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運動会でもらえるにんじん

昔は、9月の終わりから10月の中旬あたりというのは、小中学校で運動会が開かれる季節としてお馴染みでした。

最近では春先に行うことも多いらしく、あんまり秋の風物詩という感じではなくなったそうですが。

まだあんまり友達関係が構築されていないであろう4月に運動会をするのはどうなのだろうと個人的に思ったりもするのですが、文部科学省の学習指導要領によると、むしろ友達の少ない時期にそういった集団活動をすることで結束を固める目的があるのだそうな。

すでにクラスのグループが出来上がっている2学期の半ばにやるよりも効果的なのでしょうか。なんともいえないところですが、スポーツできない勢の観点からすると、むしろ最初に集団活動の中で迷惑をかけるせいで、友達づくりに支障が生まれそうという不安がある……。

そんな自分は、大縄跳びや組体操といった、昔ながらの運動会の目玉である競技が大の苦手でした。

よって、学校の運動会なんて、もちろん大嫌い。将来もし僕が総理大臣がなったら、絶対に消費税と大縄跳びと組体操は廃止しようと胸に誓っていました。

ただ、運動とかスポーツそのものが嫌いだったわけではなく、完走さえできればあんまりタイムを問われない持久走や、高い段まで飛べればかっこいいけど低い段しか飛べなくてもあんまり馬鹿にされない跳び箱などはわりと好きでした。

つまり団体戦がことごとく苦手で、勝とうが負けようが自分だけの問題で解決するため責任が軽い個人戦のほうが向いていたのです。そもそも他人との闘争心が全くないので。

ということを自覚したのは大人になってからで、いま思い返せば、運動会そのものというよりも、過剰に団結力を煽ってくる雰囲気が苦手だったのかも。

なので、学校の運動会に比べるとかなりゆるい、地区のPTAが開催していた運動会はそれなりに楽しんでいたと思います。ほとんどの競技が徒競走とか玉入れとかであまりチームプレイがなく、基本的にみんな別に勝っても負けてもどうでもいいと思っているように見えました。

実際はPTA運動会ガチ勢もいたのかもしれませんが、少なくとも自分は心の底からどうでもよく、ただただ走ったり玉を入れたりする行為をしていました。その後にもらえる駄菓子セットのために。

地元のPTA主催のイベントでは、毎回のごとく、帰りに大量の駄菓子がもらえました。参加賞のような感じで、必ず全員もらえます。

定番のうまい棒の詰め合わせや、チョコバット、よっちゃんイカ、キャベツ太郎、ビッグカツ、ベビースターラーメン、ヤングドーナツなどが、ビニール袋に入れられて渡されます。

上記はメジャーな駄菓子ばかりなので、ご存知の方も多いかと思うのですが、たまにちょっとマイナーな代物がゲットできることもありました。

たとえば、へんなガム。名前の通りに変なガムです。細長くてペラペラした形状で、さけるチーズを裂いた状態のような外観。いちおう麺状ガムというジャンルなのだそう。

レモン味・イチゴ味・青リンゴ味の3種類がセットで入っているのですが、その3つを同時に噛むとブドウ味になるという特徴があります。

口の中で科学実験をする理系駄菓子ですが、文系の自分には何がどうなってブドウ味に変貌するのかが未だによくわかりません。

あと、たぶん関西ローカルの、島田のラムネ。粒上のラムネなのですが、口に入れた瞬間に溶けて消えちゃうくらい柔らかい。食べるというより舐めるという感触のラムネ。

この2つもそれなりにインパクトがあるのですが、へんなガムは変だけどガムであることはわかるし、島田のラムネもやたら軽いけどラムネであることは見ればわかります。

それよりも、もっと難解な駄菓子があります。

「にんじん」です。

にんじん。そう、人参、ニンジンである。

ニンジンとは、中央アジア原産のセリ科ニンジン属の二年草であり、一般的に根っこの部分が食用とされ、日本全国のスーパーで売り出されており、2022年度の子供が好きな野菜ランキングでは第8位にランクインしている、あのニンジンである。

あのニンジンの名前をそのまま使った駄菓子がにんじんなのですが、パッケージは上部のヘタが緑色、逆三角形の本体が朱色に近い赤色と、完全に野菜のニンジンを意識した外観。

しかしヘタを取って中身を開けると、そこには大量の米粒のようなものがいっぱい。研ぐ前の状態の米粒のようにザラザラしていて、口に入れるとサクッとしたちょっと塩っぽい食感を覚える。感覚的にはポップコーンに近いです。

これはポン菓子と呼ばれるものらしく、米を膨らませて作ったものだそうな。なるほど。ポップコーンに近いと書きましたが、そもそも製法がポップコーンによく似ているのですね。

では、なぜにんじんなのか……。

駄菓子セットをぶら下げて、引っ張り過ぎて伸び切った体育帽の紐に指を引っ掛けていたあの頃は全くわからなかったし、先生に訊いてもどうせわからなかっただろうが、今の自分にはグーグル先生がいる。グーグル先生に質問してみよう。

……と、ここでにんじんがなぜニンジンなのかの結果を発表して綺麗に終わらせたかったのですが、調査の結果、にんじんがなぜニンジンなのかはわかりませんでした(ブログ風味)。

なぜにんじんかはわかりませんが、これからもにんじんには活躍してほしいところですね(ブログ風味)。

そして、よく考えたら、運動会でしか食べたことないなあ、にんじん。

もう運動会に参加することはなさそうなので、せめて久しぶりににんじんを食べて、運動会が秋の風物詩だった頃に想いを馳せるのもいいかもしれない。ダイソーの4個で100円コーナーにあるだろうか、にんじん……。


サウナはたのしい。