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【なで肩完全攻略】解剖学から紐解く正しいエクササイズ方法


こんにちは、青木です。


先日、当ピラティススタジオのお客様で
こんなお悩みをお聞きしました。


「なで肩なんですけど、これって治せますか?」


どうやらなで肩であることを悩んでおり、
通常の角度のある肩にしたいとの事でした。


その後、色んなお客様にも肩周りの
見え方について聞いてみると、
意外と皆さん気にしている様子でした。


ですが、なで肩の治し方について
ほとんどの方が間違った認識をしており、
これまでに間違ったアプローチを続けて
改善するどころか肩こりや首こりが
生じてしまうなんて方もいました。


なぜなで肩が治らないのでしょうか…?


それは簡単で、
解剖学を理解出来ていないからです。


解剖学をしっかり理解出来ていれば、
なぜなで肩になるのか、
どこを伸ばせばいいのか、
どこを鍛えればいいのか、
それが明確になります。


どこに原因があるかをイメージ出来れば、
なで肩は意外と簡単に良くなりますよ。


ということで、今回はなで肩の改善方法を
解説したいと思います。


どうぞ。


1.なで肩が生じる理由


まずはなで肩になってしまう
解剖学的な理由を解説していきます。


関節や筋肉の作用が理解出来れば
なで肩は8割良くなったようなものです。


いってみましょう。


2.僧帽筋の伸張固定


なで肩は首から肩にかけて、
筋肉が帆を張ったような状態です。


では帆のように張っている筋肉は
何なんでしょうか?


それが僧帽筋です。


僧帽筋は頚椎や胸椎(背骨)から
肩甲骨にかけて付着する背中の浅層筋ですが、
正面からも筋肉を観察できます。


僧帽筋は通常であれば
程よい緊張状態が保たれています。


しかし、とある要因によって
過度な伸張状態を引き起こすと、
肩に帆が張ったように見えてしまうのです。


そのとある要因とはいったい何でしょう?


それが「肩甲骨」と「脊椎」です。


3.肩甲骨のアライメント不良と原因筋

1)肩甲骨の外転と下制


肩甲骨の正常な位置からの逸脱は、
僧帽筋の過剰な伸張を作り出す
最大の要因と言えます。


具体的には、肩甲骨の外転+下制
僧帽筋を伸張固定させる要因です。


その理由としては、
僧帽筋を側面から見た時に
後上方から前下方に筋線維が
走行していることが挙げられます。


肩甲骨の外転は鎖骨と連動して行われ、
実際には外方+前方へ動きます。


さらに、肩甲骨の下制が加わることで、
肩甲骨の外転+下制によって
僧帽筋は伸張が増強されてしまうのです。


2)小胸筋の短縮固定


そして、肩甲骨を外転と下制、
どちらにも作用する筋肉があります。


それが小胸筋です。


小胸筋は第3~5肋骨から
肩甲骨の烏口突起に付着する筋肉で、
短縮固定によって肩甲骨を外転+下制位に
偏位させる最も重要な筋肉です。


3)大胸筋の短縮固定


また、間接的にではありますが、
大胸筋も肩甲骨を外転+下制させる
筋肉になります。


大胸筋は鎖骨や胸骨、肋骨から
上腕骨に付着する筋肉で、
肩関節を内転・内旋する作用があります。


肩関節と肩甲骨は運動連鎖によって
連動して動く性質があるため、
肩関節内転・内旋は肩甲骨の外転+下制を
引き起こしてしまうのです。


4)菱形筋の機能低下


菱形筋には大菱形筋と小菱形筋があり、
どちらも肩甲骨の内転と挙上に作用します。


本来であれば菱形筋が作用することで
小胸筋や大胸筋と拮抗して、
肩甲骨アライメントを保つことが出来ます。


しかし、菱形筋に筋力低下が生じると
拮抗作用が破綻し、
肩甲骨アライメントが崩れてしまうのです。


5)僧帽筋中部・下部線維の機能低下


僧帽筋中部線維は肩甲骨の内転
僧帽筋下部線維は肩甲骨の下制に働き、
菱形筋と連動して肩甲骨の位置関係を
調整します。


僧帽筋中部・下部線維は肩甲骨を介して
小胸筋とスリング上に連結しており、
完全な拮抗関係になっています。


そのため、僧帽筋中部・下部線維の筋力低下は
小胸筋の短縮固定を作る最大の要因とも
言えるでしょう。


4.胸椎のアライメント不良

1)胸椎の過剰屈曲


僧帽筋の伸張固定の要因として
脊椎がありますが、
肩甲骨のアライメント不良
この胸椎によって引き起こされます。


なぜかというと、肩甲骨と接する胸郭が
胸椎アライメントの影響を受けるからです。


胸郭というのは、
12個の胸椎と24本の肋骨、胸骨からなる
骨格のことを指します。


まず胸椎が過剰に屈曲位になると、
胸郭背面の傾斜角度が大きくなります。


すると、胸郭と接する肩甲骨は
前傾位かつ外転方向へ偏位してしまうのです。


加えて、胸椎の過剰屈曲は
頭部を前方へ偏位させる要因にもなるため、
僧帽筋の筋腹がより前に張り出した
状態になってしまいます。


2)腹筋群の短縮固定


腹筋群は肋骨下部から骨盤に付着しており、
胸郭を下制させる働きがあります。


また、体の前面にある筋膜ラインを介して
脊椎を屈曲させます。


本来、腹筋群は背筋群と共同収縮することで
脊柱の安定性をたもちますが、
腹筋群の働きが優位になってしまうと
脊柱の屈曲を増強させてしまうのです。


3)胸部脊柱起立筋と多裂筋の機能低下


脊柱起立筋は棘筋、最長筋、腸肋筋の
3種類の筋肉に分けられており、
脊柱の伸展に関与します。


中でも胸部の脊柱起立筋(特に胸部最長筋と
胸部腸肋筋)は胸椎を伸展するために
著しく活性化することが分かっています。


また、胸部の多裂筋と最長筋は
上肢の活動時に活性化し、
脊柱前後の動揺を制御するようです。


これらの筋肉が筋力低下を起こすと、
胸椎の伸展活動が減少し、
胸椎の過剰屈曲の要因となります。


5.なで肩に関係する筋肉まとめ


ここまで、なで肩になる骨格アライメントや
筋肉について解説してきました。


大まかにまとめるとこうなります。


要因となる骨格アライメント

・肩甲骨の外転+下制

・胸椎の過剰な屈曲


要因となる主な短縮筋

・小胸筋

・大胸筋

・腹筋群


要因となる主な伸張筋

・菱形筋

・僧帽筋中部、下部線維

・胸部脊柱起立筋

・胸部多裂筋


この他にもなで肩に関連する
短縮筋や伸張筋はありますが、
かなり多くなってしまうので
これぐらいにしておきましょう。


上記にまとめた筋肉を把握しておけば
基本的に大丈夫です。


また、これらの筋群へアプローチすることは、
猫背や巻き肩の改善にも繋がります。


なで肩だけでなく、猫背や巻き肩もお悩みの方は
ぜひ覚えておきましょう。


6.アプローチ方法を紹介…の前に


アプローチの考え方としては、
短縮筋を伸ばして、伸張筋を鍛える
ということでOK!


なのですが…


注意点も存在します。


それは、対象となる伸張筋は
単独で働かせることが非常に難しい

ということです。


例えば脊柱起立筋ですが、
なで肩改善には胸部の脊柱起立筋を
選択的に働かせたいのですが…


脊柱起立筋を意識して胸椎を伸展しようとすると
頚椎や腰椎の伸展が優位に働いてしまいます。


これは胸椎は肋骨と胸骨によって
固定力が強いため、元々伸展方向に
動きにくいという性質
があるためです。


ですので、胸椎を伸展するために
脊柱起立筋を鍛えようとしても、
首や腰周りが鍛えられてしまい
胸部脊柱起立筋が鍛えられないというケースが
多発してしまいます。


これが、なで肩が良くならない理由です。


菱形筋や僧帽筋に関しても同じことが言えます。


これらの課題をクリアするには、
アプローチの順序が大切です。

  1. 短縮筋のストレッチ

  2. 腹筋群と頚部前面筋の強化

  3. 伸張筋の強化

  4. 伸張筋と腹筋群・頚部前面筋の協調


この順序でアプローチを行いましょう。


ん?腹筋は短縮筋なのになんで強化するの?


と感じる方がいるかもしれません。


その理由は後ほど解説します。

では具体的なアプローチ方法について
解説していきましょう。

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