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温故知新キャッスルの建つ未来

ドラえもんのひみつ道具で欲しいものは何かと問われれば、それはもう世の多くの嫌な大人と同じように、スペアポケットとかもしもボックスなどと即答します。あるいはミニドラ。

でも、欲しいかどうかは別として、ドラえもんの持っている道具のなかでいちばんロマンがあるのは「風雲ドラえもん城」だと思います。

1987年に公開された映画『のび太と竜の騎士』に登場した道具(道具と呼ぶには巨大すぎるけど)で、要するに城です。うん、お城。あのドラえもんの白いポケットの中に、入っているんですよ、城。

ご存知のとおり、あのポケットの中は四次元空間で、無限に物を詰め入れられる仕様になっていて、そこにタケコプターとかどこでもドアとかころばし屋とか進化退化放射線源とかチョコボールとかやかんを入れているわけですが、巨大な建築物も入っているんですね。

進化してヒトとなった恐竜との攻防戦を前にして、唐突にドラえもんが城が出したの、よく考えたらシュール過ぎますが、あの城に泊まるのは楽しそうだなあという憧れもありました。

別のドラえもんの話では、1000万円で買えるというドイツの古城を下見に行くくだりがあるのですが、これもまたロマンがあって好きでして。

結局は野比家が城を購入することはありませんが、もし現代人の感覚であんな城に住んだらどうなるだろうと、集合住宅にしか住んだことのない自分はたまに考えていました。ていうか今でも考えます。

全盛期には日本全国に3000を超える城が建っていたそうですが、現在のこっている天守は12基のみ。

江戸時代に徳川幕府が一国一城令を出して、「国に城はひとつしか要らん」と言ったために、多くの城をデストロイ。

明治に入ると今度は廃城令が出され、城は陸軍が預かることになり、要塞に使えないところはデストロイして学校や公園に。城はとにかく維持費が大変で、公共施設に建て替えたほうが合理的なのだそうな。

やがて戦争が終わり、今では城は観光名所としての機能しかなくなりました。


もし自分が大金持ちになったら、鯉が泳ぐ池と松を植えた庭がついたガレージ最大12台収納可の豪邸に住みたいのですが、その豪邸を城にすることはできないのでしょうか。

数百年前と同じ仕組みの城は耐震性が心配だし、たぶん現代の建築法では認められないと思うので、外観は城だけど、中はふつうに電気も水道も通っていて、水洗式のトイレもガスで沸く風呂もあるというかたちにしてほしい。

利便性社会に甘えきった現代人でも住めるように。安土桃山時代の建築美と現代の文明との融合。できなくはないと思うのです。

実際に前例を、2年くらい前にこの目で見ましたから。それは、兵庫県にある尼崎城。

先述の廃城令、および第二次世界大戦中に火災に遭ったため、なくなってしまった城です。

しかし近年になって、地元の会社の社長さんが10億円の私財を投じ、見事な天守つきの復刻版尼崎城が完成しました。

復刻版のほうは外観こそ城ですが、中は博物館になっていて、鉄筋コンクリートで建築されており、エレベーターやスロープも設置。バリアフリー対応。

もちろん電気も点いているし、トイレはウォシュレットがついていました。まさに温故知新キャッスルと呼ぶに相応しい。 

あれができたのなら、中身が一般の一軒家みたいな城も技術的には造れそうな気がするのですが……、まあそこは素人なので、実際はよくわかりません。


もし物理的に可能なら、なおかつ自分に数十億単位の財産があるのなら、思い切ってやってみたい。マイホームは城。これぞ大和魂。



ちょっとググってみたら、実際にそれに近いことをしている工務店は存在するようです。ほう……こりゃあいい。

こういう建築が全国的に流行って、もう洋風の一軒家やコンクリート打ちっ放しの物件などは古いとなる時代が、……それは来てほしいような、来てほしくないような。

サウナはたのしい。