見出し画像

「朝市」で幸せをつくるムサシ・オープンデパート

先日PUBLIC+チームで開催した朝市から考えるパブリックデザイン。
こちらのイベントのレポートを兼ねて、株式会社ムサシが展開するムサシオープンデパート朝市とはなにか?について、岡本篤著の朝市で幸せをつくる(カネに依存しないローカル経済)について、レポートしておきたいと思います。

まずは、岡本篤さんのプロフィールから。株式会社ムサシは、主に防犯用として、また毎日欠かせない生活用の照明として、さまざまな要望に応えるべく多くのセンサーライトを開発している会社。それ以外にも様々なプロダクト開発を手掛ける企業です。独特な経歴から現在、株式会社ムサシの経営をしながら、人間社会と自然社会を行き来する社会起業家としての側面を持つオリジナリティ溢れる経営者。

朝市で幸せを作る岡本篤著より


そんな会社の経営者でもある岡本篤さんが、なぜ朝市をやっているのか?そのあたりから、この本を読み解いていきたいともいます。

朝市で日常をつくりなおす


「朝市」とは、一般的に、日曜日などの早朝に一か所に集まり、持ち寄った農産物や加工品などを売買する定期市(または不定期市)のことです。一般には、駅前、峠、広場のような動線が自然と集まる場所や、近年では広い駐車場が確保できる漁港周辺、河川敷、ショッピングモールなど集客力がある場所で開催されることが多いのが一般的な朝市のイメージです。

では、岡本さんの目指す朝市とは、どんなものをイメージしているのでしょうか。それは、本著において、「豊かな日常の作り直し」であって、イベントを増やすことではないということです。

「いつ行っても仲間に出会える、おいしいものがあるそういう場所をつくるのが、ムサシオープンデパート朝市である」と定義されています。なぜ、この定義に行きついたのでしょうか?その前提として、現代消費社会のアンチテーゼのような側面を持っていることが背景にあります。

これまでの日本の消費社会は、「ハレ」の場を作りすぎてきていると感じているそうです。とにかくお祭りのような連続状態に人々を集め、たくさんお金を使わせる。そういう活動が多く行われる一方で、「ケ」の場、つまり日常がつまらなくなり、スッカラカンになってしまった。そんなハレの消費が増えてしまったまちからは、立ち飲み酒屋、床屋、銭湯など、日本に昔からあった人々の日常のコミュニケーション場が消えてしまっていると、岡本さんが住んでいる加古川というまちもそのようになってしまっているとの憂いがあるそうです。

「街から生活の楽しみは消え去り、その場所が果たしていた機能の一部である『モノとカネの交換』だけが取り出されて、スーパーや郊外のショッピングセンター、ネットショップがその役割を担っている状態だ」と。テクノロジーによって、買い物だけは便利に済ませることができるようになりましたが、それ以外の役割が全く失われてしまったのではないかといいます。

今後、無人販売店舗が広がると買い物は、単なるカネとモノの交換になっていくことになるだろうということです。この時代の流れに一矢を報いるべく、「カネに頼らず幸福を作る」のが朝市であると、岡本さんは著書で書かれています。そして、株式会社ムサシの事業として、この朝市を兵庫県加古川で展開しつつ、全国に広めていこうとしているとのことです。

株式会社ムサシは、朝市を最初に始めたのは2017年の夏からとのこと。週末全く使われないムサシの駐車場で数店舗の出店者を集めてテスト営業を行ったことから始まりました。

野菜を買い集め、近隣の知り合いから出店者を募って日曜日にやってみて、それを毎週続け、現在では、年間で平均して毎週1000人が集まる市場に成長しているそうです。マルシェといわれるイベントが全国各地で行われていますが、何といっても大きな違いの一つは、毎週行われている点も特筆すべき点です。

朝市で「価値が生まれる瞬間とは?」

この朝市で生まれる価値についてみ本著で述べられていて、ここが一番重要だと思うところです。朝市において、価値が生まれる瞬間とは?ここについては、本文をそのまま抜粋したいと思います。

火花が散る瞬間

パブリックスペースで、コミュニケーションを発生させる装置としての朝市、パブリックデザインの本質とは、この「火花が散る瞬間」なのではないかと思います。
特に、「都市」になればなるほど、日常において「火花が散る瞬間」が少なくなっていく気がします。それはどこか都会的な効率化した仕組みや、近い場所もすべて車で移動する生活習慣や、人工的な建築物やコンクリートに囲まれて暮らすことに慣れてしまった都市が失いやすい「要素」なのかもしれません。

カネに頼らないローカル経済をつくる

もう一つ、岡本さんが朝市をやる理由として挙げられているのカネに頼らないローカル経済を作ることを上げています。株式会社ムサシが手掛ける「朝市の事業」に関しては、収益性よりも来場者の幸福を創出する「装置」として位置づけ、全国に広げていこうとされています。

その役割の背景には、ローカルにおける経済の停滞があるとのことです。本来企業はお金を稼ぎ、それを賃金として社員に配り、社員はそれで買い物をする。地元で開店するお金の額と回転数が上がり、地域の人間活動が活発になり、銀行もさらなる企業のチャレンジに融資する。これが経済だったはずだったが、今では企業は金を稼がず、賃金も上げず、人々は買い物もしない。使ったお金は東京や外国に流出してしまいます。こうしたボトルネックが何重にも重なって、地方でも経世済民が停滞する状況が生じていると述べられています。

最終的な目的は人々が幸せになることだったはずなのに、お金が介在することで逆に手間が増え、地域にお金が回らなくなっている状況があるのです。そのような背景から、朝市は直接的に人々を幸福にする方法として、全国でこのムサシ方式の「朝市」を展開することに注力しているとのことです。

当日は、ムサシオープンデパート朝市と一般的なマルシェの違いについても説明いただきました。

大分市でムサシオープンデパート朝市を。


PUBLIC+チームでは、そんなムサシ方式の「朝市」≒ムサシオープンデパート朝市を大分でも展開したい。そう思って、トークイベントを4月に開催しました。
この「幸福を作る装置」として「朝市」の価値観に賛同する仲間を大分でも増やしていければと思っています。ぜひ、「日常の幸福」を大分市でも作っていきましょう!



都市にも豊かな日常を創っていこう!!!

興味のある方はKINDLEでも岡本さんの本購入できます。
おススメです。

PUBLIC+チーム 公共不動産ディレクター 西田


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?