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『信頼』と『裏切り』の心理学── 人を “信頼する” ということ & 裏切りやすい人の特徴


── 親友に裏切られた経験はありますか?


「信頼してる!」とか、「裏切られたー!!」みたいなのって、ひとくくりには言えないんですが、おそらく多くの人は経験したことがあるんじゃないでしょうか?

個人的にも、数多くの経験がございまして…… えぇ……。


というわけで、今回は、

◆ そもそも「信頼する」とは、なんなのか?

◆ 「裏切りやすい人」の特徴とは?

◆ 裏切られたら、どうすると良いのか?

と、いうところをまとめていこうと思います。


ちなみに、「不正」についてまとめた2019年のメタ分析によると、人間が嘘をつく確率は33%〜100%の間で、平均すると51%ほどが不正行為に及ぶことがわかっています[1]。

さらに、場合によっては、31%ほど結果を盛って報告する傾向までみられているんですよ。

そう考えると、よくそんな人たちを「信頼」することができますよね──



『信頼する』とはなんだろう!?


ハッキリいって、「必ず裏切る相手を信頼する」なんてのは愚の骨頂なわけです。

が、実際に多くの人は、友人・親友・家族を始め、セールスマンやブランドなど見ず知らずの人だったり、価値が相対的に評価されているだけのものを『信頼』しているもの。

「日本円」についても同じことが言えますよね。


「信頼」に関する研究をまとめてくれたドイツの大学のレビューによると、「対人関係における信頼」の定義とは、

裏切る機会があるにも関わらず、相手が慈悲深い行動をとるかどうかの期待にもとづいて、不確実な状況で自分を相手の行動に依存させるという危険な選択

であると述べられています[2]。

つまり、他人を信頼するというのは、『ヤバい選択だ』というわけですね。

ここまでキッパリ言われちゃうと、逆にいさぎよい感じがします……。


で、ここでは、「相手を信頼するかどうかを決定する要因」として3つのポイントが挙げられていて、

リスクと損失の回避:自分にとってリスクや損失が大きくないと思える、または許容できると感じるなら信頼に値する

信頼性の期待感:信頼の手がかり・以前の信頼体験・社会的投射(なんとなく自分の属性に似ているから好ましいと感じる傾向)にもとづいて期待度が決定され、期待値が大きいほど信頼に値する(が、かなり主観的であるため、これだけで決定されることはまずない)

裏切りの感度:他人による裏切りの可能性・不運の可能性・自分の利益を天秤にかけて、自分のメリットが大きいか、裏切りが起きないと判断した場合に信頼に値する

という3つの点で「大丈夫そうだ!」と判断した結果、『依存する』『頼る』という行動に移ることを【信頼する】と呼んでいる、と。


で、因果を推測すると以下のようになるらしく……

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最終的には、「リスクと損失の回避」に集約された後、「信頼」に至るんですね。

いわゆる、プロスペクト理論の「損失回避」ってゆうやつで、「利益を得るよりも損失をできるだけ避けたい!」という気持ちが人間は強いんで、最終防衛ラインのような位置付けになるんでしょう。



では、どんな人が裏切るのか?


── 「裏切りやすい人」とは、どんなイメージですか?


「裏切る」といってもたくさんあるわけで、そんな中でも、

◆ 嘘をつきやすい

◆ 不正行為をしやすい

という2つに相関しているものを挙げると、

正直さ・謙虚さが低い[3]

● 罪悪感を感じにくい[4]

● 直感的に行動しやすい[5]

みたいな特徴を持つ人は裏切りやすいんですね。

もちろん、そもそも搾取を狙っているとしたら、

ダークトライアド

テイカー

のような悪い性格の人は間違いないんですけど、この人たちは「裏切る」というか、『他人を自分の欲求のために操る』ようなタイプなので、少し方向性が違うんですよね。

なにはともあれ、このへんの特性を持っていそうな人の期待値は割り引いて考えておくのが吉、であります。



人はなぜ嘘をつくのか?〜6つの理論


それでは、なぜ人は嘘をついてしまうのでしょう?


その謎を解き明かすために100件以上の研究をまとめた、コペンハーゲン大学のレビュー論文をご紹介します[6]。

まずここでは、「人が嘘をつくなのはなんでなの?」ってのを6つの理論から説明していて、ざっくり抜き出すと、

● 予想される罰よりも利益の方が大きいと判断した場合、人は嘘をつく(期待効用理論)

● 自分の基準以上のモラル活動をした場合、ある一定のところまでならモラルに反した行いもして良いと考えて嘘をつく(モラルバランスモデル、モラルライセンシング)

● セルフイメージが傷つかない範囲であれば、人は平気で嘘をつく(自己概念維持理論)

● 自分の行動の良し悪しに関わらず、正当化するためなら嘘をつく(自己奉仕的正当化)

● ある状況で自分はモラルを無視してもいいと思っている場合、人は嘘をつく(道徳的ディスエンゲージメント)

● 自分の利益が大きい時に倫理観を無視、もしくは非倫理的な行動をしていることに気づかないフリをして、嘘をつく(有界の倫理性と倫理的盲目)

というものがあるそう。

大雑把にまとめてしまえば、

▶︎ 「自分の利益がデカい場合」と「自分の中の基準がユルい場合」であれば、嘘をつきやすい!

という感じに言えそう。

まあ、すべての事柄がこの6つで言い表せるかといえば難しそうですが、かなりの範囲はこれでカバーできていそうな感じがしますね。



次回:人はどんな状況で裏切り、裏切り者はどうすべきか


というわけで、

▶︎ どんな人でも裏切るんだけど、そんな人たちを信頼すると決定する大きな要因は「自分のリスクと損失の回避」により判断している

というのが最も伝えておきたいポイントであります。

なので、「クソッ!裏切りやがってぇぇぇえええ」とボヤくのは、自分の見積もりの甘さが招いた結果なんですよね。

といっても、裏切られた時は様々な感情が交錯するもの……。


てな感じで次回は、

◆ 人が裏切る状況とは?

◆ 裏切られて感じる感情には、大きく2つある!

◆ 裏切り者をどうすべきか……

というところをまとめていきますので、お楽しみに──



参考文献


[1]Gerlach, Philipp, Kinneret Teodorescu, and Ralph Hertwig. "The truth about lies: A meta-analysis on dishonest behavior." Psychological bulletin 145.1 (2019): 1.
https://psycnet.apa.org/doi/10.1037/bul0000174

[2]Thielmann, Isabel, and Benjamin E. Hilbig. "Trust: An integrative review from a person–situation perspective." Review of General Psychology 19.3 (2015): 249-277.
https://doi.org/10.1037%2Fgpr0000046

[3]Ścigała, Karolina A., Christoph Schild, and Ingo Zettler. "Dishonesty as a signal of trustworthiness: Honesty-Humility and trustworthy dishonesty." Royal Society Open Science 7.10 (2020): 200685.
https://doi.org/10.1098/rsos.200685

[4]Levine, Emma E., et al. "Who is trustworthy? Predicting trustworthy intentions and behavior." Journal of personality and social psychology 115.3 (2018): 468.
https://doi.apa.org/doi/10.1037/pspi0000136

[5]Köbis, Nils C., et al. "Intuitive honesty versus dishonesty: Meta-analytic evidence." Perspectives on Psychological Science 14.5 (2019): 778-796.
https://doi.org/10.1177%2F1745691619851778

[6]Jacobsen, Catrine, Toke Reinholt Fosgaard, and David Pascual‐Ezama. "Why do we lie? A practical guide to the dishonesty literature." Journal of Economic Surveys 32.2 (2018): 357-387.
https://doi.org/10.1111/joes.12204


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