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きったねえ暮らしに銭湯を

毎朝のように耳掃除をする習慣があります。

枕元に綿棒を忍ばせているので、起きてすぐに手に持つのはいつも、スマホか綿棒。寝起きの状態で耳を掻き掻き、いやあ今日も大量だなあとか感慨に耽ります。汚くてすみません。

そして、無心でゴミ箱に使用済みのそれを放り投げる。

ここでゴミ箱にストライクを決められるか、ファウルになってしまうかでその日の運勢を占います。

最近は布団を大きく振り被りながら寝転んだ状態でプレイボールに挑むので外しがちで、いまいち戦績が良くなく、しばらく使用済みのそれがマウンドに転がったままのこともしばしば。

汚くてすみませんが、もちろん後で床は拭きますので許してください。余分なティッシュの使用がSDGsに反していることについては謝ります。すみません。

ちなみにここ3日くらいゴミを回収所に持っていっておらず玄関に置きっぱなしなので、理論上は3日ぶんのゴミを世に出していないことになりますので、そういう意味ではSDGsに貢献しているといえます。

それはともかくとして、ここ数年は例のアレの蔓延もあり、手洗いや消毒をこまめにするようになりましたが、以前は酔っ払って帰宅した日なんかは、手も洗わず、風呂にも入らず、歯も磨かず、布団にも入らず床で寝るなんていう、ドリフの皆様の教えをガン無視した生活を送っていました。

ファッションではないただの劣化で穴が開いたジーンズを穿いてグランジ系を気取る始末。スメルズ・ライク・ティーン・スピリットなんてオシャレなものではなく、ただの臭い匂いしか漂っていませんでしたね。なぜだ……。清潔について語るはずが、どんどん汚い方向に進んでいく……。

まあ、まさかそんな自分が毎朝のように耳掃除をするようになるとは思いもよりませんでしたね。

例のアレによって、起きた時の手洗いが習慣になり、手を洗ったらついでに顔も洗うかというノリになり、顔を洗ったらついでに耳も洗っておこうという経緯でそういう癖が付き、次第に順番が替わって、洗面所まで行かなくてもできる耳掃除を最初にするようになりました。

それまでクッソきったねえ耳をイヤホンに押し当て、クッソきったねえ手でそれを触り、クッソきったねえ姿で外に出ていたのだと思うと恐ろしい。

あんまり過剰になりすぎるのも考えものですが、世の中には常にウィルスが蔓延しているものなのだという自覚が持てたことで、清潔に気を配るようになったのは良いことです。

手が綺麗だと触るものも綺麗になるし、顔が綺麗だと外の空気も綺麗になるし、鼻が綺麗だと呼吸が楽になるし、目が綺麗だとさっぱり目覚められます。

身体を清めることによって内面も清められ、生活が豊かになり、精神も安定します。では、最も手っ取り早く、完璧なお清めができる場所はどこでしょうか。

そう、銭湯である。

おい、いきなりだな。でも、実際にそうなのである。

感染対策さえしておけば何もこわくない。その証拠に、自粛期間を除いてここ3〜4年間、週に2日は銭湯に言っているが、例のアレはもちろん、ふつうの風邪にすら罹っていない。

確実に免疫力が高まっているのを感じる。なので自分はむしろこの時代だからこそ、外の温浴施設をおすすめする。

敷居が低くて広い休憩室があるスーパー銭湯、最初はアウェイ感があるが慣れればそれが味だと思えてくる昔ながらの一般銭湯、料金はお高めだがそれに見合うだけの設備が整っているサウナ施設、近くにあるのならば日帰り温泉でも良い。

風呂なんて家にあるからそれで充分だという気持ちもわかります。そもそもかつての自分がそうで、わざわざ金を出して風呂屋に行く意味がわかりませんでした。

しかし、一度ふらっと訪れたらわかる。大袈裟ではなく、マジで世界観が変わる。

先述のように自分はとにかくズボラ者ですので、風呂に入るという行為はただ世間体を気にして渋々やっているだけに過ぎないのだと思っていました。

もし、仕事をしなくても金が手に入って、家族や友達がひとりもいない状況になったらば、もう入浴などという無為なことはきっとしないだろうと。

第21回天下一武道会でクリリンと対戦したバクテリアン氏のごとく、象も嫌がるほどのクッソきったねえ痰を吐いて生きる遁世者になろう……とまで心づもりを決めていたわけではありませんが、要するに風呂とかめんどくせえ、冬は寒いし夏は暑いし、という気持ちでした。というか今でも、寝る前に家の風呂に入るのはめんどくせえです。

ところが、外出時にふらっと浴場のあるところに立ち寄ってしまえば、そのめんどくせえことを後でやる必要がなくなり、さらにはちょっとした旅情を味わえることまであります。ついでに漫画を読めたりテレビを視られたりもする。

身体を清潔にしつつ、精神の安定も図れます。家のほうが気兼ねなく過ごせるという利点はありますが、良くも悪くも、どんな構造でどんな雰囲気なのかを知り尽くしている家の中では、気分転換がいまひとつできないこともあります。

また、家の床や壁は自分が磨けば清潔にできますが、頭の中は自分だけではどうにもならないこともある。  

冬が深まるとなかなかやる気が出なくなり、きったねえ綿棒を床に転がすきったねえ自分が嫌になったりもしますが、そんな時は銭湯で身体も心も洗いましょう。

よし綺麗にまとまった。明日の朝こそはちゃんと回収所にゴミを持っていこう……。

サウナはたのしい。