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夏八木 秋成
2024年6月1日 01:50
前回のお話はこちら第一話とあらすじ(3)③ 控室に入ると、そこには三崎奈津子が座っていた。彼女をひと目見るなり、私は意気消沈選手権優勝が確実となった。 三崎奈津子の前髪は眉毛のすぐ上で揃えられていて、緩くウェーブの掛かった黒いロングヘアは胸を隠すように前に垂らされていた。テーブルに置かれた手には左薬指に小ぶりな婚約指輪がはめられていて、手のひらの半分を隠すくらい長いブラウスの袖のレ
2024年6月28日 19:44
前回のお話はこちら第一話とあらすじ(4)④ 休日のほとんどは、家の中か公園で過ごすことにしている。 式場カメラマンという仕事が決して嫌いなわけではないけれど、私にもそれなりに撮りたい写真というものがある。 もちろん、写真家として活動を続けている高校時代の写真部の同級生なんかとは違って、私の中に芸術家気質というか、何某かの拘りや譲れないものというものがあるわけではないのだけど、仕事
2024年6月29日 02:09
前回のお話はこちら第一話とあらすじ(5)⑤ ひと通り三崎奈津子の撮影を終え、私はそのままD2控室へと向かった。 甲本は着替えを終えているだろうか。ついに対面の瞬間が訪れるのかと思うと、私の唇はグロスを塗っているにも関わらず急速に渇いていった。 低めのヒールがコツコツと音を立てて、私の心を更に煽ってくる。まるで自分の脚ではないみたいに、スピードが増していくのを制御できずにいた。「