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【読書日記】11/13

『詩の淵より』は以前から読みたいと思っていた詩集でした。作家で詩人だった高見順が食道癌の手術を受けた前後の心境を詩にしたものです。壮絶なものが多くて、読んでいると激しく心が揺さぶられます。

「ぼくの笛」という詩では、食道を癌のために切除したために、気管支が音を立てるようになったことを描いています。「ぴゅーぴゅー」鳴る笛の音がだんだんうまくなっていくとは、痛々しい表現です。同時に突き抜けたユーモアも感じました。

烈風に
食道が吹きちぎられた
気管支が笛になって
ピューピューと鳴って
ぼくを慰めてくれた
それがだんだんじょうずになって
ピューヒョロヒョロとおどけて
かえってぼくを寂しがらせる

この詩集を読んで、人間が死を目の前にして達観するのは難しいと思いました。いくつもの詩の中に、苦しみや悲しみ、怒りが出てきます。なんで俺だけがこれほど苦しまなければならないのか、まだ死にたくない、こんな人生はひどいといった感情です。

同時に澄み切った心情が表現されることのあり、その部分ははっとするような美しさがあります。

夢に舟あり

夢に舟あり
純白の帆なり
美しいかな
涙あふれる

血を吐くような思いで書かれた苦しみの部分があるからこそ、このような美しい部分が輝きます。この詩集を読んで、死が恐ろしいとか死にたくないと素直に言うのは、悪くないと思えるようになりました。否定的な感情でも、言葉で表現できれば、胸のつかえがとれるでしょう。同時に、上記の舟の詩のような澄んだ心境にもなれます。

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『死の淵から』が重かったので、気分転換に『おかんメール』も読みました。面白いと評判になった本で、読まれたことがなかったらお勧めです。読み始めると笑いが止まりません。同時に全国のお母さん方の愛情が伝わってきて、感動します。気に入ったメールをいくつか紹介します。

母に「地震大丈夫?」 返事は「私が鎮めた」

これには大笑いでした。母の力は偉大です!

母「ゴールデンウェーブは帰ってくるんですか?」

いまだにスマホのメールを打つのが苦手な私も、こんな間違いをしそうです(苦笑)。子供に帰ってきて欲しい、という切ない願いも感じます。

母「コカインランドリーに行ってきます」

これも笑いました。一字増えただけで、大変なメールになってしまいます。

私が一番好きなのはこれです。

一浪して合格した人がお母さんに写メールを送ったら来た返事。

「はははうれし しゃしんはみれない きょうはすし いえい」

子供の合格を喜んでいるお母さんが、一生懸命メールを売っている様子が浮かびます。最後の「いえい」が可笑しいです。でも子供のことを思う親心が伝わってきて、じーんとしました。

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