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平野啓一郎
2015年3月11日 09:51
ここにあるのは、蒔野(まきの)聡史と小峰洋子という二人の人間の物語である。 彼らにはそれぞれにモデルがいるが、差し障りがあるので、名前をはじめとして組織名や出来事の日付など、設定は変更してある。 もし事実に忠実であるなら、幾つかの場面では、私自身も登場しなければならなかった。しかし、そういう人間は、この小説の中ではいなかったことになっている。 彼らの生を暴露することが目的ではない。物