プエルタ・アンティグア

これという専門が定まっていない気候科学研究者。 良く言えば守備範囲が広い、悪く言えば深…

プエルタ・アンティグア

これという専門が定まっていない気候科学研究者。 良く言えば守備範囲が広い、悪く言えば深掘りできない。ゆっくりと景色をながめる旅で心に潤いと安らぎを。 随筆の真似事で、これまでのことや日々のことを徒然なるままに。

最近の記事

中央ヨーロッパ1周弾丸鉄道旅・寄り道-ベルリン〜ドレスデン-

前日のじんわり抉られた心の傷も車内での暖かい出会いとホテルでの熟睡ですっかり癒え、弾丸旅行2日目を迎える。ベルリンからの次の目的地はオーストリア🇦🇹の首都・ウィーン。ドイツ語圏の首都を結ぶ鉄路の選択肢は片手では足りないほどあるが、今回はオーストリア連邦鉄道(ÖBB)が運行する夜行列車・ナイトジェットで移動。ただ夜行列車なのでベルリンを発車するのは夕方の6時半、時間は飛行機でベルリン・ウィーンを往復しても間に合うくらいに十分ある。というわけで夜行列車に乗る前に1周の円から少し外

    • 中央ヨーロッパ1周弾丸鉄道旅❶-アムステルダム〜ベルリン-

      2年前の秋に家族に土下座をして1人で中央ヨーロッパ鉄道の旅に行かせてもらった。目的はただ単に鉄道で中央ヨーロッパを円を描くように鉄道に乗って旅するだけという、途中虚無感と腰痛に包まれそうな旅。何しろ2年前のことなので記憶がところどころ曖昧だが、今後ヨーロッパ旅行を計画されている方に「こんな経路もあるのか」と少しでもお役立てることに淡い期待を寄せながら、書きまとめてみることにする。 まずは1周旅行の起点となる中央ヨーロッパの都市に降り立たねばならない。自分が住んでいるノルウェ

      • 遠回りで愛知〜東京を移動②

        5月の一時帰国時に実家の愛知県から学会が行われる関東まで、北陸新幹線を利用して移動。前回の記事では名古屋から敦賀まで特急しらさぎの旅程についてまとめた。 今回はこの旅行の主たる目的・北陸新幹線で敦賀〜東京間の移動について書いてみたいと思う。新幹線との連絡を円滑にするために新設された接続専用のホームにしらさぎ号が到着。新幹線ホームはこのホームの真上にあるのだが、一旦駅の改札を出ることに。 というのも名古屋から通しで敦賀経由・東京までの切符をJR東日本のえきねっとでeチケット

        • 遠回りで愛知〜東京を移動①

          5月に台湾へ出張があり、ちょうど時期が重なるように日本で学会も開催されるということで単身一時帰国。学会会場は関東であったが、実家の愛知県にも帰郷。普段なら東海道新幹線で浜名湖・富士山・駿河湾と将来住みたい個人的NO.1の静岡県が誇る景色を楽しみながら最速で移動するのが定石。ただ約1年ぶりの帰国熱に浮かされたこともあってか、今年3月16日に金沢〜敦賀間が延伸開業した北陸新幹線を使って実家から関東へ移動した。さらにはグリーン車よりも上の階級・グランクラスという貴族・王族のものしか

        中央ヨーロッパ1周弾丸鉄道旅・寄り道-ベルリン〜ドレスデン-

          Climate Changeは気候変動ではなく気候変化

          このような題にしてしまうと地球温暖化を否定して、陰謀論を振りかざしているように聞こえてしまうかも知れないが、そういうわけではなく言葉の定義について少し専門的な観点から書いてみたいと思う。 現在、【気候変動】という言葉を聞かない日はないと思うくらい連日ニュースやSNSで取り上げられている。美術品にスープをぶちまける行為が何の意味があるのかは全くもって不明だが、意識の高い環境活動家たちの活動もある意味で注目を集めている。【気候変動】とひとたび検索してみれば、さまざまな記事が出て

          Climate Changeは気候変動ではなく気候変化

          書きまとめるだけではない科学論文をめぐる数々の悩み事

          随分と更新が滞ってしまったが、以前科学論文について本人なりに噛み砕いて書いてみた。今回は論文を書くことにおいての悩みごと、それも研究内容の本筋からは少々ズレたことについて個人の経験に基づいてまとめてみようと思う。 インパクトファクター偏重主義 科学論文を書くことのない人にはあまり馴染みのない言葉・インパクトファクター(IF)。これは客観的に各論文雑誌にあてがわれる数値で、簡単に言うとその雑誌の論文が1年間でどれだけ他の論文に引用されたかを平均値として示すものである。つまり

          書きまとめるだけではない科学論文をめぐる数々の悩み事

          スペインからノルウェーに戻る、鉄道で-最終日-

          スカンジナビア半島の玄関口、スウェーデン・マルメに予定より1時間ほど遅れて金曜日の午前8時に到着。こんなこともあろうかとマルメからの列車を少し遅めにしておいてよかった。国際列車は異なる鉄道会社を文字通り跨ぐためか遅れが生じやすいということを頭の片隅に少しでも入れておくといいかもしれない。 ただ念には念を入れ過ぎたせいか次の列車は正午過ぎのヨーテボリ行き。到着が遅れても待ち時間は両手に有り余るほど。通常なら数時間をどう過ごそうか露頭に迷ってしまうところだが(ベルリンの時のよう

          スペインからノルウェーに戻る、鉄道で-最終日-

          スペインからノルウェーに戻る、鉄道で-3日目-

          スペインから始まりフランスを通って3カ国目のドイツ・カールスルーへで1泊し、明けた翌日はドイツ国内を北欧に向かって北上する、だけでは面白くないのでここでも少し正攻法から逸脱することになる。 カールスルーへからデンマークに向かうにはおそらくそのまま北上し、フランクフルト〜ハンブルクを通ってデンマーク国境を越えるのが定石かもしれないが、カールスルーへから向かう最初の目的地はドイツの首都・ベルリン。下の地図を見ていただけたらわかるように、ベルリンはカールスルーへからデンマークへの

          スペインからノルウェーに戻る、鉄道で-3日目-

          スペインからノルウェーに戻る、鉄道で -2日目-

          初日はiryo、TGVと乗り継いでスペインから国境を越えてフランス南部の街・モンペリエで1泊し、この日はさらにフランスの国境を越えることになる。 フランスの国境を北に向かって越える経路は数多くあり、計画を練っている時からどれにしようか最も悩んだ。正攻法で行くなら国際列車が頻発しているパリまで出て、そこからベルギー・オランダに抜けるのが最も簡単に見える。が、ベルギー〜オランダ間は昨年仕事で通ってしまっているので特に目新しさがない。それならいっそマルセイユ・ニースからイタリアに

          スペインからノルウェーに戻る、鉄道で -2日目-

          スペインからノルウェーに戻る、鉄道で -1日目-

          去る今年の6月初旬、出張先のスペイン・マドリードからノルウェー・ベルゲンまで鉄道で戻るという同僚の誰もが挑戦しようとも露ほどにも思わない旅程を組んでみた。特に途中に立ち寄りたい街や観光名所があるわけでもなく、車窓からの流れゆく景色を見る時間にお金を払うだけの旅。 欧州の鉄道に乗る際には我々異邦人の味方ユーレイルパスなるものがあるが、今回は確実に席を確保するべく各乗り継ぎ区間で各鉄道会社の正規の切符を買うことにした。火曜日の朝にマドリードを発ち、ベルゲンには土曜日の早朝に到着

          スペインからノルウェーに戻る、鉄道で -1日目-

          4年ぶりの帰国1

          コロナと戦争に翻弄された4年間の沈黙を破って、家族で7月の3週間ほど日本で休暇を過ごしてきた。今回は4年ぶりの帰国について書いてみたいと思う。 気になる飛行機代・航路 近年の物価上昇や不安定な情勢が追い風となって(家計にとっては向かい風)、飛行機代が離陸直後の飛行機の如く上昇しているというのを方々で聞いていたが、今回の飛行機代は3人家族で往復42000ノルウェー・クローナ(1NOK=13-14JPY)。覚悟はしていたがまさか4年前の2倍もするとは。 今回乗ったのはフィン

          研究論文について

          最近6年ほどとある事情によって糠漬けになっていた研究結果が論文として糠床の底から日の目を見る運びになった。 そこで研究論文とは一体全体どのようなものなのか、研究者が日々追い求めいている酔狂な側面をお届けしようかと思う。 論文の定義 論文とは堅苦しく言わせてもらうと、客観的なデータ解析に基づいた新しい学問的知見について記述したものである。 要は余計なことを考えず、思い込みを捨ててデータで遊んでみたら、何か誰も見つけてないことが分かったっぽいので書きまとめた文章と思っていた

          すべての理想が詰まった夏季休暇

          誰に聞かれずともこれまで一番心に残った旅行先はどこ?と挙げるとすればそれは満場一致でスペイン・マヨルカ島。 誰もが一度は憧れたことのあるであろう地中海西部に浮かぶ島で、特にドイツ・イギリス・北欧の人々が太陽を求めて夏季休暇に訪れるスペイン有数の碧い海と白い砂浜に囲まれたヨーロッパでも指折りのリゾート地。一応新婚旅行という名目ではあったが、婚姻届を役所に出してから1年以上経っていたので北欧の人たちと同じようないわゆる夏季休暇の感覚で1週間、アルクディアという島の北部の小さな街

          すべての理想が詰まった夏季休暇

          自分はよく道を聞かれる

          理由はよくわかないが、自分は道を聞かれることが多いように思う。 どこからどう見ても東京の喧騒に慣れている様子もない田舎者であるにもかかわらず、東京駅構内で30分以内に2度関西からの旅行者と思しき方に「○○線はどこですか?」と聞かれた。東京駅の時刻表の全てが頭に入っていそうな顔でもしながら歩いていたのだろうか。 さらに海外で聞かれることの方が多い。 360度どの方向からもその街に溶け込んでいない東洋人にしか見えないにもかかわらず、道や場所を聞かれる。ヘッドホンをしていようが聴

          自分はよく道を聞かれる

          自己紹介3: 研究者としての熟成期間開始

          精魂尽き果てたつつあった博士課程を何とか修了したはいいが、その後どうするのかは現在も日本国内では大きな問題である。博士課程在学中に一般企業とは別に2カ所の国内研究機関の公募に出してみたが、ふるいの目にかかることなくスッと通過する。 その内一つの機関からは博士論文の予備審査(ほぼこの審査で学位取得の合否が決まる)の直前に門前払いメールが封書で届き、クリーニング屋に出したと言わんばかりに脳のシワが綺麗さっぱりなくなった状態で審査に臨んだ記憶がある。 しかしその予備審査直後に思

          自己紹介3: 研究者としての熟成期間開始

          自己紹介2: 研究者人生の萌芽

          前回は大学卒業までについて要所要所出来事を思い出しながら書きまとめたので、今回は今の職業に直結している大学院時代の苦闘ぶりについて紹介させていただこうと思う。 大学院期〜雪に埋もれた20代 学部の研究室では気象学を諦め、修士課程から学び直せるところを選んだ結果、試される大地の大学院へ進学。 最初の半年は講義が主体で気象学・海洋物理学などの学部時代に少し齧った程度の分野を基礎から学び、漠然とではあるがこういった研究がしたいと考えられるようになってくる。 半年後に研究室配属を

          自己紹介2: 研究者人生の萌芽