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長編日記 『決別との再会』(7/2)

〈わたしの恋愛観について〉


……だいじなお話をします。
わたしが、きょう気づいたことを、忘れてしまわないうちに。

わたしはずっと、自分には恋愛って感情がないって
自分自身に言い聞かせてたし、

誰かに聞かれたときも、それとなくそうほのめかしてきたんだ。

だけど、ほんとはちがったんだよ。
わたしはずっと、人恋しくて。
わたしを気にしてくれる、
仲のいい話し相手とか、友達とか、あわよくば恋人がほしかったんだ。

予備校のときもそうだった。
わたしは、まず友達を作ろうとして、
女子の輪に入ろうとしたんだよ。

……だけど、2週間もたたずに、
休み時間におしゃべりしに行っても、
ソフトに輪の中から外されてるような感じがする、
そんな状況ができあがっちゃって。

なんでかっていうのは、だいたいわかってた。
今みたいにメイクで隠すもの隠してないわたしは、
(今だって、隠し通せてるかどうか怪しいけど、)
イロモノでしかないから。

いちいち意識してたら心がいくつあっても足りないから
見て見ぬふりをしていただけで、
心のどこかで、わたしが
イロモノなんだってことはちゃんとわかってたんだよ。

輪から外される理由なんて、ほかにもいくらでも思い付くよ。
どれが本当の原因だったのかわからないぐらい思い付くし、
じっさいそのせいでどれが本当の原因だったのかわからないんだよなぁ。



・声が小さかったり通りづらかったりして、
言ってることが伝わらない。
それにあのときは、声が上ずりぎみで、
からかい好きな男子の子にもネタにされるぐらいだったし。

・あのころは高校のストレスとかうつとかの影響が強くて
そうだったのかもしれないけど、
話が続かない。
そして、気まずい沈黙が流れるんだよなぁ。

・もとから、友達でも恋人でも、
好きだと思った子にくっついていくメンヘラ気質だったから、
もしかするとメンヘラを嗅ぎ取られて距離とられたのかも。
表に出してなくても嗅ぎ取ってくる子って、女子だとそこそこいるし。



たしか高校に入るよりもっと前のときから、
ずっとずっと、そうだったんだよ?
わたしが、慣れない環境でまだお友達がいない子と
お友達になって、わたしもまだお友達がいなかったからうれしくて。

だけど、何日か経って、その子に別のお友達ができて。
ずいぶん昔は、そのあたらしいお友達が、
大好きなはじめてのお友達のお友達を増やしてあげるために
わたしが連れてきたお友達だったことも確かあって。

はじめのうちは三人でおしゃべりしたり、
遊んだり勉強したりするんだけど、
時間が経つうちに、
わたしにとって一番大切だったその子は、
わたしからあたらしいお友達のほうに、すこしずつ離れていって。

そんなことが、何度も何度も何度も何度もあって。

あの子が*んでくれればなぁ、
あの子がどこかにいなくなってくれればなぁ、って。
何度も何度も何度も何度もそう思ったんだよ?

だけど、それをするには、
わたしは中途半端にものわかりが良すぎたし、
ごり押しでそれをできるだけの力もなかったんだよ。



だって、わたしには、そのあたらしいお友達を
いじめるか何かして最悪不登校にしたところで、
悪者になるのはわたしだけだってわかっちゃってたから。

そして、ただの学生に、道理をねじ曲げて何かをする、
権力とか魔法みたいな力なんて、あるわけもなかったから。



だからわたしは、いくらか引きとめてもだめだったら、
何も言わずに、大切だったその子をあきらめて、
そのあとお近づきになれる機会があれば
ちょっぴりだけそばにいさせてもらうだけで。

引きとめてうまく行ったためしがなかったから、
最近の何年かは引きとめることもなくなって。

そんなことが、何度も何度も何度も何度もあって。



予備校でも、今度はグループに入れずに
ひとりでいた子に話しかけたりもしたんだよな。
その子のあだ名がトマトさんだったから、そう呼ぼうかな。

結論から言うと、トマトさんとはたしかに友達になれたよ。
毎朝、最初の授業が始まる前に、
一番前のわたしの席から一番うしろのトマトさんの席まで、
ときに暗記物片手に教室を横切って、

トマトさんの作業が一段落して顔を上げてくれるまで待って、
おたがいに「おはよう」を言い合えたときは、
一対一で、おたがいだけを見て、
たった4文字の言葉だとしても話ができたってことで、
すっごくうれしかったんだよ?

だけど、今考えると、きっとそれが重すぎたんだろうなぁ。
だって、トマトさんはわたしと口もきかなくなっちゃったから。

それで、わたしは授業の間の休みは黙々と勉強するかたわら、
お昼休みにはお弁当もってほかの教室に行ってたわけだけど。

そこだと、中学校のときの知り合いとかもいて、
わりと楽しくおしゃべりできたかな。
お昼休みだけだから関わる時間が短かったし、
そもそもクラスが違うのもあってある程度以上仲良くなれなかったから、
おかげで重くならずにすんで事なきを得たのかもなぁ。

だけど、お昼休みだけの友達関係は、
お昼だけの、いっときだけの関係。
それに、親には否定されっぱなしだった「女の子らしく」で、
友達関係じゃない恋愛だってしてみたかったのかなぁ。



そのときわたしはきっと病んでて、
共依存と愛さえあればもはや相手の子の性別とかどうでもよくなってた。

それか、相手の子……りんちゃんが、
わたしがいつか着てみたかった服を着ていたからかな。
どっちにしても、講習期間中、
教室移動時刻直前まで移動せずに復習してたら、
明らかに友達いなさそうオーラを放っている子(=りんちゃん)
が教室に入ってくるのを発見。



ガタッ。よし行くぞ。
この子なら、わたしだけ見ててくれるよね?




Day1:一か八かで話しかけてみたら、
話題の趣味とかも合って、めっちゃ嬉しそうに話してくれた。
この子アブさん好きなんだ~。
わたしもフリーゲーム実況わりと見るよ~。
てゆうか、めっちゃうれしそうにしてくれるとわたしまでうれしい。

Day2:昇降口でばったり会ってあいさつ。
うれしそう。わたしもうれしい。
夕方の教室移動時間におはなしして、
夜はいっしょに帰る。
わたしだけ見ててくれそうな子だし、
思い立った今日メアド交換しようかな~LINEないし。
ちなみにりんちゃんっていうらしい。
もうりんてゃしか勝たん。

Day3:りんちゃんがなんかそっけない。
わたしにかまわず宿題やってる。
宿題忙しいのかな。
それか、親が厳しいらしいし、親に何か言われたのかな。
まあ夜帰れるしいいよね。りんちゃんの邪魔したら悪いし。

〈夜〉
昨日とおとといの待ち合わせ場所で終電近くまで待ったけど来ない。
受付の人にも聞いたけど知らないっぽい。ぴえん。

Day4:りんてゃが来ない。
泣いていいかな。ぴえん以上の何かを感じるよ。
夜、待ち合わせ場所にはいないから、
授業が確実に終わったような時間帯を見計らって何回か連絡した気がする。

そして音信不通。5回ぐらい電話かけたと思うんだけどなぁ。
もしかしたらそれ以上かも。

仕方ないので、受験がんばってね、っていう気持ちと、
うれしそうに話してくれたときはほんとに救われたんだよ、
っていう気持ちと、それとちょっぴりの未練を乗せた
超長文メールを送信したんだよなぁ。

わたしにこれ以上追いかける余力ないし、
それに追いかけても誰も得しないし。

とはいっても、せめて最後の返信ぐらい欲しかったのに、
何週間待ってもこなかったんだよ。……どうして。



……そして無事終了だよ。
この恋愛の前の友達関係も含めて、
わたしが学んだことはひとつ。
「友達に近付きすぎると、しばらくの関係のあと
友達以下の存在に変わってしまう」
ってこと。

だから、今のわたしは、もう友達とか、ましてや恋人なんて、
進んでつくろうとしないし、
逆に壁を張ってるような感じなんだよ、きっと。

だって、わたしが恋人に求めることって、
「わたしを絶対に裏切らない」こと含めてけっこうハードル高いし、
そんな忠犬みたいな子どこにもいないもん。
わたしって、中途半端にものわかりが良いから、わかっちゃうんだよな。

いや、「わたしを絶対に裏切らない」子なら、
ここにひとりだけいるんだよね。
「わたし」が。

こうして、恋人に求める高い理想は「わたし」に向かって。
だからわたしは、神様を目指しはじめたんだ。
そっか、そういうことだったんだ。

もうわたししか勝たん。
だけど神様になれないわたしのことを、
わたしは推しにできない。好きになんて、なれっこない。
それって結構、沼なんじゃないかな。きっと。

わたしの理性とかものわかりが、ほんのちょっぴり少なかったら、
もしかするとホストに狂ったホス狂と化してたのかもしれないよね。
こっちとそっち、どっちが幸せなんだろう。
マルチバッドエンドだよ、これ。

わかってる、わかってるんです……。
……それでも……。
誰か、わたしの心の氷を溶かして、
わたしに「もうあなたしか勝たん」って言わせてください。

そしたら、わたし、あなたを裏切りませんから。

ほら、わたし三か国語しゃべれますよ?
ほら、落ちこぼれですがわたし一応東大ですよ?
ほら、わたし渋谷でナンパされた経験あるくらいにはかわいいですよ?
……きっと。

わたし、裏切らないから、あなたもわたしを裏切らないで。
それだけだから。

だから、どうかあなたを推させてください……。
お願いです……。




————はじめての長編日記、どうだったでしょうか?

「悲しい」「面白い」「共感できた」「重い」……


見る人によって十人十色の感情が、
そこには、あるのでしょう。

……えっ?? どうしていつも、日記なのに
三人称視点のコメントがあるのか、って?


今のわたしって、三人称視点が半分以上なんですよ。
いわゆる「離人症」ってやつです。ふふふ。

「離人症」

① いかにも名前が厨二っぽくてかっこいいし、
② 自分を客観的に見つめられるし、
③ さらには自分に関する全てのことが
  つまらないことに思えてきて、
  解脱への第一歩を踏み出せます。

まさに良いことづくめですね。(オイ


けれど、わたしは一人称視点の人生のほうが好きだから。
皆さんがこれを読んでくれて抱く感情が、
わたしを一人称の「わたし」に引き戻してくれると、
そう、信じています。


さて。 次回の長編日記は、
『サーティワンの******に恋をした話』です。

「******」に何が入るかは、
読んでみてのお楽しみ。



次回、

『-78.5℃の、失恋エフェメラリティ。』


ぜったいみてね。


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