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脂肪がほしい

わりと真剣な悩みなのだけど、私は痩せていて、太ることがどうやらできない。
161㎝ の身長に、体重は43㎏ くらい。
くらい、というのは夏ごろから体重を測らなくなってしまったから。
最後に測った時の体重が43㎏ で、その時に、また体重が減っているという事実に打ちのめされてしまって、それきり体重計に乗ることができないでいる。
そもそもの骨格が細くできているらしく、私ははっきりと華奢なのだ。
結婚指輪のサイズは4号で、左手の小指に関しては0号だ。
骨格が細いことも手伝って、私の体は体重計が差す数字以上にやせ細って見えてしまう。

夏に43㎏ という数字を見て、あまりのショックに、まさかと思われそうなのだけど、食事がのどを通らなくなってしまったのだ。
こんなに頑張って食べているのに、なぜなおも体重が減るのか、とかなしくなってしまった。
こんなにめきめき痩せていてはそのうち身体がなくなるんじゃないの、どこまで痩せてしまうの、もう嫌だ、ふっくらした艶んとした包容力のある女性になりたい、うわん。そんなことを考え出したらいろんなことが不安になって少しずつ食事が摂れなくなっていった。
食べられないともちろん焦る。
どうしようまた痩せてしまう、そう思うとさらに不安が募って食べられなくなる、の繰り返しで悪循環だった。
今思うと心身ともに疲労していたんだと思う。今年の夏は暑かったしな。
因みに、これ以上痩せたら困るとおろおろする私に、お医者さんは経口栄養というひと缶に栄養がぎゅっとつまった濃厚をさらに凝縮させたような液体を処方してくださったんだけども、人生で経験したことも無いような明らかに限度を超える濃厚さで、とてもじゃないけれど飲めなかった。
コーヒー味が飲みやすいですよと言われたけれど、いや、味がどうとかの問題じゃないよ、という代物だった。

私はじきに食欲を取り戻しはしたもの体重計はいまだこわくて乗られない。
増えていたら油断してまた忙しい朝なんかに朝食を抜いてしまいそうだし、減っていたら減っていたでもちろんまた、落ち込むのだ。
風が冷たくなってきて、骨身に染みる、と心から思う。脂肪がほしい。
SNS で「太った」と言う人を見ては、何を食べたのか教えてくれないかなと本気で思っているけれど、不躾すぎる質問なので言えたもんじゃない。

タイトな服は痩せた体を強調してしまうし、かといってゆったりとした服はがばがばするから余計に痩せて見える気がする。
スカートはウエストで止まらず、すとんと腰骨に乗っかるし、流行りのハイライズのパンツも同じ理由でハイライズにならない。
痩せている人はどんな服でも着こなせるというのは真っ赤な嘘だ。
サイズの合う服に出会うのはとても困難なのだ。

もちろん、食べている。
というか、人並み以上に食べているのでは、と思う。お肉も好きだし、甘いものも好きだ。
つくるのも食べるのも好きだから、食事には時間も労力も割いているほうだと思う。一般的な一人前では「足りないな」と思うくらいにはよく食べる。
なのに太られないからいちいち落ち込むのだ。
燃費の悪すぎる身体が、蓄えることを知らない身体が、なんだか欠陥品のように思えてしまう。

贅沢は言わない。寒さが身に沁みない程度には、貧相に見えない程度には、人様に心配されない程度には、太りたいと思う。
全身にふっくらと脂肪を纏う日を夢見て、今日も私は食べるのだ。

#エッセイ #肥る #太る #食べる #からだ

また読みにきてくれたらそれでもう。