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ふるさと

場末の酒場で ひとり酒 

夜が暮れても 飲み足らず 

一人 コップに注ぐ姿が 

曇りガラスに 写ってる 

寂しい車のヘッドライトが

優しく 酒場の暖簾を照らし

心の隙間を 癒してくれる

あ〜 僕の ふるさと 

僕の青春のふるさとよ 

昔は 人々の笑顔で賑わう 華やかな町だったのに

いつから こんなに 寂しくなったの

シャッターが静かにおりてる あのお店

昔は 友だちのお母さんが働く 

真っ白な建物と華やかな看板が目印の 

町のケーキ屋さんだった

いつもおばさんや子どもの笑顔で溢れてた

その隣にあった 町の本屋さん

ドアを開けると おじさんとおばさんが

明るい笑顔で迎えてくれた

おじさんとおばさんは 僕の友達のお父さんとお母さん

町一帯が まるで家族のようだねと 祖母と笑い合ってた

ある日 どこからか 女子高生たちがやってきて

おじさんと楽しそうに話してた

何を話しているのかな

聞き耳を立てながら 好みの本を探す僕

あれから30年

重たいシャッターが閉まったお店たちの前を

一人寂しく歩く

寂しさと哀しさと懐かしさが入り混じり

あの温かなお日様の光でさえも 遮ってしまう

ふるさとが そんな姿になろうとは 誰が想像したことか

誰が 思い描いていたことか

そんな姿に変わり果てても 

僕は 僕の ふるさとが 好きだ

シャッター街が寂しく泣いている

僕の心も泣いている

あの頃の色鮮やかな町の風景を 

そっと胸にしまった

誰にも気づかれないように

そっと…

#創作大賞2022

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