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[処女は恥ずかしい?]処女の歴史⑨日本人の恋愛と結婚・1980年代の恋愛至上主義

こんにちは。40代で「彼氏いない歴=年齢」&「おひとりさま」の占い師(占いカウンセラー)・可憐(かれん)です。

前回は、1960~70年代の恋愛や結婚のスタイルを見ることで、処女の歴史を振り返りました(→前回の記事はコチラ)。
今回はその続き、1980年代の恋愛、結婚、処女の歴史をお送りします。


そもそもの理由

ところで、なぜ私はこのような「処女の歴史」なんてテーマで記事を書き始めたのか?

それは、
2024年5/20(月)、NHKの朝の情報番組「あさイチ」で、「性体験がないのは恥ずかしいこと?」が特集されていました。
そこで、
①特に恥ずかしいと思うのは、30代後半~50代前半の世代
②歌や雑誌、ドラマなどのメディアによって、「経験がないのは恥ずかしい」という価値観が植えつけられた
と言われていました。

それについて記事を書いたことがきっかけです。→その記事はコチラ

さて、その「あさイチ」で言われていた、
①「特に恥ずかしいと思う30代後半~50代前半の世代」とは、1970~89年頃の生まれ。
若い(20歳)頃は1990~2010年くらい。

その頃に、「やらはた「やらずに(初体験をせずに)二十歳(はたち)になる」)は恥ずかしい」という空気が蔓延していたようです。

そして、
②歌や雑誌、ドラマなどのメディアによって、「経験がないのは恥ずかしい」という価値観が植えつけられた

これについて、今回は特に「80年代の歌や雑誌、ドラマなど」を中心に見ていきます。

1980年代

テレビが流す歌

高度成長期(1950~70年代)を経て、メディアも発達し、お茶の間にカラーテレビが普及します。
70年代には10代半ばのアイドル歌手・山口百恵が性的ニュアンスのある歌を歌っていました。

そして、80年代に入り、87年には99%の家にテレビがあった。そんな頃、こんな歌が流行っていました。

1985年、フジテレビで「夕やけニャンニャン」というバラエティ番組が始まり、秋元康プロデュースで「おニャン子クラブ」という女性アイドルグループがデビュー。
おニャン子はAKB48のように、10~20代の女の子たち数十人が一斉に踊って歌うスタイルのグループです。

デビュー曲「セーラー服を脱がさないで」の歌詞は次のような感じ
「セーラー服を脱がさないで 今はダメよ 我慢なさって
セーラー服を脱がさないで 嫌よダメよ こんなところじゃ
(略)
友達より早く エッチをしたいけど キスから先に進めない 憶病すぎるの
週刊誌みたいな エッチをしたいけど 全てをあげてしまうのは もったいないから…あげない」

秋元は、過激な歌詞により普通であれば「セーラー服を脱がして」という好きな男子に身を捧げる女子の歌になるところを、それを逆に否定することで、女の子らしい初々しさや可愛さが出てくることを狙ったと語っている。

Wikipedia

なお、エッチとは、「変態」をローマ字書きしたHentaiの頭文字の「H」から取られ、性的に露骨でいやらしい人、好色な、下品なことについて使われていたようです。しかし、この歌から「エッチする=性行為をする」という意味を持ち始めた、とする説もあるとか。

40代の私・可憐はこの頃、小学生でした。小学校から帰って、夕方、テレビをつけるとしょっちゅうこの歌が流れ、街中などでもよく耳にしていました。

男性向け雑誌

「やらはた」という言葉があります。
「やらずに(性体験をせずに)二十歳(はたち)になることや、なった人」の意味で、男女ともに使われます。

「やらはた」については、以下のとおり。

言葉としての初出は1982年(昭和57年)の「月刊プレイボーイ8月号」であったが、広く一般に定着したのは『メンズノンノ』1990年2月号に掲載された「"20歳の童貞って恥ずかしい"というテーマを深く考え」という特集が組まれた1990年代ごろからと見られている。

Wikipedia

82年にこのワードが誕生したように、1980年代には、青年男子向けの雑誌が性をよく特集していました。

80年代の特徴は、一見セックスにギラギラしていなさそうな人達も、躊躇なくセックスに対する興味を表明するようになったところにあります。たとえばこの時代は、「ポパイ」や「ホットドッグ・プレス」といった青年男子向けの雑誌でも、セックス特集がしばしば見られるように。
昭和51年(1976)に創刊された「ポパイ」は、アメリカ西海岸などのファッション、ライフスタイルを紹介して人気を博した雑誌です。その後を追って創刊された「ホットドッグ・プレス」はデートマニュアルの類がよく載る「モテ」に熱心な雑誌でしたので、セックス特集もまだ納得できるところ。しかしおしゃれ派シティーボーイをターゲットとした「ポパイ」も、1980年代には、
「時代がエッチを求めてる」
といった特集を打ち出しているところを見ると、やはりセックスの時代であったことを感じずにはいられません。
(略)
「クリスマスイブはシティーホテルに彼女と泊まる」という行為が広がったのもこの頃で、クリスマスイブに処女を失う女性は珍しくなかったものです。

酒井順子『処女の道程』新潮社 2021年「『ツッパリ』の純情、『アンアン』の多情」

女性向け雑誌

1980年、女性ファッション誌『MORE(モア)』に「モア・リポート」が発表されます。誌上で行われた女性たちのセックスについてのアンケート調査で、以降、恒例企画となりました。

そして夏の風物詩となった『anan(アンアン)』の恒例企画「セックス特集」も、80年代半ばに登場します。

85年の特集で、読者アンケートによる「このひとならSEXしてもいい、SEXしたい男ベスト10」が発表されます。これは「抱かれたい男ランキング」の前身企画で、87年には「わたしが寝たい男ベスト20」のアンケート結果が発表されました。

特集「エロチックな気分」(84年)、「他人(ひと)のセックスについて、知りたい。」(88年)に続いて、日本の女性の性意識を変えた、とまで言われているのが、「セックスで、きれいになる。」特集(89年)。

『anan』側は、サイトで次のように述べています。

当時、女性誌がセックスについて取り上げること自体が衝撃的であり、まだセックスは隠すものではなく女性を美しくさせるものというポジティブな提案は大反響を呼びました。
(略)
この特集号が発売された1989年はバブル絶頂期。クリスマスのホテルは満室で、チェックアウト時に翌年の予約をするほどアグレッシブで、女性の性欲もオープンになってきました。が、同時に多くの女性が心の中で「自分の性欲やセックスは、普通なのだろうか?」と感じていた時代です。そんな女性たちが気になっていたセックスにまつわるあらゆる疑問を、ドクターと共に検証していく企画でした。

女性たちの性意識を変えたあの企画 – セックスで、きれいになる。 | 時代を映すanan | anan FES 2023 (ananweb.jp)

それまでセックス特集を組む女性誌も女性向けエロ本も多数あったが、『an・an』が革新的だったのは「きれいになる」ことを打ち出したことだった。(略)
この「セックスで、きれいになる。」は、賛否両論の評価を受けた。10代女性のセックス観に大きな影響を与える一方で、男性週刊誌は野卑な調子で紹介し、女性文化人たちは「打算的だ」と批判的な意見をテレビ番組や雑誌のコラムで発表した。

Wikipedia

「私はセックスできれいになった、痩せた」との読者手記が載るなどし、セックスは愛情の発露や生殖の手段であるのみならず、美容のための一手段だ、という新機軸を打ち出すのです。するとセックスをしていない人はきれいではない、という言説も成り立つようになり、女性達はますます「しなくちゃ」と思うように。
このように男も女も、「したい」「しなくちゃ」「しない方が変」という気運が高まり、セックス祭りのような様相を呈していた80年代(以下略)

酒井順子『処女の道程』新潮社 2021年「『ツッパリ』の純情、『アンアン』の多情」

こうして、紙の雑誌というメディアによって、「しなくちゃ」「しないとおかしい」と、男性も女性も性行為をすること、または早く初体験をすませることが、80年代にあおられていったように思われます。

月9とトレンディドラマ/マンガ

月9とは、フジテレビ系列で毎週「月曜9時」から放送されているテレビドラマのこと。

1988年に月9で、視聴者層を20代女性に絞ったラブコメディが制作されます。これがのちに「トレンディドラマ」と称され、他の局も同様のものを制作し、世にトレンディドラマブームが起こります。

「トレンディドラマ」は、都会に生きる男女の恋愛やトレンド(時代の流行など)を描いた現代ドラマ。代表する俳優は、「W(ダブル)浅野」といわれた浅野温子と浅野ゆう子、石田純一、柳葉敏郎など。

1991年、月9ドラマ「東京ラブストーリー」では、ヒロイン役の鈴木保奈美が「ねぇ、セックスしよ」と織田裕二扮する男性主人公に言うセリフが大きな話題になりました。

これは柴門ふみの同名マンガが原作。

テレビには規制がありますが、雑誌や書籍、小説やマンガなどの紙媒体は、それより比較的自由です。
岡崎京子や内田春菊などの女性マンガ家が、赤裸々な性描写をしたのも、80年代。

文学

小説などの文学には、それ以前から性描写や、処女喪失を描いたものはありました。
(明治44年1911年に、平塚らいてうが創刊した雑誌『青鞜』に、田村俊子の『生血』という、不本意な処女喪失を題材にした小説が掲載)
(→大正時代の「処女喪失」文学についてはコチラ

しかし、80年代に女性作家が描いたものは、ちょっと違ってきたようです。

完全にエポック・メイキングとなったのは山田詠美の作品でしょう。昭和61(1986)年に出された『蝶々の纏足』という作品のなかでは、主人公の女の子が処女を喪失する体験について描かれています。
主人公はそれまで、美しくそして自己中心的な「親友」の陰で、自尊心を踏みにじられてきました。ところがある日、愛する男の子との初めてのセックスを経験し、その瞬間、「あの子がまだ知らない喜びを、自分は知ってしまった」と優越感を抱き、それをきっかけに彼女は、「親友」の支配から抜け出すことができるのです。そこには、悲劇的なトーンや、被害者意識は一切ない。日本の文学のなかで女性が処女喪失を肯定的に表現した、最も早い例のひとつだと思います。

千木良悠子・辛酸なめ子『だれでも一度は、処女だった。』理論社 2009年
「コラム・専門家に聞いてみた②文学のなかの処女 文芸評論家・清水良典」

なお、80年代に「W(ダブル)村上」といわれて人気を博した作家が、村上春樹と村上龍。
村上春樹の『ノルウェイの森』は、69~70年の学生運動の頃を描いた作品で、87年に刊行されると大ベストセラーとなりました。性描写が多いことで有名。

つい数日前、X(旧ツイッター)に「村上春樹の『ノルウェイの森』はキモイ」と女性がポストしたことで、ちょっとした炎上状態になっていました。
ですが、これも、
69~70年の学生運動の頃は、性革命などが起こった時代であり、
80年代という「セックスすることをあおられる時代」の空気の中で読めば、令和の今とはまったく違った印象を持ったことと思われます。

(→70年代の性革命についてはコチラ

恋愛+セックス至上主義

なお、トレンディドラマは80年代後半~90年代前半にかけて制作されたドラマ群のこと。
そして「バブル景気」は、ちょうどその80年代後半~90年代前半といわれます。

バブル経済真っ盛りで景気のいい頃が、いわゆる「恋愛至上主義」と言われた時代です。
恋愛至上主義とは、「恋愛を人生における最高のものとする考え方や態度」(『精選版 日本国語大辞典』)です。
こうしてふりかえると、恋愛やセックスをすることをあおられているような様相も見られます。

60年代は、「結婚するまで処女であれ」という家父長制的な家制度の価値観がありました。
70年代にウーマンリブや性革命が起こりました。そこには女性に自由を、女性も性に対してオープンに、という女性解放の思想がありました。

70年代にはまだ親が厳しい家はあったようですが、それも80年代になると、「結婚するまで処女」「セックスは結婚してから行うもの」という従来の価値観は古くなり、女性も自由に楽しんでいい、性や性欲にオープンであっていい、と変化。

その結果、
「結婚+セックス」⇨「恋愛+セックス」
となってきたように思われます。

つまり、70年代に意識や価値観の変化があり、80年代はそれに拍車をかけた時代といえるでしょう。
結婚する前にセックスをするのも当たり前、セックスしたからといって必ずしもその相手と結婚しなくてもいい。複数人とセックスするのも当たり前、となった。

しかも、それが未婚の10代の若者にまで、歌やドラマ、マンガや小説などの影響によって、広がってきていたようです。

それはデータにも表れています。

データで見る経験率

◎婚前交渉を不可と考える人の割合
1973年:58%
1988年:39%
(NHK「日本人の意識」調査)

NHK 放送文化研究所が1973年におこなった「日本人の意識」調査でも、婚前性交を「愛しあっていればかまわない」とする回答は19%にとどまり、「結婚式がすむまでするべきではない」という回答が58%あった(NHK放送文化研究所 2015)。

日本性教育協会 | 研究事業について | 第8回青少年の性行動調査 (faje.or.jp)

10代の若者、高校生、大学生の性交経験については、以下のとおりです。

◎高校生の経験率
性交経験率(%)日本性教育協会
調査年度 1974年 1981 1987 1993 1999 2005 2011 2017
高校男子 10.2%    7.9   11.5   14.4  26.5  26.6  14.6  13.6
高校女子   5.5%    8.8     8.7   15.7  23.7  30.3  22.5  19.3

男女とも1970年代から80年代初頭まではほぼ横ばい
男子は1981年から2005年にかけて、
女子は1987年から2005年にかけて大きく上昇。

◎大学生の性交経験率
調査年度 1974年 1981 1987 1993 1999 2005 2011 2017
大学男子 23.1%  32.6  46.5  57.3 62.5  63.0  53.7  47.0
大学女子 11.0%  18.5  26.1  43.4 50.5  62.2  46.0  36.7
 
男女とも80~90年代を通して上昇し続けた。

(以上は、日本性教育協会 | 研究事業について | 第8回青少年の性行動調査 (faje.or.jp) より)

◎18歳から34歳までの独身男女の性交渉の有無
性交渉の経験がない男女、つまり「童貞と処女の割合」
1987年:男性約43% 女性約65%
2005年:男性約32% 女性約36%
(「出生動向基本調査」)

平たく言うと、80年代末から2000年代にかけて、日本の独身女性達は、今までになく「する」ようになってきたのです。
中でも処女率の減少が著しいのが、90年代までの時期でした。87年から97年までの10年間に、処女率は約22ポイントも減少しており、その後は2005年まで微減、ということになっている。

酒井順子『処女の道程』新潮社 2021年「処女の価値、ストップ安の時代」

このように、80年代後半から90年代を通して、全体的に性体験をする率が上昇していました。

おわりに

ふりかえると、60年代までは、それまでの家父長制社会で、
「恋愛のゴールは結婚である」「結婚するまでは処女」「結婚したら初めてのセックスをして出産をして子どもを産み育てるもの」
という「ロマンティック・ラブ・イデオロギー」のもと、「親が決めた相手と結婚」していた。

70年代に、女性解放のウーマンリブや性革命が起こると、古い価値観を拒否して、自由な恋愛や結婚を求めた。そして、性にも自由と解放を求めた空気がありました。
ただ、その頃はまだ「婚前交渉(結婚する予定の相手とでも、結婚の前に性交渉をすること)」は、世間体が悪い、はしたないことという価値観がありました。

そして、その後の80年代は、主にメディアによってあおられるように、若者は「恋愛とセックス」をするようになった。

それまで「結婚」に含まれていた「出産・生殖」にかかわるセックスが、
「好きだからする」「好きな人に処女をあげる、捧げる」「つき合ってるからする」「ただ興味があるからする」「好きだから、断ったら嫌われてしまうかもしれないから、本当はイヤ、したくないけどする」
というように、「恋愛」に含まれるようになった。
さらに、結婚するしないにかかわらず、未婚の10代の若者も、するようになってきたのです。

そこには、ほかに「みんながそうしているのだから、自分もしないと恥ずかしい」「みんなからヘンに見られる、周りから浮くのはイヤ」などの「みんなしてるから、する」という理由もあったでしょう。
 
この記事のトップ「そもそもの理由」で、
「NHK「あさイチ」の特集「性体験がないのは恥ずかしいこと?」で、
②歌や雑誌、ドラマなどのメディアによって、「経験がないのは恥ずかしい」という価値観が植えつけられた」
と言われていた、と書きました。
 
今回は、その原因である「80年代の歌や雑誌、ドラマなど」を振り返りました。

ところで、本当に「セックスをするとキレイになる」んでしょうか?
それについては、こちらの本をどうぞ。


さて、長くなりましたので、今回はここまで。
80年代のメディアの様子を振り返りました。
次も、80年代の「恋愛、結婚、処女の歴史」をお送りします。

つづきはコチラ

●参考文献
酒井順子『処女の道程』新潮社 2021年

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龍泉寺可憐|40代で「彼氏いない歴=年齢」&「おひとりさま」の占い師(占いカウンセラー)
新卒で出版社に勤務
親の介護&コロナで働けなくなってから派遣で図書館に勤務
ライターとしても活動
電話占い師として1年で老若男女のべ750人鑑定
現在、占いカウンセラーとして「彼氏いない歴=年齢」・「おひとりさま」の女性のお悩み相談に乗ってます

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