『信頼』と『裏切り』の心理学── 他人が裏切る条件、相手にわく感情は怒り?憎しみ?悲しみ?、裏切り者はどうすべきか、心の拠り所とは……
というわけで前回は、
▶︎ 信頼とは、ヤバい選択をしているのだ!
▶︎ 裏切りやすい人の特徴とは?
▶︎ なぜ嘘をつくのか6カ条!
ってのを紹介しました。
実際のところ、人は「他人を信頼」しないと、上手に生きていくことができないので、ある意味では妥協しなきゃいけないんでしょうね。
で、今回は、
◆ 人が裏切る状況とは?
◆ 裏切られて感じる感情は?
◆ 裏切り者をどうすべきか?
と、いうところに焦点を当てていきます。
が、その前に、〈どんな人が不正を働きやすいのか〉をコペンハーゲン大学のレビュー論文から見ておきましょう[1]。
簡単なバックグラウンドとしては、
● 子供の頃は、年長よりも年少の方が自分のために不正をしやすい
● 成人してからは、年配よりも若者の方が不正をしやすい
● 基本的に、女性よりも男性の方が不正をしやすい
● が、女性は自分の能力の低さを補うためと、自分が所属するグループのために不正を働きやすい
● 宗教心があるほど不正をしにくいが、一部の女性修道士でそうでもなかった
● 囚人は自分が犯した罪を考えると不正が増え、銀行マンは自分の仕事について考えると不正が増えた
● クリエイティブな人ほど不正が多い傾向があるが、逆もしかり
というのがわかっております。
そのへんも踏まえて、この先をお読みください──
どんな状況で人は他人を裏切るのか?
このレビュー論文によれば、人が不誠実に振る舞うのには「3つのメカニズム」と「2つの環境」が影響しているようなので、まとめて見ていきましょう──
1. 社会的メカニズム
他人との関わりや仲間との関わりによって不誠実になり、社会的アイデンティティにより影響は変化する。
または、巻き込まれるようなかたちで加担してしまうこともあり、正直者のグループにいれば正直になるし、不正直なグループにいれば不正直になる。
また、そのグループへの忠誠心が高いほど悪事を働く可能性は少ないが、社会的な利益や経済的な利益の影響も大きく反映され、他人への影響も大きく関わっている。
逆に、他人のためになるなら、自分の損失になる場合でも不誠実になることがあるものの、これらは全て「相対的」に決定される。
2. 報酬メカニズム
特に、パフォーマンスに応じた金銭的な報酬があると、不正や不誠実な行動が増加する。
が、目標達成の初期よりも、後期や最終手段として不正を働く可能性が高い。
最も不正を働きやすい状況は「慢性的なストレス」にあり、現金での支払いよりもストックオプションや株式などの報酬ではより不誠実になりやすい。
3. 認知メカニズム
認知バイアス、意志力の枯渇、時間割引(今と未来でそのモノの価値が変わること)、気分一致効果(楽しい時は楽しい経験、悲しい時は悲しい経験のように判断してしまうこと)など、行動経済学により特定された事象で不正をしやすい。
さらに、空腹や疲労、高レベルの集中や自制を必要とするタスクなどの状況によって不正行為を起こしやすい。
実際の実験では、午前よりも午後の方がモラルが減ったり、良い行いをした後では悪い行いをしてしまう可能性が高かった。
4. ミクロレベルの影響
自分が負った損失をカバーするか、利益を実現する目的で嘘や不正を行い、意思決定までに使える時間や匿名性などの情報をもとに決定される。
多くの場合、積極的に不正を行うか、受動的に不正を行うかは状況により変わり、嘘をつこうとする意欲も事実の歪曲レベルによって変化する。
例えば、極端な結果になればなるほど嘘をつく度合いは減っていき、あいまいな結果であるほど嘘をつきやすくなる。
主に、受動的に不正を受け入れると、より多くの不正行為を働きやすく、これらは「損失を回避」する状況において強く発揮される。
5. マクロレベルの影響
ルールやコンプライアンスを守らない国や集団であるほど不正は多く、細かい事で懲罰が厳しい環境では不誠実な行動が増え、嘘が上手くなる。
これは、「責任逃れをするモチベーション」が高いためと推測され、集団主義や社会主義の価値観によって顕著にみられる。
が、リベラルが強く過ぎても、利己的な行動が増えて協力が減るため、バランスが大事。
という感じに、状況や環境によって人は裏切る可能性が上がるんだそう。
さらにここでは、裏切る可能性を減らすものとして、
● 明示的なモラル・キュー:実際に更生した物語を読ます、十戒のような掟を与えるなど、パッと見てわかるように道徳性を示す
● 暗黙的なモラル・キュー:署名をさせる、鏡を置く、ガイドラインを作るなど、なんとなく道徳性を匂わす
というのが紹介されておりました。
これが効くかどうか、そもそも裏切りそうな人を探し出さなきゃいけないんで、難儀ですけど、まぁやってみてもいいんじゃないでしょうか。
実際に裏切られたら?
というわけで、「どんな人でも状況によっては裏切るんだなぁ」と理解できたと思いますので、実際に裏切られた時の〈心境〉と〈その後の対応〉についてまとめていきます。
まあ、裏切られた経験がある人ならわかりみが深いと思いますが、
● 個人的な裏切りでは、「失望感」や「痛み」の感情が強い
● 社会的な裏切りでは、「憤り」や「怒り」の感情が強い
となっております[2]。
が、厄介なのは、どのような補填で「許せる」レベルまで心を落ち着かせることができるのか、というポイント。
それぞれで補償を求めるレベルは違っていて、
● 社会的な裏切りなら、「金銭的な補填」か「許容度以上の補填」があれば許すことができる
● が、個人的な裏切りを許す方法は適切なものがないものの、強いていえば、「怒りをぶつける」か「謝罪を受け入れる」のが効果的
とされています。
そうはいっても、個人的な裏切りはそう簡単には許すことなどできません。
実際に、恋人関係の裏切り(浮気や不倫)を調べた研究によれば、3分の2以上のカップルは浮気をされたことが原因で別れています[3]。
では、そんな裏切り者をどうすればいいのでしょうか?
答えは、「許す」ことです。
もちろん、タダで許すわけにはいかないので、十分な《謝罪やコミットメント》を示してもらう必要はありますし、すべてを許す必要はないんですけど、2005年のカンザス大学の研究チームによれば、
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