【1日1文献】在宅生活を送る筋萎縮性側索硬化症患者の コミュニケーションおよび社会的活動#筋萎縮性側索硬化症#社会参加#意思伝達装置

参考文献:在宅生活を送る筋萎縮性側索硬化症患者の コミュニケーションおよび社会的活動
筆者:小島 香今田 ゆかり森本 順子冨士 恵美子阿志賀 大和藤井 博之
発行日:2022年
掲載元:日本在宅医療連合学会誌 3 巻 (2022) 1 号
検索方法:インターネット
キーワード:社会参加意思伝達装置筋萎縮性側索硬化症コミュニケーション

【抄録】
目的:筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者の多くは在宅ケアを主としており,コミュニケーション支援は重要な役割のひとつである.在宅生活を送る ALS 患者を対象にコミュニケーシ ョンの実態を調査した.
方法:対象は ALS 患者 8 名とした.記録をもとに,身体機能,精神機能等の基礎調査を行った.次に,コミュニケーション手段の利用状況について ALS 患者へのインタビュー調査を行った.
結論:意思伝達装置の使用により精神状態の改善が認められた.しかし,対話相手による円滑さの違いや入力装置の操作に難渋していた.
考察:適切なコミュニケーション手段の確保により,ALS 患者の社会的交流やコミュニケーション機会の維持につなげることが望まれる.

メモ
・筋 萎 縮 性 側 索 硬 化 症(amyotrophic lateral sclerosis:ALS)は 50 歳代から 70 代にかけての 発症率が高く,進行性の一次および二次運動 ニューロンの障害を複数の部位で認める原因不明 の疾患である1).
・ALS の病勢の進展は比較的速く, 桃井らの 1985 年から 10 年間の ALS 患者 698 例 の調査では発症から死亡までの期間は平均 40.6 カ月であり,気管切開や人工呼吸器装着例では平 均 49.1 カ月,行わなかった例では平均 35.8 カ月 と報告されている2).

・体や目の動きが一部でも残存していれば,適 切なコンピューター,マルチメディア,意思 伝 達装置及び入力スイッチの選択により,コミュニケーションが可能となることも多い.
・症状が進行する前にあらかじめ,どのような治療法を 選択するかについての話合いを,早めに行うこ とが大切となる1).
・コミュニケーション機器の 導入にあたっては,コミュニケーション手段の 選択と変更時期についての検討が必要となる. 
・井村は,機能に合わせた機器の選択ができるよ う,ALS におけるコミュニケーション機器の種 類と選択,意思伝達装置の導入に向けた ALS に おける時期別の対応について報告している7).
・しかし,コミュニケーション機器の導入に限ら ず,支援がスムーズに進まないことも多い.
・それには,年齢や性別,動作能力のみでなく,環 境因子や精神面の問題も少なからず関わってい ると考えられる.
・また,コミュニケーション支 援や機器導入による効果や社会参加の状況については,現状では 必ずしも明確ではない

・意思伝達装置を使用 していく上では,医療・福 祉職の専門知識の不足 や病態の進行に伴うデバイスの調整が障壁となっ て,日常的な活用がされづらい場合があることが明 らかとなった.
・関連する専門職としては,作業療法 士,言語聴覚士,義肢装具士,リハビリテーション 工学技士等が挙げられるが,十分な教育体制が 整 備されておらず10),在宅療養患者に対応できる者も わずかであるといわれている11).
・近年,人が体を動 かそうとした際に,脳から筋へ送られる生体電位信 号の検出や脳内の血液量の変化を測定することによ り,意思を伝達することができる生体現象式の装置 も出てきており,絶えず新しい機器の情報を収集することも重要である.

・今後,ALS 患者のコミュニケーションや社会 活動を充実していくために必要だと考えることを 3 つ挙げる.
・1 つ目に,ALS 患者の多くが在宅で 生活をしており,訪問サービスを利用している.
・訪問サービスは,疾患や環境の個別性が高い.個 別性の高い各患者に対応する上で,幅広い知識を 得るには,個々の職員のモチベーションを向上さ せていく必要がある. 
・しかし,訪問介護職員は 少数のスタッフで居宅を往訪するため,施設での サービスと比べてきめ細やかな配慮が求められる が,賃金や労働条件は施設の介護職員と比較して不利な状況となりやすい17)
・さらに,訪問サービ スは零細事業所が多く18),訪問看護ステーション の経営の安定化には経営戦略やマネジメントも重 要とされる19).
・これらのことから,訪問を行うス タッフのモチベーションの維持向上のためには, 訪問介護および訪問看護ステーションでは,経営 の安定と同時に,職場環境の整備や業務の明確化, 情報共有の工夫,教育体制の仕組み作り等の業務 改善を進めていくことも大切である20).
・今後,地域包括ケアシステムの構築を目指すためには,訪問サービスにおける職員の賃金や ICT の活用等 による業務効率化といった見直しも求められる.  

・2 つ目に,介護保険サービスの利用料は家庭環 境によっては患者の負担になる場合がある.
・反面,サービスを受けたくても,介護サービスは単 位制限があり受けられない場合もある.
・特に本研 究で調査した ALS 患者のコミュニケーション能 力の維持には,機器の操作やコミュニケーション のリハビリテーション専門職である,作業療法士 や言語聴覚士の介入が望まれる.
・これらは,ALS 患者にとって機能や社会的なつながりの維持のた めに重要なサービスであるものの,地域における 担い手が少ない.
・また,ALS 患者が在宅生活を 送るうえでは訪問介護や訪問看護といったサービ スが優先されやすく利用に至らない場合もある. 
・地域に専門職を増やすためには,訪問看護ステー ションのみでなく,診療所へのリハビリテーショ ン専門職の配置も有効であると考える.  

・3つ目に,意思伝達装置の導入にあたっては専 門職が早期に問題に気づくことと,問題に気づい た専門職が意見書を作成する医師に相談ができる 環境が必要となる.
・現在,ICT を活用した情報 共有は進みつつあるものの,まだ情報共有を行え る環境が整っているとは言い難い.
・今後,在宅の 連携を進めていくことも課題である.

参考URL:
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jahcm/3/1/3_3.1_44/_pdf/-char/ja

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