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組織は、リーダーの在り方を映す鏡~リーダーが気づけば、組織も変わる

「光と影」という概念を軸に、リーダーの内面や在り方が部下にどう影響しているのか、これまでは一対一の関係性という文脈でお話してきました。しかし、リーダーの影響力は一対一ばかりでなく、一対多で広がっています。ここからは、組織リーダーが気づき、自ら変わることで、組織全体がどう変わっていくのかについて、具体例を挙げてお話ししていきますね。

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外資系企業で役員をしていたころ、私は人事やIT部門の部長などからなる7人のチームを束ねていました。彼らと私は非常に良好な関係を築いていて、互いに足りない部分を補いながら組織改革を進めていたのです。私は彼らの高い能力とコミットメント、チームワークに深く感謝して、彼らの協力なしではなにもできないと自覚していました。

しかし、その関係性は彼らとの間に限定されたものだったのでした。それぞれの部長たちに連なる部下たち、ひいては私の直接の管掌領域を越えて全社に広がる一般社員とは、断絶感がありました。

その理由を私は、「(新しい取り組みの意義などについて)管理職たちが、それぞれの部下にきちんと伝えていないから。しっかり周知し、理解させることを怠っているから」だと考えていました。「私はやることを十分にこなしている。一般社員の足並みがそろわないのは私のせいではない」と捉えていたのです。

労働組合との団体交渉の場などで、組合員から現状への不平不満をぶつけられると「どうして分かってくれないんだ」「私はこんなに頑張っているのに、なぜ責められなきゃいけないんだ」という怒りや悲しみがふくれあがりました。

「すべては、私自身の課題」

自分自身の失敗体験を振り返って、またコーチをさせていただいているエグゼクティブの方々のご体験を伺いながら、「組織が、そのリーダーの鏡」だといっても過言ではないと、今の私は感じています。

組織という鏡には、リーダーの在り方、影響力がすべて映し出されています。更に、例えば社長と工場、課長と派遣スタッフチームというように、リーダーと鏡との距離が遠ければ遠いほど、はっきりと、分かりやすい形でリーダーの影響が反映されるように思います。でも、鏡は遠くにありますから、そこに映っているのが自分の姿だと本人が気づくのは大変稀なことだとも思います。よほど意識して、「自分を見よう!」と目を凝らさなければ、何も見えないのが普通でしょう。

影響力の連鎖2-2

組織内の状態、組織の片隅で今起きていること、それらを全て「自分が映し出されたもの」として、「自分ごと」として受け止める範疇の広さ、深さこそ、リーダーとしての「器の大きさ」の現れではないかと思います。

そういう意味で、当時の私の器はとても小さかったと言わざるを得ません。

「運転席とバックシート」で大きく変わった山崎さん(仮名)

リーダーにとって、自分から遠いところで営まれた仕事の不本意な結果や、個々の部下の姿勢まで、すべてを「自分が映しだされた鏡」であるとして捉えるのは、とても受け入れがたく、辛いことだと思います。ここで、その辛さを乗り越え、ご自身はもちろん、組織そのものにも大きな変化をもたらした、クライアントの山崎さん(仮名)をご紹介します。

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