見出し画像

肩関節疾患において「筋トレ」だけでは歯が立たない理由を科学的に説明・解決策も提示してみる。

どうもです。

論文と臨床を混ぜ込んだお話をします。


肩関節疾患や上肢の問題がある人にとって。

「肩甲骨」を見ることはとても重要です。

でもでも。


「肩甲骨周りの筋力が弱いから鍛えよう」



では歯が立たないことがよくあります。


「肩甲骨周りの筋肉が弱いから鍛えたけど、結局肩の動きや痛みが変わらない」


なんてことはよくありませんか??

僕もいろんな肩関節疾患を見てきましたが。

筋トレだけで良くなることはありません。
ストレッチだけで良くなることもありません。



あれ?弱くなっている筋肉を鍛えたら良くなるんじゃないの?ってw


このあたりを紐解いていきましょう。


シンプルに。


肩関節疾患における「肩甲骨の位置異常」であるScapular dyskinesisをなんとかすることが1つの答えです。


でもその答えは「鍛えて・伸ばして」だけではありません。

これ、、超重要です。



肩甲骨周りを鍛えて・伸ばしても変わらない??

1つの論文を紹介します。

ざっくりと。

・肩の痛みを持つ人たちに、小胸筋の運動ストレッチを処方したところ。
・痛みは改善した
・でも肩甲骨の動きや小胸筋の長さは変わらなかったよ

ということです。

ふむふむ。

鍛えて伸ばしても、筋肉は変わらなかったけど。痛みは変わった

という事実は大事で。

神経や中枢神経系関連(脳)がとても関わっていそうですよね?



肩甲骨の機能不全は運動制御の影響が大きい


筋電図とかで「人の体」をぶつ切りにした場合。

1肩甲骨の機能不全の人の筋電図を測ると
2肩甲骨周りの筋肉が弱い
3筋肉を強くすれば肩甲骨の機能が改善する
4結果的に、肩も良くなるだろう

といった間違った解釈を生みやすくなります。(全部が間違いではありませんが。全部が「筋肉」で考えすぎてしまいます。)


人間の体はもっと複雑です。脳や神経のことをすっ飛ばして考えるのはNGです。



実は。肩甲骨の機能不全には「運動制御」がとてつもなく大きく関わります。

要は「肩甲骨ってこうやって動かすんだぜ!!ルンルン!!」

と言うことですw動かし方をよく知っているということですね。



運動制御の主な原則の 1 つは

「タスクの実行中に人が受け取るフィードバックの種類と量」

に基づいています。

つまり、このあたりのフィードバックを正確に入れて

「ああ、肩甲骨ってここにあって、こうやって動くんだね!わかった!」

と認知させることで、痛みが改善していくことがよくよくわかっています。(腰痛とかもそうだよね)


ではどうやって「肩甲骨」を認知して感覚入力を入れていけば良いのか?(鏡を使って肩甲骨が見えない、自分の目で確認できない=視覚情報は遮断されている中で。)


ここが肩関節疾患や肩こりなどの人への介入になります。


これまでの報告では、上腕骨を挙上・または回旋する前に肩甲骨の位置を意図的に変更しようとすること(conscious correction)は、肩甲骨の筋活動を高め、肩甲骨のキネマティクスを高めることが示されています。


うんうん。論文的にはわかった。

では実際の臨床ではどうすればいいの?はまた別問題ですね。


というわけで実際の現場レベルの話と、機能改善するために必要な現在のデータも示します。


肩甲骨の機能不全を改善するための4つのステップ


1:短いレバーアームの運動から始める
2:うつ伏せや仰向けの運動よりも、座位や立位を優先
3:可動性、運動制御、筋力(必要であれば)、持久力の順で障害をターゲットにする。
4:リハビリテーションプログラムの後半では、より長いレバーを使用する。(肩甲骨の代償運動が出ない範囲)

このあたりが根拠ある改善のステップです。




では実際のトレーニングを見てみましょう。


1:僧帽筋下部と前鋸筋エクササイズで僧帽筋上部の過剰緊張を抑える


どんな方法でもいいのですが。

肩甲骨で床をおす=前鋸筋
肩甲骨を下げながら肩を上げる=僧帽筋下部

を効かせましょう。

これで普段使いやすい「僧帽筋上部」を抑制することができます。

2肩甲骨のProtraction

多くの方は

・肩をすくめる
・肩を寄せる

運動感覚は得意です。

しかし、僧帽筋上部の過剰な緊張を生みやすいの事実。

なので、肩関節疾患の人が苦手なprotraction(肩甲骨を前に出す)を覚えて認知させていくことが大事です。その際に、頭部・胸椎の伸展を同時に引き出すことはポイントでし。


頭部・胸椎の伸展は相対的に肩甲骨をprotractionします。

逆に頭部・胸椎が屈曲するとretractionしていることになります。


3肩関節を上げながら肩甲骨の位置を保つ

肩関節を上げていくことは肩甲骨に多様な動きを必要とします。

上方回旋も必要。でも菱形筋が抜けると過剰になりすぎるし。
挙上しすぎないように、僧帽筋下部繊維も必要だし。
さらに、前鋸筋も抜けないように。

と。

とっても働き者の肩甲骨さんです。

正しく肩甲骨をリードさせていくのはとても難しいです。


でもシンプルにやりましょう。

1:座位で脊柱のエロンゲーションを作り、最初の肩甲骨のセットポジションを作る
2:上肢挙上90度でprotractionを引き出す
3:そこから肘関節90度屈曲、肩関節外転させても肩甲骨が挙上しないようにセット(僧帽筋下部と菱形筋に力が入る)
4:scapula plane上で肩関節を挙上して肩甲骨の適切な上方回旋を出す

以上ですw



4最後にレバーアームを長くしていく

ここまでのコントロールと可動性が保たれていれば。

徐々に腕のレバーアームを長くして負荷をかけていきましょう。



肩甲骨の機能不全を治していくステップ動画


まとめ

1:肩甲骨の運動制御はとても大事
2:筋トレやストレッチだけでは変わらないことがある
3:肩甲骨を認知させて、動きを覚えていくことが大切

以上です。


1つの肩の臨床に活かしてみてください^^

ちなみに、この記事は。

なぜか朝4時に起きて論文を2時間みながら作ったコラムですw

すごく楽しかったw

ではでは!!


他にも100記事以上いろんな記事があって777円という縁担ぎな値段で読み放題です↓

ここから先は

0字
運動を仕事にするトレーナー、ピラティス、ヨガ、セラピストの先生向けの専門家マガジン!

運動を仕事にする全ての人へ。理学療法の知識、解剖・運動・生理学と最新の論文から現場で使えるピラティスや運動の評価・方法・考えをコラムと動画…

理学療法士最大級のオンラインサロンFree PT salonを運営!知識・技術を学ぶのはもちろん、発信力をつけて、みんなとコラボしてプロダクトを作る!やりたいことを実現する場所!→http://reha-basic.net/free-pt-salon/