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ぼっち・ざ・ゔぃじゅあるろっく

アニメ『ぼっち・ざ・ろっく』が面白くて、アマゾンプライムで一気に第3話まで視てしまいました。

陰キャでコミュ障の後藤ひとりがバンドを始める日常系アニメ。  

3年間ギターを猛練習していたひとりは、流行りの曲を弾いた動画を上げていたらSNSで有名人になっていて、でも学校では相変わらず陰キャ……というところから物語が始まるのですが、ひとりの苦手な音楽は「青春コンプレックスをくすぐる曲」とのこと。

この「青春コンプレックス」は同アニメのオープニングテーマのタイトルにもなっていますが、簡単にいえば陽キャっぽい、パリピっぽい曲で、海とか祭りとか恋愛とか友情とかが絡む曲……よく考えたらオリコン上位のJ-POPの7割くらいはそうじゃね?という気もしますが、とにかくそういうものをくすぐってくる曲たち。

自分も何を隠そう、周りが175Rだロードオブメジャーだモンゴル800だと青春パンクで盛り上がっていた頃に、D≒SIREデザイアの『終末の情景』をゲットしてひとりで喜んでいたような陰キャでした。

摂津せっつ市にあるC-STATIONというクソマニアックな中古CDショップで'90年代のヴィジュアル系のCDを漁りまくり、実にぼっちざさいけでりっくばいおれんすくらいむおぶゔぃじゅあるしょっくなDK生活を送っておりました。

さいけでりっくばいおれんすくらいむおぶゔぃじゅあるしょっくとは、PSYCHEDELIC VIOLENCE CRIME OF VISUAL SHOCKのことで、X JAPAN(当時はX)のメジャーデビューアルバム『BLUE BLOOD』のキャッチコピーで、考案者はhideさんです。

元祖ヴィジュアル系バンドは誰なのかということについては諸説あり、今でも識者たちの間で論争が交わされているのですが、少なくともヴィジュアル系という単語の起源はほぼ間違いなくこれです。ちなみにそれ以前はお化粧系などと呼ばれていました。

ちなみに、メイクをしていれば誰もがお化粧系というわけではなく、デヴィッド・ボウイ氏やT-REXなどのグラムロックの影響を受けたバンド(初期のTHE YELLOW MONKEY、ZIGGYなど)や、コメディーとしての面も持つバンド(聖飢魔II、筋肉少女帯など)、あと、そういうジャンル分けが存在しなかった頃から活動していたバンド(一風堂、THE ALFEE、あとバンドじゃないけど沢田研二さんとか)もちょっと違う。

などという知識を今ならnoteでひけらかすことができますが、青春パンクブームの当時は脳内でまとめるに留めていました。音楽誌が書かないJ-POP批評というシリーズ本があって、それのヴィジュアル系編を熟読して学びました。V系大学があったら余裕で推薦を貰えましたね。

そこでやはり、世のバンドキッズたちと同じように、自分も楽器というものに興味が出てきました。だけど、うちの狭い部屋にはギターアンプなんて置けないし、何よりマンションなのでうるさいエレキは弾けない。ということで、アコースティックギターを買うことに。

そして教則本を買い、そこに載っていたスピッツの『チェリー』を素直に練習すれば良かったのですが、当時はまだ高校生で、思春期の残滓が体内に蓄積されていたものでして、まあわかりやすくいえばなんか拗らせていた時期なので、そんなギター初心者がやるような曲やってられっかという気分になったのです。ギター初心者のくせに。

そこで楽器店に赴き、とりあえずB'zとLUNA SEAのバンドスコアを買ってきました。まずはB'zの『ギリギリchop』のページを開けましたが、なにが書いてあるのかさっぱりわからん。

あまりにもわからんので、井上陽水さんのコピー歴30年のオトンに尋ねてみるも、オトンもわからんという。オトンもわからんならたぶん自分がわかるにはあと30年かかるということで後回し。

LUNA SEAのほうは、メンバー各自のインタビューつきで、演奏するにあたって具体的なアドバイスをしてくれていたのですが、みんなバンドで合わせること前提のことを発言していて、弾き語りへのアドバイスはありませんでした。バンドスコアなんだから当たり前だ。

で、やっぱり楽譜を見てもチンプンカンプンなのですが、とりあえずコードだけはわかるし、どう弾くかはともかく、コードだけをなぞってみようと考えました。

なんとか1曲だけ、自分でも弾けそうなものが見つかりました。『RA-SE-N』という曲で、サビ以外の大部分が延々と同じコード進行。これならできそう。ラクそう(超失礼)。

が、これがなかなかラクではありませんでした。延々と同じコードを繰り返す反復練習をしているだけなので、めちゃくちゃダレる。でもこれしか弾けないので、家でこればかり弾く日々。

その年の文化祭では、クラスの陽キャがモンパチことモンゴル800の『あなたに』を演奏して、大盛り上がりでした。まだ24歳くらいで生徒に人気のあった英語の先生はB'zの『Calling』を熱唱していました。

自分はあっちには行けないのだなあと思いながら、乾いた拍手を送ったのでした。『RA-SE-N』だけは(サビ以外)弾ける、という小さなプライドを持ちながら。

ちなみにこの曲はライブでは、CD音源にはないRYUICHIさんの「ラララ……」というスキャットが追加されるのですが、この時の心情を表現するとそんな感じですね。

あと、実際にちゃんとバンドでコピーするとなると、延々とほぼ同じコードながら転調が激しく、だいぶ難しいのだと今ならなんとなくわかります。無知ってこわい。


サウナはたのしい。