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いつもの場所で、あなたに会いたい(2024.4.7 追記)

こんにちは、ぷるるです。

私の暮らす街はこの週末ずっと雨でした(見出し画像は去年の桜です)。
お花見を楽しみにしていたので、残念です。

桜といえば、私は毎年同じところへお花見に行きます。
県では桜の名所で、見事な並木道が楽しめるんですよ。

これも去年の写真。広くてゆったりした川が近くに流れる。

「同じ場所ばかり行って飽きないの?」なんて、時々聞かれます。
正直言えば、飽きを感じる年もありました。

でも繰り返し通うと、ある時から過去の思い出が重なり合って、離れ難くなっているのに気づいたんです。

同じ道を歩いていても、幸せでたまらない年もあれば、悲しくて桜を見る気がしない年もありました。

そこに桜並木の色、音、風や匂い。人々のざわめきや自分の思いが混ざって1つに織りあげられていく・・・毎年新たな糸がさらに加わるイメージ。

これは同じ場所に毎年通うからこそ、得られる味わいだと思います。

今年もこの桜並木に会えた。歩いている人々も皆笑っている。
それだけで十分だなって、思うんですよね。


けれど、毎年会うのは桜だけではありません。
私はある人に会いたくて、この場所へ通ってもいるのです。

そう、イカ焼き屋台のご主人に。



といっても私はイカ焼き、食べないんですけどね。


ここのもう一つの名物は、桜と沿って並ぶたくさんの屋台です。

甘味からガッツリ系、綿飴などの古典から電球ソーダという新作まで。そりゃもう、あらゆる屋台が並ぶんです。

花より団子になる年もありました。


そして何年も通うと、同じ位置に同じ屋台が毎年並ぶことに気づきます。

イカ焼き屋は、そのような「毎回屋台(命名私)」の一つでした。

この図は桜&屋台ロードのほんの一部。すごーく長いんです。

この場所へはいろいろなメンバーで訪れましたが、イカ焼きファンはもれなく「美味しい!」と言っていました。

なので自分は食べないイカ焼き屋へ、毎回足を運ぶことになったわけです。


思えば、初めてこの屋台を訪れたのは20年前のことでした。

たまたま選んだ屋台でしたが、私はご亭主を見た時ちょっとドキッとしました。
なぜなら鮎川誠似のイケメンだったからです。

もちろん鮎川さんのが断然かっこいいです。めんたいロック!


また、似た系統の人がひしめく屋台業界の中で、このイカ焼き主人は異彩を放っていました。雰囲気がその筋の方ではないからです。

記憶を頼りに描きました。ご自身で鮎川誠を重ねてください。


黒縁メガネによって、一見『文系眼鏡男子』っぽく見える効果も大きかったです。

「この人は過去に文学を志し、就職せず人生を賭けるも挫折。その後紆余曲折を経てイカ焼き屋を始めたのではないか・・・」
そんな妄想がしっくり来る印象がありました。

まあそれはすぐに打ち砕かれたのですが。

彼は、折れたメガネのツルを、ガムテでがっつり止めていました。

さらに「何本焼きます?」と聞かれた時に見た口には、前歯が2本ありません。
もちろん前歯の有無と文学を志した過去には、何の相関関係もないですが。

あと声が相川翔に似ていたことも、私から興味を奪いました。


しかし毎年この屋台を訪れるうち、私はいつまでも修理されないメガネや、一向に追加されない前歯に慣れていきました。

誰しも事情があるものです。

3年目を超えたあたりから、今年もあの人いるかしら?と思い出すようになり、10年を過ぎた頃には「お互い歳をとりましたね」などと、心の中で話しかけるようになりました。

初めて出会った時は黒々としていた彼の髪にも、白いものが増えています。
それでもこうして私たちはまた会えた・・・それ以上望むことがあるでしょうか。

例え前歯が入らずとも、お互い健康に気をつけ頑張っていきましょうよ!そんな気持ちを抱いていたのです。


ところがです。

ところが去年お花見に行ったら、イカ焼きご亭主がいないじゃありませんか!!

時期が時期でしたから、ドキリとしました。
ただ、コロナのため通常より屋台が減っていたことも事実です。出ていない「毎回屋台」もちらほらありましたから、決めつけることはできません。

私は初めてイカ焼きを買わずに帰りました。
「やっぱり、お花見のイカ焼きはあの人じゃないと・・・」
一度も食べてないのに、その気持ちは揺るぐことはなく。

一年に一度しか会わないとはいえ、私には大事な人になっていたのです。


来週は雨が降らなければお花見に行く予定です。
そして、イカ焼きの屋台を確認してきます。

願わくば、あのご主人が戻っていますように。
そして相川翔の声で「まいど!」と言ってくれますように。


そしたら私はお祝いに、21年目にして初イカ焼きを食べようと思います。


<追記・・・イカ焼き屋のご主人2024>

私は今年(2024年)もイカ焼き屋のご主人に出会うべく、この桜名所へ足を運びました。

ところが、驚愕の事実が私を待っておりました。それは。。。

キッチンカー占拠事件


いや、全然事件じゃないのですけどね・・・。
この記事にも書いたとおり、川沿いの道に沿って、屋台がダーっと並んでいるところが、この桜名所の魅力でした。

ところが、昨年あたりからうっすら兆候があったものの、なんとかつての屋台はほとんど姿を消し、今年は代わりに・・・

キッチンカーが!!

小洒落キッチンカーが!!


もちろん、イカ焼き屋のご主人はいらっしゃいませんでした。
というか、多分この桜名所でお目にかかることは2度とないと思います。

まさか、この記事の顛末がこのようになるとは夢にも思っていませんでした。
今、軽いショックを受けています。

私もキッチンカーは美味しいし、おしゃれだし、好きです。
でも、それ以上にお祭りの時にお目にかかる、ちょっと怪しげなあの屋台が大好きだったのです・・・。

これも時代の流れでしょうね。
これからはどんどん屋台が駆逐され、清潔で爽やかなキッチンカーがあらゆるお祭りを占拠していくことでしょう。

食べ物を売る人々も、健全な方々に取って代わられるのでしょう。
そして子どもたちに「屋台?テキ屋?何それ」と言われることでしょう。

この寂しさは、年齢からくるノスタルジーによるものなのか。

それともわかりやすい闇を経験する機会を奪われ、闇を見抜く力のない人々が量産される可能性を憂うものなのか。

自分でもちょっとわかりかねています。
まあ、ただの考え過ぎかもしれませんけど。


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