プラプラ堂店主のひとりごと⑬
〜古い道具たちと、ときどきプラスチックのはなし〜
ビー玉のうた
店の定休日、ニセコに来た。とにかく自宅から離れた所に行きたくなって。こういう時、ぼくはいつも、だだっ広い所に行く。札幌から車で2時間くらいでニセコに到着。ニセコはパウダースノーが世界中のスキーヤーたちに有名になり、急激に外国人が増えた。町はずいぶん様変わりしたようだけれど、自然は変わらない。羊蹄山の麓に、広い大地が広がっている。
羊蹄山は、富士山に似た容姿端麗な姿が「蝦夷富士」とも呼ばれる。ニセコをドライブしながらこの羊蹄山を見るのが好きだ。いろいろなロケーションで羊蹄山を見ることができる。東山花の丘で車を止めた。羊蹄山がきれいに見えるお気に入りの場所だ。ミルク工房やカフェ、写真ギャラリー、土産物屋なんかもある。羊蹄山の山頂には薄く雲がかかっていて、今日は全貌が見えない。でも、ここから見る空は、とにかく広い。芝生に座って、ぼんやりと山と空を眺めた。
ずっと昔の、母の泣いている姿が浮かんでくる。母の、父に対する愚痴を聞くのが嫌だった…。いつからだろう。母の話を聞くのが辛くなったのは。母を守らないといけないと思いながら、だんだん苦しくなったのはいつからだったろう…。ぐるぐるといろいろなことが、頭の中に浮かんでは消えてゆく。
シャボン玉 とんだ
やねまで とんだ
やねまで とんで
こわれてきえた
かぜ かぜ ふくな
シャボン玉 とばそ
小さい頃、母とよく歌った歌だ。少し寂しい感じが好きだったな。手をつないで散歩しながら、いろんな歌を歌ったっけ。ポケットの中で握ったビー玉からは、懐かしい歌が聞こえてくる。ぼくは小さい頃、ビー玉が好きだった。いろんな色のビー玉を集めていたっけ。そしていろんな所に隠しておいた。ビー玉を見るけるのがうれしかったんだ。そして、先日。大人になったぼくが、このビー玉と再会した。
ゆっくりと、波立つ心が静まっていくのを感じる。この感じ。
家の裏山の秘密の場所にいる時と同じだ。
あの頃のぼくが、今のぼくと重なってゆく。
気がつくと、風が冷たくなってきた。立ち上がって、伸びをする。散歩して、店のある方にも足を伸ばしてみた。直売所では、新鮮な野菜がたくさん並んでいた。取れたての野菜のみずみずしさに、思わず手が伸びた。久しぶりに料理がしたくなる。ぼくはカゴを手にして、野菜を選んだ。
ありがとうございます。うれしいです。 楽しい気持ちになることに使わせていただきます。 また元気にお話を書いたり、絵を描いたりします!