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タイトルの流儀

タイトルをつけるのが好きだ。

書いた文章にタイトルをつける瞬間がとても好き。

書いた後につけることも、最初につけることもある。
最初につけるときは、たいてい書く前からタイトルが決まっている。
書いた後につけるときは、一点集中でタイトルが降ってくるのを待つ。
少し待ったら、手探りで頭の中をつついて、「あ、ここじゃなかった、ごめんなさいね」みたいなのを何回か繰り返して、何度目かにつついた場所に、これだね、というのがある感じ。

まつしまようこさんのこれに参加した。
上に書いたような、タイトルをつけるときの感触がとても好きだから、ひとの文章にタイトルをつけたことなんてなかったから、ぜひ参加したかった。

のだけど、その日、私にとっては驚くべきハードな日で、どういうわけかセントレア空港に行くことになっていて、義父の運転する車の助手席に乗っていて、夫は不在で、子どもたちは3人そろって相変わらずの感じで、つまり、搾取されまくっていて、落ち着いてタイトルを考えることもままならないし、夜は2秒で夢の中だった。
目が覚めて時計を見たら朝の4時半だった。

ようこさんはたしか締め切りは当日中って言ってたよね、と思いながらもパソコンを立ち上げて、私なりに精神を統一して、

「わたしの趣味は、蛍光ペンでだどる旅」

というのを提案させていただいた。

個人的には結構気に入っている。

残念ながら採用には至らなかったのだけど、noteのタイトルをじっくり腰を据えて考えてみると、なんにも考えていないようで意外とタイトルに偏った好みがあるらしい、と気がついたので書いてみる。

①みじかい
昨今のweb記事の逆行感が否めないのだけど(解像度を高めるためであるとか、SEO対策であるとかで長めが主流)、個人的な好み強めで短めが好き。
多分これは、SEOライターをやっていた反動のような気がする。
情報系の記事の場合、タイトルは本分の要約でなくてはならないし、キーワードがとても重要になるから必然的に長くなるし、タイトルそのものの情報量が多い。
ただ、それをやってしまうと、PVにはつながるけれど、タイトルや見出しで要点がだいたい把握できてしまって、本文を丁寧に読み下してもらえないような気がしてもやもやしていた。
なので、その反動で解像度が低い、本文を読んでタイトルの答え合わせをするようなものを好んでいるのだと思う。
あとは、スマホビューで最後までおさまるほうがビジュアル的に好きというのもあるかも。

たぶん影響を受けているのはこのあたり。

太宰治の短編集なのだけど、目次に並ぶタイトルがどれもこれも素晴らしすぎる。
特に私が好きなのは、「畜犬談」と、「姥捨」、あと「黄金風景」。
「皮膚と心」と「おしゃれ童子」もいいんだよね。(つまりほとんど)

「畜犬談」はほんとうに圧倒的だと思っていて、「畜」「犬」「談」の3文字すべてに、文字が持つ意味をはるかに凌駕するくらいの、そこに並ぶ理由がある。
本文を読むと、ますます「畜」も「犬」も「談」もすべて愛おしめるくらいに、大切な文字なのだ。本質をすべて汲んだスペクタクル造語。大拍手。

遠く及ばないけれど、この路線でつけたタイトルがこちら。

②異質のものを組み合わせる

出会いそうにない単語どうしを組み合わせることで、その違和感から耳にも目にも残ると思っている。
違う属性の単語と単語同士がそれぞれ違う世界観を呼んできて、世界が広がる感じがする。

これも、完全に好みの問題。

私の中で最高タイトル選手権第1位。
「燃える」「スカート」「少女」ですよ。
やばくないですか。
タイトルだけで白ごはん3杯いけちゃう。痺れる。好き。好き。
特に、この「燃える」と「スカート」、の出会いが最高。

少女のスカートがなぜ、燃えたのか、燃えたその先が示すものは、タイトルが示す本質に行きつくその旅をアテンドしてくれるエイミーが大好き。
10年以上前に出会った本だけれど、変わらずずっと大好き。
背表紙がそこにあるだけで、嬉しくて幸せ。

あとは、川上未映子さんの「世界クッキー」なんかも同じく大好きなタイトル。
あとあと、江國香織さんの「落下する夕方」も最高に素敵。

察しのいい方はもうお気づきかおしれないけれど、これとかもタイプで言うとそう。

大きく分けると、こんな感じ。

前置きがうんと長くなってしまったけれど、今回、提案したタイトル「わたしの趣味は、蛍光ペンでだどる旅」、も事務的な「蛍光ペン」と、ロマンチックな「旅」を出会わせたかったのでこの仕立てになった。
「たどる」は、最初に読んだ時点で、私の中で真ん中にあった単語なので、できれば入れたかった。動詞は想像力を掻き立てと思っている。
語感もすっとすぼむ感じで余韻があって悪くないな、と思った。
ちょっとひねりが足りないかな、とも思ったのだけど、もし「私がつけるなら」ひねりすぎないだろうな、とも思ったので、これで提出。
わりと主題の「ようこさんの趣味」に対して、本質を刺したつもりでいる。

みなさんのタイトルも、それぞれ、なんだか普段のnoteのタイトルの雰囲気と重なる部分があって、ああ、きっとみんなそれぞれ自分なりの流儀があるのだろうな、と嬉しくなった。

ねおさんはウェブライターっぽくてねおさんらしかったし、カエデさんはちょっと少女っぽくて、カエデさんらしかった。ありのすさんは現実的で堅実なところがありのすさんらしかったし、ミユキさんは深く丁寧に掘られている感じがnoteのままだな、と思った。

そして、採用されたイリーさんのタイトル、丁寧でロジカルで、仕事の早さといい、全面的にこちらもやっぱりイリーさんだった。
お見事!

みんなのタイトルをそれぞれ読んで、「ぽい!!」と、ひとつひとつパズルのピースがはまる感じが気持ちよくて読んでいて、とっても楽しかった。

ようこさん、わくわくをありがとうございました!
(サポートまで…ううう。そして、ルミさん…観客席からのサポートありがとうございました!!)

また読みにきてくれたらそれでもう。