プエルタ・アンティグア

これという専門が定まっていない気候科学研究者。 良く言えば守備範囲が広い、悪く言えば深掘りできない。ゆっくりと景色をながめる旅で心に潤いと安らぎを。 随筆の真似事で、これまでのことや日々のことを徒然なるままに。

プエルタ・アンティグア

これという専門が定まっていない気候科学研究者。 良く言えば守備範囲が広い、悪く言えば深掘りできない。ゆっくりと景色をながめる旅で心に潤いと安らぎを。 随筆の真似事で、これまでのことや日々のことを徒然なるままに。

最近の記事

ついにスマートフォンを手にした話とそれにまつわる昔話②

最近ようやく購入したスマートフォン。前回はスマートフォンがここまで世間に広がる前時代において、自分がどのように通信機器に振り回されてきたかについて少しまとめてみた。 今回はスマートフォンが世に現れて、現在に至るまでのスマートフォンを頑なまでに持たなかったその意味不明の孤軍奮闘っぷりから陥落までについて書いてみようと思う。 スマートフォン黎明期 広辞苑よりも気軽に調べることができるが、信憑性に少し欠けるネット辞書でスマートフォンと調べると、どうやらその発祥は1996年に発

    • 研究論文における個人的な自戒

      自分の生業は研究結果を論文として新しい知見を世の中に出すこと。 論文を書けば終わりということではなく、世の中に出るまでには査読という審査過程がある。ある時には見えない査読者と心の中で(あくまで科学的な)殴り合いをすることもある。 博士課程在籍時に発表した初めての論文は投稿から受理まで2年以上かかり、次作は査読のコメントが大小合わせて99項目もあるなど、受理されるまでの道のりは舗装されておらず、非常に険しいものであった。その後ポスドクや研究員として研鑽・経験を積んでいくと、

      • 中央ヨーロッパ1周弾丸鉄道旅行❷-ベルリン〜ウィーン-

        次なる目的地はオーストリア🇦🇹・ウィーン。ここからようやく中央ヨーロッパの雰囲気が溢れ出す。夜行列車まで半日ほど空いた時間をドレスデンまで寄り道することで埋めようと思ったが、独りで観光する気は微塵も湧いてこず、気づけばベルリンに戻ってきてしまっていた。 ベルリンから乗る夜行列車の始発駅は切符によるとベルリン・シャルロッテンブルク駅(Charlottenburg)。始発駅になるほどの、さらにはどこか煌びやかで雅な響き"シャルロッテンブルク"、さぞかし立派な駅だろうと思いを馳せ

        • ついにスマートフォンを手にした話とそれにまつわる昔話①

          先日、スマートフォンを初めて購入した、この2024年に。記憶が正しければ2007年頃にアップル社からiPhoneの初号機が発売されているので、それから17年。下の図が示すように、発芽期こそ国内普及率は10パーセントに満たないものの、2020年代ではスマートフォンを持たぬは人に非ずの烙印を押されそうなほど世の中はスマートフォンで溢れかえっている。その烙印を押す箇所がなくなるほどスマートフォンを持っていないことを言うとこれまで幾度となく驚かれてきたが、ついに廉価版ではあるが購入す

          中央ヨーロッパ1周弾丸鉄道旅・寄り道-ベルリン〜ドレスデン-

          前日のじんわり抉られた心の傷も車内での暖かい出会いとホテルでの熟睡ですっかり癒え、弾丸旅行2日目を迎える。ベルリンからの次の目的地はオーストリア🇦🇹の首都・ウィーン。ドイツ語圏の首都を結ぶ鉄路の選択肢は片手では足りないほどあるが、今回はオーストリア連邦鉄道(ÖBB)が運行する夜行列車・ナイトジェットで移動。ただ夜行列車なのでベルリンを発車するのは夕方の6時半、時間は飛行機でベルリン・ウィーンを往復しても間に合うくらいに十分ある。というわけで夜行列車に乗る前に1周の円から少し外

          中央ヨーロッパ1周弾丸鉄道旅・寄り道-ベルリン〜ドレスデン-

          中央ヨーロッパ1周弾丸鉄道旅❶-アムステルダム〜ベルリン-

          2年前の秋に家族に土下座をして1人で中央ヨーロッパ鉄道の旅に行かせてもらった。目的はただ単に鉄道で中央ヨーロッパを円を描くように鉄道に乗って旅するだけという、途中虚無感と腰痛に包まれそうな旅。何しろ2年前のことなので記憶がところどころ曖昧だが、今後ヨーロッパ旅行を計画されている方に「こんな経路もあるのか」と少しでもお役立てることに淡い期待を寄せながら、書きまとめてみることにする。 まずは1周旅行の起点となる中央ヨーロッパの都市に降り立たねばならない。自分が住んでいるノルウェ

          中央ヨーロッパ1周弾丸鉄道旅❶-アムステルダム〜ベルリン-

          遠回りで愛知〜東京を移動②

          5月の一時帰国時に実家の愛知県から学会が行われる関東まで、北陸新幹線を利用して移動。前回の記事では名古屋から敦賀まで特急しらさぎの旅程についてまとめた。 今回はこの旅行の主たる目的・北陸新幹線で敦賀〜東京間の移動について書いてみたいと思う。新幹線との連絡を円滑にするために新設された接続専用のホームにしらさぎ号が到着。新幹線ホームはこのホームの真上にあるのだが、一旦駅の改札を出ることに。 というのも名古屋から通しで敦賀経由・東京までの切符をJR東日本のえきねっとでeチケット

          遠回りで愛知〜東京を移動②

          遠回りで愛知〜東京を移動①

          5月に台湾へ出張があり、ちょうど時期が重なるように日本で学会も開催されるということで単身一時帰国。学会会場は関東であったが、実家の愛知県にも帰郷。普段なら東海道新幹線で浜名湖・富士山・駿河湾と将来住みたい個人的NO.1の静岡県が誇る景色を楽しみながら最速で移動するのが定石。ただ約1年ぶりの帰国熱に浮かされたこともあってか、今年3月16日に金沢〜敦賀間が延伸開業した北陸新幹線を使って実家から関東へ移動した。さらにはグリーン車よりも上の階級・グランクラスという貴族・王族のものしか

          遠回りで愛知〜東京を移動①

          Climate Changeは気候変動ではなく気候変化

          このような題にしてしまうと地球温暖化を否定して、陰謀論を振りかざしているように聞こえてしまうかも知れないが、そういうわけではなく言葉の定義について少し専門的な観点から書いてみたいと思う。 現在、【気候変動】という言葉を聞かない日はないと思うくらい連日ニュースやSNSで取り上げられている。美術品にスープをぶちまける行為が何の意味があるのかは全くもって不明だが、意識の高い環境活動家たちの活動もある意味で注目を集めている。【気候変動】とひとたび検索してみれば、さまざまな記事が出て

          Climate Changeは気候変動ではなく気候変化

          書きまとめるだけではない科学論文をめぐる数々の悩み事

          随分と更新が滞ってしまったが、以前科学論文について本人なりに噛み砕いて書いてみた。今回は論文を書くことにおいての悩みごと、それも研究内容の本筋からは少々ズレたことについて個人の経験に基づいてまとめてみようと思う。 インパクトファクター偏重主義 科学論文を書くことのない人にはあまり馴染みのない言葉・インパクトファクター(IF)。これは客観的に各論文雑誌にあてがわれる数値で、簡単に言うとその雑誌の論文が1年間でどれだけ他の論文に引用されたかを平均値として示すものである。つまり

          書きまとめるだけではない科学論文をめぐる数々の悩み事

          スペインからノルウェーに戻る、鉄道で-最終日-

          スカンジナビア半島の玄関口、スウェーデン・マルメに予定より1時間ほど遅れて金曜日の午前8時に到着。こんなこともあろうかとマルメからの列車を少し遅めにしておいてよかった。国際列車は異なる鉄道会社を文字通り跨ぐためか遅れが生じやすいということを頭の片隅に少しでも入れておくといいかもしれない。 ただ念には念を入れ過ぎたせいか次の列車は正午過ぎのヨーテボリ行き。到着が遅れても待ち時間は両手に有り余るほど。通常なら数時間をどう過ごそうか露頭に迷ってしまうところだが(ベルリンの時のよう

          スペインからノルウェーに戻る、鉄道で-最終日-

          スペインからノルウェーに戻る、鉄道で-3日目-

          スペインから始まりフランスを通って3カ国目のドイツ・カールスルーへで1泊し、明けた翌日はドイツ国内を北欧に向かって北上する、だけでは面白くないのでここでも少し正攻法から逸脱することになる。 カールスルーへからデンマークに向かうにはおそらくそのまま北上し、フランクフルト〜ハンブルクを通ってデンマーク国境を越えるのが定石かもしれないが、カールスルーへから向かう最初の目的地はドイツの首都・ベルリン。下の地図を見ていただけたらわかるように、ベルリンはカールスルーへからデンマークへの

          スペインからノルウェーに戻る、鉄道で-3日目-

          スペインからノルウェーに戻る、鉄道で -2日目-

          初日はiryo、TGVと乗り継いでスペインから国境を越えてフランス南部の街・モンペリエで1泊し、この日はさらにフランスの国境を越えることになる。 フランスの国境を北に向かって越える経路は数多くあり、計画を練っている時からどれにしようか最も悩んだ。正攻法で行くなら国際列車が頻発しているパリまで出て、そこからベルギー・オランダに抜けるのが最も簡単に見える。が、ベルギー〜オランダ間は昨年仕事で通ってしまっているので特に目新しさがない。それならいっそマルセイユ・ニースからイタリアに

          スペインからノルウェーに戻る、鉄道で -2日目-

          スペインからノルウェーに戻る、鉄道で -1日目-

          去る今年の6月初旬、出張先のスペイン・マドリードからノルウェー・ベルゲンまで鉄道で戻るという同僚の誰もが挑戦しようとも露ほどにも思わない旅程を組んでみた。特に途中に立ち寄りたい街や観光名所があるわけでもなく、車窓からの流れゆく景色を見る時間にお金を払うだけの旅。 欧州の鉄道に乗る際には我々異邦人の味方ユーレイルパスなるものがあるが、今回は確実に席を確保するべく各乗り継ぎ区間で各鉄道会社の正規の切符を買うことにした。火曜日の朝にマドリードを発ち、ベルゲンには土曜日の早朝に到着

          スペインからノルウェーに戻る、鉄道で -1日目-

          4年ぶりの帰国1

          コロナと戦争に翻弄された4年間の沈黙を破って、家族で7月の3週間ほど日本で休暇を過ごしてきた。今回は4年ぶりの帰国について書いてみたいと思う。 気になる飛行機代・航路 近年の物価上昇や不安定な情勢が追い風となって(家計にとっては向かい風)、飛行機代が離陸直後の飛行機の如く上昇しているというのを方々で聞いていたが、今回の飛行機代は3人家族で往復42000ノルウェー・クローナ(1NOK=13-14JPY)。覚悟はしていたがまさか4年前の2倍もするとは。 今回乗ったのはフィン

          研究論文について

          最近6年ほどとある事情によって糠漬けになっていた研究結果が論文として糠床の底から日の目を見る運びになった。 そこで研究論文とは一体全体どのようなものなのか、研究者が日々追い求めいている酔狂な側面をお届けしようかと思う。 論文の定義 論文とは堅苦しく言わせてもらうと、客観的なデータ解析に基づいた新しい学問的知見について記述したものである。 要は余計なことを考えず、思い込みを捨ててデータで遊んでみたら、何か誰も見つけてないことが分かったっぽいので書きまとめた文章と思っていた