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スペインからノルウェーに戻る、鉄道で -1日目-

去る今年の6月初旬、出張先のスペイン・マドリードからノルウェー・ベルゲンまで鉄道で戻るという同僚の誰もが挑戦しようとも露ほどにも思わない旅程を組んでみた。特に途中に立ち寄りたい街や観光名所があるわけでもなく、車窓からの流れゆく景色を見る時間にお金を払うだけの旅。

欧州の鉄道に乗る際には我々異邦人の味方ユーレイルパスなるものがあるが、今回は確実に席を確保するべく各乗り継ぎ区間で各鉄道会社の正規の切符を買うことにした。火曜日の朝にマドリードを発ち、ベルゲンには土曜日の早朝に到着。今回はその鉄道旅について書いてみる。

マドリード〜バルセロナ

旅の始まりはスペインの首都・マドリード。

マドリード・アトーチャ駅にて。

予約した列車は8時5分発のマドリード・アトーチャ駅発、バルセロナ・サンツ駅行きのiryoという高速列車。このiryo、2022年の11月に登場した列車らしい。スペインにはRenfe(スペイン国鉄)やSNCF(フランス国鉄)の子会社が運行しているAVE/AVLOやOUIGOという高速列車がマドリード・バルセロナ間を始めスペイン全土に網を張っているが、iryoはそのひしめき合う高速列車群に突如現れたイタリアからの刺客というわけだ。

車両はイタリアの高速列車Frecciarossoで使われているものと同型のもので、完全に赤い彗星・シャ◯専用(動画1参照)。最高時速はスペイン国内では300km/hに達するのでマドリード周辺の近郊列車の3倍は速く移動できるという点でもやはり赤い彗星。

この列車には3つの座席区分があり、今回は最も財布に友好的なInicialを予約。1ヶ月前の予約でわずか31ユーロ。iryoは言うなれば格安高速列車に分類されるが日本の東京・大阪間を数千円で高速移動できると考えると申し訳ないほど安い。動画見ていただければお分かりだが、最安の区分でも赤系の色に統一された車内は一切の陳腐さを感じさせることのなく、座席も程よく快適。今回の列車はバルセロナまでどの駅にも止まらない、速達型。

定刻通りにアトーチャ駅を発車すると列車は専用の線路を快調に速度を上げていく。マドリードは欧州を代表する世界都市だが10〜20分も走れば長閑な広いそして乾燥した大地の中。意外と知られていないかもしれないが、マドリードは標高600mの高地にあり、ここからバルセロナに向かう道中はイベリア半島の中でも1000m以上ある山間部を抜けていく。グアダラハラ(Guadalajara)からカラタユド(Calatayud)にかけては特に標高が高い箇所で、白い砂浜と照りつける太陽の印象の強いスペインのまた別の一面を垣間見ることができる。

その後、景色が開けてくるとそろそろサラゴサらしき大きな街が遠くに見えてくる。てっきりサラゴサ・デリシアス駅をそのまま通過するかと思いきや、流石にスペインでも5番目に大きい都市の代表駅を通過するのは気が引けるのか、サラゴサ・デリシアス駅を迂回する経路で東に向かう。

しばらくすると乾燥した大地よりも青々と生い茂った緑が目についてくる。地中海に近づいてきたということだろうか。そんなこんなで2時間半どの駅にも止まらずに地下のバルセロナ・サンツ駅に到着。初日はここからスペイン国境を越えてフランス南部の街・モンペリエまで。

バルセロナ〜モンペリエ

バルセロナから次の列車まで4時間ほどあったので、サンツ駅周辺を太陽の光をここぞとばかりに浴びながら当てもなく歩き、地元のスーパーマーケットやパン屋で適当にお昼ご飯と飲み物を調達し時間を潰す。サグラダ・ファミリアやカタルーニャ美術館には目もくれず。

ここから今日の目的地フランス・モンペリエまではフランス国鉄が誇る世界で最も有名であろう高速列車・TGVにて移動。下の動画にはTGV !nOuiとあるが、これは2017年頃からつけられたブランド名のようなものらしい。

今回の列車は全車2階建の車両で、当然ながら2等車の2階席を予約。席は若干古めかしさを感じさせるが、乗り心地は流石世界に先駆けて高速列車を運行してきたフランスのTGVといったところ。

最初の停車駅・ジローナ(ヒローナ? Girona)を出てしばらくすると山深い区間をひた走る。この辺りはひょっとしたらピネレー山脈の東端にあたる所だろうか?そんなことを考えているうちに握り拳大ほどの睡魔に襲われ、気がつくと国境を越えてフランスに入ってしまっていた。フランス最初の駅はペルピニャン(Perpignan)。ここで増結するために15分ほど停車。

ペルピニャンから次の停車駅・ナルボンヌ(Narbonne)までは是非とも睡魔に襲われても瞼をこじ開けて何とか持ち堪えていただきたい。と言うのもこの辺りは地中海沿岸を走るので眺めがなかなか素晴らしい。特にナルボンヌの手前では池の水面から辛うじて顔を出している物干し竿のように細い陸地の上を恐る恐る走行する(動画の06:18〜07:29)。この区間はどちら側の車窓を見ても水辺なのでまるで水上を走っているかのようだ。

ペルピニャンからナルボンヌの経路(Google Mapより)。

モンペリエの手前、AgdeからSète(なんて発音するかは不明)の区間でも地中海に沿って細い陸地(おそらく砂州)の上を走るが、海が見えるのは一瞬である。
そんなこんなで3時間ちょっとをかけて本日の目的地、モンペリエ・サンロッシュ駅に到着。駅の目の前を色彩豊かな路面電車が走るなかなか大きな街。今思い出したが、この列車はここから先、パリ・リヨン駅まで行く。

モンペリエ・サンロッシュ駅前

翌日の列車が朝の6時発なので駅から歩いてすぐそこのホテルに宿泊。

ノルウェーまではまだまだ。
続く。

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