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ペットボトルはそのままで

親友と一緒にディズニーランドへ向かう新幹線の中。
2年前に結婚したあーちゃんとひたすらに話し続けたのがお互いの夫の話。

「皿洗いしてくれるのはいいんだけど、お皿を表向きに干すから乾かないんだよね〜」

「洗ってくれるだけすごいよー。うちなんて何にもしーひんで。こんなきちんとしてなくて、仕事大丈夫?って言ってしまったわ。」

お互いの家での話が、どれも自分の家での出来事のようで、おもしろくてお喋りが止まらなかった。
細かいことを気にしない性格も似てて、嫁がすることに何も言わないところまで一緒だった。

男ってそういうもんなのね〜と思っていたところで、あーちゃんが次に出した話題に私の心が躍った。

「飲み終わったペットボトルもそのままで、台所に並べてあるねん。いつまで置いとくつもりやろうと思って放っておいたんやけど、ずっと置いたままでさ。結局私が捨てるしかないねん。」

「え!!!めっちゃ一緒!なんであれ並べるねんろうなぁ」

うちだけだと思ってた出来事がまさか親友のあーちゃんも経験していたなんて。しかもいつまで置いたままなのか試しているところも一緒。あの気持ちを共有できるなんて嬉しい。


1年ほど前に結婚して、一緒に住み始めた私と夫さん。初めて住んだ家のキッチンは、カウンタースペースが広くて、電子レンジを置いていたくらい。寮から引っ越してきた私は、広々とした洗い場にルンルンだった。

違和感に気づいたのは、洗い場の右手にある、手の幅ほどのカウンタースペースに並べられた3本のペットボトルを見たときだ。つい最近も、ラベルがついたままで中身も水洗いされていないペットボトルを処理したのに、また並んでいるのだ。

「え、また?ペットボトル買いすぎやろ。しかも洗ってへんし。」

カウンターからの視界を邪魔するように並べられたペットボトルを見ていると、イライラが止まらなくなってきた。

これはたまたまじゃない。確信犯じゃなかろうか。
2人で住んでるのに、あなたが捨てなかったら私しか捨てる人がいないじゃないか。

「お前が捨てればいい」

並んだペットボトルからそんな言葉が聞こえてくる。

イライラがひどいと、夫さんの部屋に向かって投げつけてしまったこともあります。(生理前になると物に当たってしまうようになりました……)

このイライラを解決するには
「使い終わったペットボトルはラベルを外して、水で洗って乾いたらゴミ箱に入れてね」

と言わないといけない。私は誰に言ってるんだ?30代の男性にこれを言わないといけないのか?本当に?言うのも嫌になるほど、私には当たり前のことだった。

それでも言った。きっと言われる本人も嫌だろうなと思ったけど。素直な夫さんは、洗って干すようにはなった。でもなかなかゴミ箱には入れてくれない。スーパーに行った時にリサイクルへ出せるよう、袋を開けて冷蔵庫の前に置いてるのに、捨てられたことがない。


結婚して30年以上の母に、ペットボトル事件について話してみた。

自分にとって当たり前のことをやってくれなくて腹が立つと。

「男の人って見えてないのよ。」

「え、あの冷蔵庫の前に置いておいても見えないの?」

「そうよ。見えないの。見えると思っていても見えてないのよ、男の人には。お母さんは諦めたわ。

でも元気に仕事に行ってくれてるんでしょ?」

「うん。」

「それでいいじゃない。」

うん、そうだ。世の中には仕事をせずに、ギャンブルで借金背負っている人がいるかもしれない。夫さんは遅刻も欠勤もせずに仕事に行ってるんだから十分か。なんだかペットボトルを捨ててくれないとかでイライラしてるのも小さいことのように思えてきた。
真面目に仕事に行ってるんだからいいか。

晴れた日の朝。ベランダに置いているクロスバイクで仕事に行く夫さん。雨で濡れてたからと、黄色の雑巾で拭いた後、私の元にやってきて
「これ置いといて」と渡してきた。

(いや、これ誰が洗って片付けるのさ。)

「どこに置いておくの?」

「その辺に。」

その辺に置いた後誰が片付けるんだよ!!

もう!私の足元に黄色いそれをポトンと落とした。


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