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小さな彼4

 持つ者と持たざる者。そういう意味では私たちは、二人とも持たざる者であるが、なぜか、羨ましい妬ましいという気持ちが沸き起こりません。もしかして、彼の中には少しあるのかもしれませんが、みじんもみせないし、潔い姿勢でいつも涼しそうな横顔でいます。
 彼のお母様は、ずっと病気がちだったので、彼は母の手料理を食べたことがなくて、ひもじい時は調味料を舐めて過ごしていました。彼はその母親のことを好きじゃないと、質問するたびにこたえていました。怒りっぽくて、怖くて、負けずギライのお母様だったようです。
 最近、病気が治まってきたのか、お母様はときどき御父様を伴って彼の小さな古い借家を訪れて様子を見に来てくれるようになったそうです。わざわざ500㎞の道のりを。その時彼にポツンと「小さな頃、ほったらかしにしてごめんね。」と言ってくれたそうです。
 私も子供達に対して、一人親だったので、作れないときはお惣菜を食べさせたり、「前の日の残りの御飯を食べなさい」、なければ、「卵ご飯を食べて」と言っていました。しかも「自分たちで食べなさい」と、冷蔵庫に食べ物を入れて置いただけの時もありました。どんなときも元気でキチンとしてあげたかったと後悔しています。
 私の母は(両親がそろっていましたが)パートに行きながら、家事も完ぺきで、手作りのお料理しか食べたことがありませんでした。ですから、自分の母親業には罪悪感が付きまといます。
 今回は、彼のお母様と、自分を重ねて、自分をいじめながらの、きつい痛恨の、話しになってしまいました。
 持たざる者ってどういう意味なのか、自分でも判りませんが、かけている部分があったのです。

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