晴れ男の闘い

わたくし、昔から晴れ男として名を馳せておりまして、友達と遊びの予定を入れた日に雨が降るということはまずなく、前日まで台風が来ると予報されていたのにそれを吹き飛ばしてしまうなど、イケメン力と腕力では大差をつけられているものの、晴れ男力に関しては修二と彰にも余裕で勝てるくらいに地元じゃ負け知らず。

とはいえ、神ではないので天気を操ることはできず、予言者ではないので天気予報の言うことは聞くようにしており、雨が降ると予報されたら素直に傘を持って出かけます。

で、この、雨が降る、という予報のことなのですが。

おそらく多くの人の認識は、降水確率が高いイコール雨が降る、低いイコール雨が降らない、だと思います。降水確率93%なら、まあ降るんでしょうなという印象だし、降水確率3%なら、まあ降らないんでしょうなという印象。

すると困るのが、降水確率50%。フィフティフィフティ。どちらに転ぶこともあるという場合。

こんな時、私はどうするのか。傘を持っていくのか、持っていかないのか。答えは後者である。

晴れ男の名に懸けて、50%の可能性を試したいのである。

初めから勝ち目の薄い闘いならともかく、勝てそうな闘いに挑まないのは漢ではない。アントニオ猪木さんレベルの闘志は私にはないので、試合に出る前に負けることを考えることはあるが、勝てそうな気がする試合であればガンガン攻めていく。

調子がいい時のヤクルトの村神様みたいなスタイルですが、昨年の後半の村神様の調子があまりよくなかったように、本年度の私の晴れ男プレイの結果もあまり芳しくありません。

2月なんか、1週間ずっと連続で雨に降られるという惨敗。3月もまた、夏みたいな俄雨に豪速球で降られ、コンビニで傘を買った瞬間に上がられるという体たらくでした。完全に三振バッターですね。

最近は傘の値段もバカにならんのです。コンビニの傘は800円くらいする。ちょっと前まで690円くらいじゃなかったか？しかし、定価販売が基本のコンビニの傘の値段が高いのはまだ許せる。それよりも、100円ショップの傘はなんとかならんのか。

200円はまだ許すが、330円とか550円とかの値付けはなんなんだ。確かに、以前もちょっとお高めの傘はあった。しかし、お高めの傘「しかない」のは一体どういうことだ。100円ショップの矜持を忘れたのか。

などということを100円ショップの従業員さんに言っても仕方がないし、そもそもの元凶は増税メガn……、いや、某K田プライムミニスターさん、なので、この鬱憤は次の衆議院選挙にぶつけるとして、要するに私は、できるだけ傘を持ち歩きたくないし、傘を買いたくないのである。

なにせ、傘はかさばる。かさばるという表現は傘が語源なのではないかというくらいかさばる。あの複雑が過ぎる形状はなんとかならんのか。

しかし、ドラえもんが四次元ポケットの中身を断捨離している時に登場した｢さすと雨が降る傘｣もあの形状だったので、22世紀の技術を以てしても、傘に関しては、少なくとも外観上は現在からほとんど進化していないと思われる。

我々21世紀人は、来るべき22世紀に向けて、マミィ14号の開発よりも先に、邪魔にならない傘の開発を急ぐべきである。

ここでふと、レインコートなるものの存在が脳裏を過ぎった。あれなら服にカテゴライズされるし、服は日本国の法律においては、外出の際には絶対に着ないといけないので、着るものがひとつ増えるだけで、傘に比べれば精神的な負担はかなり小さい。

いつ雨に降られてもいいように、元からレインコートを羽織っておけば良いのではなかろうか。

しかし、空がカラッカラに晴れている23℃の日にレインコートをキメて街中を闊歩する人、というのは、一般的にいえば変な人である。そして、これもまた日本国の法律においては、任意であるとはいえ、あまりにも変な人は警察官に身分証明書の提示を求められるという問題がある。

多様化社会といいつつ、まだ総人口ダイバーシティというところまでは行っていないのだ。時代に乗り遅れている。

もちろん私は保険証も免許証も取得しているので、身分を証明することはいくらでもできるのですが、なにせ私は時代の最先端から加速する初期B'zリスペクトなので、もうほとんどの支払いをPayPayで済ませているゆえ、身分を証明する類のものが入っている財布というものを、あまり持ち歩かないのです。

一般銭湯のほとんどはキャッシュレスに対応していないので、いちおう現金は千円札を1枚だけ持っていきますが、細かく折り畳んでスマホケースの中に忍ばせればそれでいいので、傘と同じくかさばる財布はもういらない。

というか財布というのもどうなのだろう。あれも進化の余地があるのではないか。まず、なぜか大人になって歳を重ねるとそこそこ大きい財布を持たないと恥ずかしいという風潮があり、マジックテープ式だと初音ミクに文句を言われるし、そもそも貴重品をすべて同じところに仕舞うという発想が危険では……。

などとのたまっているうちに、いつのまにか雨が降ってきやがった。しかも今日は郵便局に行かないといけない。おとなしく傘と財布を持って出かけます。