係を築くことで、新たな仕事につながるチャンスがあることも学べました。
みちさんと出会ったおかげで、noteに記事を書くという、今まで経験したことがない仕事をする機会にも恵まれました。

このような貴重な経験も、自分たちの製品を応援してくださるユーザーがいてはじめてできることを、身をもって実感しています。

そして当初抱いていた新規事業の華やかなイメージは、今では泥臭いイメージへと完全に変わりました。やったことは地味な仕事ばかり。自分だけでなく、チームメンバー全員が地味な仕事をやっているようにも私の目には映りました。

あまりに地味すぎて、いつになったら有料会員になってくれる人が現れるのかと思ったことも一度や二度ではありません。この仕事は一体何に繋がっているのだろうかと思ったこともありました。

ですが、いざ有料会員のユーザーがはじめて現れた時、今まで行ってきた地味で小さな仕事の一つひとつが大きな仕事だったように錯覚しました

社内チャットで「有料会員になったユーザー発生!」と報告するといつも賞賛してくれるチームメンバーがいます。この時だけは、唯一華やかさを感じています。

この新規事業を経験するなかで、様々な方にも出会いました。
数億円単位でWebサイトを取引した実績のある方や、本を出版しWebマーケティング界隈では有名な方
そういった百戦錬磨のプロたちが頭をフル回転させて考えた戦略が、時としてうまくいかないことがあることもわかりました。

インターンを通じて出会った人を振り返ってみて、新規事業で活躍する人というのは、目の前にある地味な仕事を徹底して継続できる人なのではないかと、今では思います。

画像2

世の中で賛辞されるような、”インターン生がアイデアを考案し、一発逆転!”とは、残念ながらなりませんでした。

課題が明確にならず、そもそも何をしていいかすらわからない。何かしてみたのはいいけれど現状が全然変化しない。
そういった状況に陥ったことがなかった私にとって、この経験は困難の連続であり、私の担当業務自体、いつなくなってもおかしくない状況が続いていた時もありました。

今でもこうして仕事があるのは、QAを使ってくださるユーザーさんがいて、自分を支えてくれるチームメンバーがいるからです。仕事があること自体当たり前ではないということが、このインターンでの最も大きな学びだと確信しています。

ユーザーがいることでそれが対価の生まれる仕事になっていること。そしてチームメンバーがいてはじめて自分が活躍できていること。

これらを忘れずに、社会人になっても業務に励んでいきます!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?