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夜が特別だった頃
アニメ『よふかしのうた』の放送が始まりましたね。
このアニメは、不登校児の中学2年生である夜守コウが、とある深夜に初めて親に黙って外出するところから物語がはじまります。
自分は、原作の第1巻が出たくらいの頃に、作者のコトヤマ先生のTwitterに第1話がアップされていたのを読んたのが最初の出会いでしたが、冒頭部分での夜守くんの夜への興味の持ち方を見て、とても懐かしい気持ちになりました。
というのも、それこそ自分が夜守くんと同じ年齢だった頃(14歳だから今でも同い年なんだけど)、夜というものに思いきり溺れてみたい願望があったからです。
もともと、それ以前から、夜の雰囲気そのものが好きでした。夏休みの花火大会の日など、いつもより遅い時間まで外に出て、蒼さの深まる空を眺めていると、なんともいえない高揚感があって。
あと、家は1階だったけど、おばあちゃんちはアパートの3階で、ベランダから夜の阪神高速道路を走る車たちのライトがたくさん見えたので、それを見るのも好きでした。
早よ寝ろやと言われながらも、夜を流れる車たちをずっと眺めていたかったのです。数分後にはつまみ出されて、部屋の灯りを消されて布団に突っ込まれて強制終了でしたが。
もう少し大きくなると、習字教室に行った帰りに、わざと家とは逆方向へと自転車を漕いで高架道路のあるところに行き、そこから見えるラブホテルのネオンを楽しんだりしました。
当時はラブホテルが何をするための場所なのかよくわかっていませんでしたが、確実にふつうのホテルではないとは勘づいていたので、お城を模したやたらにオサレでギラギラした建物が、実に妖艶に映りましたね。
さらには、リアル中2の頃、近所に走り屋の方々がリアルに『頭文字D』ごっこをするカーブがあったので、それを見に夜に家を飛び出して怒られたり……。
自分でも謎なくらいに、夜への執念が深かったのです。でも、それも10代の頃だけでした。
大人になってから、午前2時の掃除中のコンビニに行ったり、カラオケ店に朝までいたり、上司に引きづられて夜のお姉さんとお話するお店に行ったりしているうちに、夜の本当の姿を知ってしまい、執念は薄れていきました。
夜は特別なものでもなんでもなくなり、朝は予想以上にあっけなく来るものであり、深夜のコンビニの近くにはビールの空き缶とお菓子の空き袋しかなく、夜のお姉さんと対等になるには財力とトーク力が必要だという現実を学んだからでしょう。
子供の頃に憧れた大人の世界は、そんなにたいしたものではなかった。
しかし、自分がまだそういう世界を知らず、ただただ純粋に夜が好きだった頃のことを、夜守くんは思い出させてくれました。
なにせ、中学生の夜守くんが、夜中に外出して初めてやってみたことといえば、近所の誰もいない公園でブランコを思い切り漕ぐという行為。別に夜じゃなくてもできるだろ、それ。
でも、夜というものがまだ珍しい中学生にとっては楽しいんだよなあ。むかし、自分がただのラブホテルの景色で喜んでいたように。
そこから夜守くんは、フラフラとアルコール自販機のボタンを押して、缶ビールを買おうとしてしまうのですが、アルコール自販機が稼働しているということは、まだ21〜22時あたりの時間帯。
大人の視点から見れば、たいして深夜でもない。
プロの呑み歩き主なら、むしろこのあたりからてっぺん(午前0時)までこそがメインディッシュなんじゃなかろうか。
作中では、早い時間から出来上がって、バス停のベンチで座っているうちに限界が来ちゃったおじさんも出てくるけど……。
夜守くんよりも、酔っ払いのおじさんたちのほうが自分と年齢が近くなった今(いや14歳なんですけども)になってこのアニメを視ると、もう夜があんなに魅力的に映ることはないのかなあ………などとセンチメンタルな気分に浸るのでした。
そして、よわない麒麟堂をグビグビと飲むのでした。
よわない麒麟堂はいいぞ。ノンアルコールでもちゃんと飲みごたえがある。よわないので二日酔いにもならない。それが大人の夜の過ごし方というものです。
サウナはたのしい。