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わたしの旅行記①・・・ハワイ・ホノルルの海に、酔う

お題「わたしの旅行記」を書くと決めてから、過去の記憶をひも解いてみた。
思えば私はさまざまな国で、酔ってきたものである。
ある時は街、ある時は川、またある時は山のテラスで一人きり・・・。

もちろん楽しい事ばかりではない。だがどれもかけがえのない時間だ。

今日はその中の1つを皆様にご紹介したい。
青が灰色に変わった、あの秋の日の思い出を。


20歳の9月、私は友人4人とハワイ・ホノルルへ遊びに行った。

私が先輩の「彼氏と幸せ❤️アロハ旅」トークに影響された事がきっかけだ。
特に

スキューバダイビングの話に。


当時はマリンスポーツ大流行で、先輩も彼と「ラブラブ❤️体験ダイビング」をしていた。彼女はそれがどんなに楽しかったか、実に長々と語った。

「ぷるるも絶対にやりな〜!ウミガメとこんにちわ出来ちゃうよぉ」

先輩曰く、「船で沖合までピューっと行って、ざぶんと潜るだけだから、ぜんぜんカンタン!」とのこと。

先輩のノロケはどうでもいいが、ダイビングは超楽しそう!

脳内で広がるハワイの海!

そこで私はみんなにプレゼンし、この旅が実現したのだ。

実際に着いてみると、ハワイは実に魅力的な場所だった。
青い海、白い砂、陽気な人々、アロハ・・・。

人工的な都市空間と大自然のコラボレーションに、気づい時にはもう夢中。

「来てよかったね!」

私たちは初日から元気にホノルルの市街地を歩きまくり、翌日のダイビングに胸をときめかせていたのだった。

これは2016年に行ったホノルル。
これも2016年。ハワイの海岸って、のびやかでいいですよね〜!

ところが。

翌朝私たちを待っていたのは、空に広がる一面の雲であった。
昨日までの快晴はどこにも見当たらない。

しかし私たちは「そのうち晴れるよ!」とたかを括っていた。
なぜなら9月のハワイは、ほとんど雨が降らない時期だから。

だがダイビングのインストラクターは、会うなり笑顔でこう言った。

「今日は晴れないですヨ、雲が厚いから・・・9月なのにネ〜」

9月なのにネ〜って・・・こちとらメインイベントなんだけど!
でも彼の責任ではない。行き場のない怒りと落胆で黙り込む私たち。

しかしインストラクターは、ニコニコと決断を迫ってきた。

「今日どうしまス?潜れはしますヨ。ただ、イメージとは違うネ」

どう違うのか。私たちは一気に不安になった。じゃあ止めるべき?
だがダイビングは出来るため、キャンセルしても返金はないという。

何だ、その残念すぎる二択は。

結局私たちは決行を選んだ。やっぱりもうダイビング気分だったから。
ウミガメと泳ぐことばっかり、昨日から話していたし。

20歳の情熱は、急に止まれないのだ。

暴走機関車、海へ。

それから30分後、私たちはウェットスーツを着て海岸に立っていた。
海が荒れており、船が出せないためだ。

「ここからボンベを背負って海に入りまス。あまり沖へは行けないけド、お魚は見れると思いますネ〜」

陽気なインストラクターが、歌うように言う。

だが陸地で背負うボンベは鬼のように重く、肩にズシリと食い込む。
海も空もすべてが灰色で暗い・・・ハワイなのに。

これ、当時の海にそっくり!雲はもっと厚く、波も荒れてたけど。

なんか、やめたい。

きっと全員がそう思ったはずだ。
でも私たちはヨタヨタと海に向かって歩を進めた。

もしかしたら海の中は別かも、との希望を胸に抱いていたから。

まさか海の中まで全部灰色とは、これっぽっちも思わずに。


名誉のため申し上げれば、インストラクターは良い人だった。

魚がいればすぐに教えてくれ、できる限り沖まで行けるよう、全力を尽くしてくれた。

ただ我々が魚に近づくと、その動きで砂煙が巻き上がったけれど。
もともと濁っているのにである。つまり、

何も見えない。

しかも彼が教えてくれる魚はなぜか全部茶色いから、やっと姿が見えても、

判別がつかない。

そんな中、私は皆とは別の苦難と孤独に戦っていた。
不定期かつ小刻みにゆれる海の中、頭痛とめまいに襲われていたのだ。

そう、海に酔ってしまったのである!



実は私、子供の頃から車酔いがひどく、治らぬまま大人になった。

だから今も可能な限り、街中では車に乗らない。
信号のストップ&ゴーや、道をクネクネ曲るのに耐えられないからだ。

ドライブでは酔い止めが欠かせず、その効果でたいてい寝てしまう。
絶景ポイントに到着しても、しばらくは動けず死んでいる。

「自分で運転すると酔わない」を励みに免許を取るも、教習中も酔いは治らず、結局ペーパードライバー。

そんな私がダイビング・・・冷静に考えたら無理すぎた。
小学生でもわかるような事だが、当時の私はまったく気づかなかった。

だって

ダイビングとハワイに、酔っていたから!!


驚きのダブル酔いだ。こんな人間につける薬はない。
海中で苦しんだとしても、同情に値しないだろう。


足が地から離れて約1分で、私は己の酔いに気づいた。

私の場合リバースはしないが、肩から首、そして頭がただひたすら痛くなる。
治すには30分ほどじっとするしかない。

でもここは海・・・もちろん、どうにも止まらない。

取るべき道はリタイアのサインを送ること。
だがその場合は友人たちも一度、海から上がらなくてはいけない。

サインを送る決意が萎える。せっかく楽しんでいるのに・・・って、ゴーグルで顔ぜんぜん見えないから想像だけど。

何よりダイビング推したの、私だし。

そこで私は、自分をコンブだと思いこむ道を選択した。

繰り返し脳内で言い聞かせることで、自分を海藻に変える戦略だ。

私、今はコンブ。


だから・・・海に酔わない!!



ウェットスーツを着たコンブとして、生きる。


よく考えたら人魚でもよかったのに、なぜコンブなのか。
まったく覚えてないが、とにかく私はコンブとなり酔いに耐えた。

せめてもの救いは、本来なら45分のダイブが30分で終了したことだろうか。
でも海岸で見た友人たちの笑顔に、私はコンブになって良かったと心から思った。

もちろん私がいっときコンブであったことは、今も秘したままである。


ダイブ時間が短くなったことを憐れんだのか、終了後にインストラクターはケーキや軽食をごちそうしてくれた。
テンションが上がった友人たちは、ダイビングの思い出を話し始める。

だが私は笑顔を浮かべつつ、心の中では文句のオンパレードだった。

もう絶対にスキューバダイビングはやらない。何があっても!!

そもそも、先輩の恋バナなんか無視すれば良かった、と。
私は海岸から潮の流れでも見てりゃいいのだ、と。

だが、この時の私は知らない。

5年後にオーストラリア・ケアンズでラフティングに挑み、開始3分で川に落ちてしまうことを。

そのあと激流に酔い、さらなる地獄を見ることも・・・


そんな地獄のいきさつは、こちらから。


*ホノルルの海以外の写真は無料画像サイト「O -DAN」様よりお借りしました。
当時の写真は実家のいずこかに・・・南無・・・









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