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リール・アラウンド・ザ・ファウンテン/内なる子供、インナーチャイルドの解放


Reel Around the Fountain - The Smiths

★★★

まずはわたしの話をする。

わたしは子供の時、知らない大人の男性に性的な目的で体を触られた経験がある。ほんの小さい子供だったわたしは、自分が何をされたかわからず、そのあと少し大きくなってからその事を理解した。

その時わたしは自分を恥ずかしく思い、何か悪い事をしてしまったように感じて、得体のしれない感情と共に自分の奥底深くしまい込んだ。

それでも時々不意にその記憶が蘇り、嫌な気分になりながら急いでそれを押し返してまた蓋をする。この事は自分が死ぬまで誰にも話すことはないだろうと思った。母親にも何も言わなかった。

大人になっても自己肯定感が低く、自信がなく自己表現が苦手。自分が出せず常に生き辛さを感じていた。母子家庭だったのもあると思う。自分は他の家の子とは違うんだという疎外感、劣等感、寂しさがいつも付きまとっていた。子供の時の傷ついた心、満たされなかった感情は癒されない限り心の奥底に居座り、大人になっても反応し続ける。 

★★★

今年5月にクンダリーニヨガで幼少期のトラウマ解消のためのワークに取り組んだ。動画を見ながら毎日1時間、40日間のプログラム。コロナで自粛期間中だったのはかえって好都合だった。

未消化の感情は下半身のチャクラに固まっているらしい。ワークを続けていると溜め込んでいた感情が涙や鼻水となって出てきて顔がぐちゃぐちゃになり、目の前にティッシュの山が作られた。

この期間中とそのあと暫くは過去のあらゆる出来事を思い出した。そしてその都度その感情に浸り、消化させるという作業をしなければならなかった。

ワークを始めて30日を過ぎた頃、先生の勧めでオンラインのトークセッションを受ける。この時の誘導瞑想で初めて自分の中の声を聴くことができた。それは本当に弱々しい声だったのだけれど、これがきっかけで自分自身と繋がる感覚がぼんやりとわかるようになった。

セッションの次の日の朝、パサール(市場)からの帰り、バイクを走らせていると咳と一緒に「出して」と言う言葉が体の中から出てきたような気がした。

そしてその日の午後、ヨガを始めた途端、言葉が湧き出るように出てきた。
「出して出して出して!」
わたしは「もうすぐ出してあげる」と答える。

怒りを解消するワークでは「ずっと出たかったんだよ!」と怒られる。
それでわたしは「ごめんね、ごめんごめんごめん」と泣きながら何度も謝った。ずっとずっと出たがっていたのに閉じ込めていたわたしの中のわたしに。

そのあと何故か笑いが込みあげてきて、頭がおかしい人みたいにずっとケラケラ笑っていた。誰かがみたら気が狂ったと思われただろう。そして初めて自分の指先までエネルギーが通うのを感じた。

横になって目を瞑るとわたしの胸の上に小さな女の子が丸くなって寝ているのが見える。とても幸せな気分だった。

それからもまだ自分と向き合うことをしなければならなかったが、少しづつ自分への信頼が回復してくるのが分かった。そしてあの出来事はいつのまにかただの記憶になっていた。

今思い出しても、以前のようにに嫌な感情が湧いてくることはない。考えると涙が出ることもある。でもそれはあの出来事に対してではなくて頑張った自分に対しての涙だ。

★★★

ファーストアルバム「The Smiths」の一番最初の曲。わたしが人生で一番最初に聴いたザ・スミスの曲、「リール・アラウンド・ザ・ファウンテン」。何十年聴いていてもその歌詞の意味はさっぱりわからなかった。

ところが、クンダリーニヨガによるインナーチャイルドの癒しを経験してから聴いてみるとすぐに理解できた。
「ああ、これはインナーチャイルド解放の物語だ」

It's time the tale were told
語られるときが来たようだ
Of how you took a child
And you made him old
あなたがどうやって子供を連れだして大人にしたのか

It's time the tale were told
語られるときが来たようだ
Of how you took a child
And you made him old
あなたがどうやって子供を連れだして大人にしたのか
You made him old
あなたがあの子を大人にした

Reel around the fountain
泉の周りをまわって
Slap me on the patio
中庭で僕を叩きつけて
I'll take it now
今なら耐えられる
Oh
ああ

Fifteen minutes with you
君と一緒の15分
Well, I wouldn't say no
ああ、嫌だなんて言わないよ
Oh, people said that you were virtually dead
君は死んでいるも同然だと言われたけど
And they were so wrong
それは間違いだった

Fifteen minutes with you
君と一緒の15分
Oh, well, I wouldn't say no
ああ、嫌だなんて言わないよ
Oh, people said that you were easily led
君を導くのは簡単だと言われたけど
And they were half-right
それはあながち間違いでもなかった
Oh, they, oh, they were half-right, oh
ああ、それは半分本当だった

It's time the tale were told
語られるときが来たようだ
Of how you took a child
And you made him old
あなたがどうやって子供を連れだして大人にしたのか
It's time that the tale were told
語られるときが来たようだ
Of how you took a child
And you made him old
あなたがどうやって子供を連れだして大人にしたのか
You made him old
あなたがあの子を大人にした

Oh, reel around the fountain
ああ、泉の周りをまわって
Slap me on the patio
中庭で僕を叩きつけて
I'll take it now
今なら耐えられるよ
Ah, oh
ああ

Fifteen minutes with you
君と一緒の15分
Oh, I wouldn't say no
ああ、嫌だなんて言わないよ
Oh, people see no worth in you
だれも君に価値を見出さなかったけど
Oh, but I do.
僕にはわかるよ

Fifteen minutes with you
君と一緒の15分
Oh, I wouldn't say no
ああ、嫌だなんて言わないよ
Oh, people see no worth in you
だれも君に価値を見出さなかったけど
I do
僕にはわかる
Oh, I, oh, I do
Oh
僕はわかるよ、ああ

I dreamt about you last night
And I fell out of bed twice
昨晩君の夢を見て、2度もベッドから落ちた
You can pin and mount me like a butterfly
君は僕を蝶のようにピンで止めておくこともできる
But take me to the haven of your bed
でも「ベッドの上に避難させて」なんて
Was something that you never said
君が決して言わなかったことだ
Two lumps, please
瘤を二つお願いするよ
You're the bee's knees
君は最高だよ
But so am I
だけど僕もね
Oh, meet me at the fountain
泉で落ち合おう
Shove me on the patio
中庭で僕を押して
I'll take it slowly
ゆっくりと受け止めるから
Oh
ああ

Fifteen minutes with you
君と一緒の15分
Oh, I wouldn't say no
ああ、嫌だなんて言わないよ
Oh, people see no worth in you
だれも君に価値を見出さなかったけど
Oh, but I do
僕にはわかる
Fifteen minutes with you
君と一緒の15分
Oh, no, I wouldn't say no
ああ、嫌だなんて言わないよ
Oh, people see no worth in you
だれも君に価値を見出さなかったけど
I do
僕はわかる
Oh, I, I do
ああ、僕にはわかるよ
Oh, I do
Oh, I do
Oh, I do

ソングライター: Steven Morrissey / Johnny Marr
Reel Around the Fountain 歌詞 © Warner Chappell Music, Inc, Universal Music Publishing Group

「15分」は自分の中の感情と向き合う時間、「泉の周り」は膀胱周辺の第1、第2チャクラで、「中庭」はみぞおちにある第3チャクラ(丹田)だと推測する。 

「今なら耐えられる」
インナーチャイルドを癒すのは子供の時に向き合えなかった感情に向き合い、受け入れ、認めることだ。それはなかなか辛いこともあるが大人になった今、覚悟があれば乗り越えられる。

「昨晩君の夢を見て、2度もベッドから落ちた」
夢の中では記憶と感情が整理される。

「中庭」で叩きつけられ「瘤を2つ」作る。
向き合う感情はひとつではない。

感情が消化され浄化されると自分への信頼が回復し自己肯定感が高まる。
「君は最高だよ」「だけど僕もね」、インナーチャイルドと和解した瞬間。

思考を落として意識を「泉の周り」に集中する。
「中庭」まで昇ってきた 「子供」(感情)を受け止め、解放する。

そうして連れ出された「子供」はめでたく「大人」になることができる。
わたしは専門家ではないが、自分の体験に当てはめてみるとぴったりはまる。

この歌はモリッシーの癒しの体験なのだ。彼もまた傷ついた子供だった。
自伝の最初の方で権威主義の教師たちからの体罰、父親から言われた冷たい言葉、両親の離婚のことなどが語られている。

印象的だったのは両親の離婚について本当にあっさりとしか書かれていなかったことだ。今でもあまり思い出したくないことなのかもしれない。両親の不仲で、間に挟まれた子供たちは深く傷つく。

多かれ少なかれ誰でも傷ついた子供の頃の思い出や記憶を持っているのではないだろうか。自分の中の傷ついた子供は影響力を持ち続け、行動に対しての制限や思い込みを作り、どんどん自分を本質からかけ離れた存在にしてしまう。

モリッシーがヨガをやっていたのかどうかは知らないが、インナーチャイルドを解放する方法は他にもある。カウンセリングやセラピーを受けていたのかもしれない。

彼が自分のインナーチャイルドを癒したことで本来の自分を生きられるようになり、彼の素晴らしい才能を発揮できるようになったというのは想像できる。

わたしは「リール・アラウンド・ザ・ファウンテン」をファーストアルバムの一番最初に置いたのは、モリッシーのわたしたちへのメッセージのような気がしてならない。

まずは自分の中の傷ついた子供に気がついて癒してあげないことには何も始まらないのだ。












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