「黒手組」（江戸川乱歩）

あらすじ

　「私」の伯父の娘が誘拐されてしまいました。誘拐したのは「黒手組」という有名な盗賊団のようです。伯父は身代金の一万円を払うことにしましたが、約束の時間になっても娘は開放されません。

　警察へ連絡をしましたが、伯父は安心できないので「私」を通じて明智小五郎に依頼をします。

　明智は翌日の朝早くから動き始め、二日間で娘を取り戻したと連絡がありました。なぜか千葉から電報を打っています。

　明智は事件の真相は、「黒手組」との約束で明かすことはできないと言います。伯父の屋敷を出たあとに「私」は真相を聞いてみると、実は「黒手組」とは関係のない事件でした。

感想

　誘拐事件と思いきや、娘が行方不明になったことは駆け落ちしただけという展開でまず驚きました。駆け落ち相手は信じる宗教の違いで屋敷を出入り禁止にされた人物でした。娘が自分で行方をくらましたのだからもちろん情報がありません。

　身代金の要求は書生が便乗した犯行でした。普段の行いは正直者で騙すようなイメージはありません。こちらは結婚資金に困っていたという事情があり、なんとかしようとして今回の犯行を思いついたようです。奇しくも二つとも恋愛が原因で起こった行動でした。

　明智の普段の様子がわかりました。朝に弱く、出不精のようで、あまり伝えることもしないようです。何度も「私」が振り回されそうな予感がします。