男子高校生はかく語りき

字を書くためには書くものと書くところが必要である。指と砂場、チョークと黒板、キーボードとパソコン画面、そして、紙と鉛筆、もといシャーペンである。

英語ではmechanical pencil。その名のとおりシャーペンは精密な機械の如く、頭をカチカチ押すだけで芯がヒョコっと、またカチカチ押せばヒョコヒョコと、水槽のチンアナゴのように黒く光る姿をあらわにする。

僕とシャーペンは切っても切り離せない関係にある。高校生である僕にとって、シャーペンなくして勉強はできない。鉛筆のように削る必要がなく、芯を補充するだけで常に細い線を生み出してくれるシャーペンは僕のパートナーである。

しかし、パートナーというだけあって、常に仲良しこよしかと言えばそうでもない。

鉛筆に負けるシャーペンの欠点。それは、芯が細いが故に起こる事件。

テスト中、薄っぺらい紙に数式を羅列する。手はフル回転する脳の期待に応えるべくシャーペンをガリガリ酷使する。健気なシャーペンはその期待に応えようと懸命に芯を固定するが、それが仇となり、
「ビリっ」
と、数式を書くべき場所が不毛の土地へと激変する。この瞬間、司令塔の脳は有り余るエネルギーを蒸発、すなわちやる気が失せるのである。周囲からカンニングと思われない程度にこちらをチラチラ伺う。9割方書き終えているため紙を改めることはなく、あられもない姿のテストを教師に見せる僕はもうお嫁にいけない。

授業中、ノートにこれまた数式を羅列しているとき。それに尽くそうとシャーペンが懸命に支える芯は、時に反抗期の青年のように自らの束縛を解こうと、家から飛び出してしまう。
「この大空に 翼をひろげ 飛んでいきたいよ」
翼を授かったシャーペンの芯君は自由な空を飛ばず、なぜか僕の恋焦がれる女子のもとに確固たる意思を持って向かう。いけない恋をする僕に、そして彼女に嫉妬しているのだろうか。
そして、女子にとって招かれざる客である我が家のシャー芯君をみて、躾がなっていないと僕に無言の圧力を加え、そっと勢いよく彼を僕のもとに帰すのである。シャー芯君、君には翼はまだ早いようだ。悲しみしかないではないか。

このように、まさに芯のようにとんがった思春期の青年を抱えるが、常に見放さず支え続けるシャーペンはもはや母なるシャーペンである。

しかし、母なるシャーペンをパートナーとして持つのはいかがなものだろうか。源氏物語のとある一節はフィクションである。古典の勉強をするから許される話ではないのである。

いや、母性溢れる女性なのか。そう捉えればなんの問題もない。バツ一なだけで、倫理性に問題なない。

というわけで、僕の恋人、シャーペンちゃんの紹介でした。

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